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作者: かがりび

遠距離の恋の話です

きっと最初からこの恋には終わりがあったのだ。付き合えてしばらく経ってから既にそんな予感はしていた。


大体どこから見ても仲の良い恋人同士。こんなに波長があう人がいたのかと思うほど、そう、会った時からハモったりお互い言いたいことが何となく分かったりして私達はその事に驚いたり笑いあったりしたものだ。喧嘩も今まで付き合ってしたことがなく、愛情表現を毎日してくれるような彼だった。雰囲気が好きで一緒にいて幸せで私から告白した。とても楽しくて幸せで、ずっとこんな毎日が続いたらいいと思っていた。それでも、何故かいつか別れなくてはいけない、いつかは別れてしまうのだという思いが私の中にあり、それは遠距離のあと久しぶりに彼に会う度に、私の気持ちを重く沈ませた。それとは対のように、彼は私との未来がさも当たり前かのように語る。愛してるという彼の言葉はたまに刃物のような鋭さをもって私を突き刺すのだった。


そうした日々に不安と幸せを感じてたある日、彼に結婚しようと言われて、私の胸の隅にあったヒビは途端に広がり私の心を飲み込みそうになった。

そのヒビが途端に大きくなったことに衝撃を受けて思わず待って欲しいと彼に伝えてしまった。その言葉や態度に彼も何か感じたようだった。寂しそうな今にも雨が降り出しそうな笑顔で待ってるよとそれでも優しく彼は微笑む。その笑顔が苦しかった。


彼の優しさも愛情も不器用な暖かさも全部知ってる。愛してるのに…。どうしてこんなこと思ってしまうのだろう。どうして彼なんだ。離れたくないのにどうして別れを見つめてしまうのだろうか。本当に自分勝手な私の我儘だと思う。それでも、私は自分の姿を彼との未来に見つけることができないのだ。

それから何度も自問した。答えを見つけられない。ただ一つだけ確かなのは、彼を愛していても、それ以上にこの恋の終わりが避けられないと分かってしまったことだ。


”私がこの恋を終わらせたがってる”


それから彼に最後に会ったのは、まだ雪が残る、あの公園の展望台。去年はここのベンチに座って寒いねとか言いながら、体を寄せて公園に来る人達を眺めていたっけ。あの日と同じように春の日差しと少し寒い風が足元をするっと通り抜けていく。

春にはおおよそ似つかわしくない重たいお揃いのグレーコートを着て、彼と私は泣きそうな顔でお互い見つめ合った。あれから長い時間話し合ってみたりしたけど結局、ヒビは消えなかった。ごめん。ごめんなさい。浮気をしてる訳でも嫌いになったわけでも、飽きたりした訳でもない。それでも…。その先に言葉を続けられなかった。最後に彼は何かを言おうとしたけれど、その口はかわりに何かを紡ぐことはなかった。


正直どうやって帰ったか覚えていない。

お風呂に入って、ぼぅっとして、夜に電気の明かりを消したときにはじめて涙が溢れてきた。愛してたのに、私の我儘で終わらせ彼を傷つけてしまった…、色んな思いや後悔がグルグルと回る。ただ、もう会えないのかと思うと胸にポッカリ穴が空いてまるで自分の片割れをなくしてしまったようだった。どうして、私がそんなにも大切だと思う彼と別れたかったのか正直分からない。ただ分かっているのは、私たちの恋は永遠ではなかったということだけだ。


窓をあけた冬の冷たい風が、すぅと頬をなで空へと溶けていった。


ここまで読んでくれてありがとうございます(*.ˬ.)"

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