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貴女は這い上がる!  作者: 鮭田 八百屋
第一部 下級貴族
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1-2 ジェルベーラの魔力量

 リーフィ邸の屋敷を出てすぐ、これから貴族院入学まで魔術演習の教師と屋敷以外の護衛をしてくれる師範のダイアヴェルが馬車の前に立っている。見た目は清楚な女の人だが腰に手を当て立っている姿が逞しい女騎士という感じがする。


 ダイアヴェルは下級貴族であるが魔力量が最契式の時より2倍以上に増えているらしい。中級貴族出身で貴族院学生時代、学に励まず遊び呆けてた故に下級貴族になってしまった。下級貴族になってしまった以上は親の身寄りなしでは生きられない。ダイアヴェルの両親に切捨てられてしまう所を騎士団に入団し努力する事を条件に何とか生きながらえたらしい。


ーーなんとも自業自得すぎるね。やればできる子ちゃんだったのが勿体ない……


「教師と護衛を兼ねているダイアヴェルだ。よろしく頼のむ。」

「お初にお目にかかります。ジェルベーラと申します。……あの、なんとお呼びしたらよいのでしょうか?」

「ああ、師範で構わない」

「師範。よろしくお願いいたします!」


 話してみるとより女騎士らしくかっこいい。


 今のダイアヴェルの魔力量だと中級貴族に値する。年齢は18歳で最契式から2年間で魔力量が2倍になるという実力者だがやっぱり勿体ない……最契式の時点で中級貴族だったならば上級貴族の護衛騎士や騎士団でもっと活躍できたかもしれない。努力は惜しまないことが大切だね……


「魔術演習は訓練場で行う。侍女に従者ご苦労であった。下がって良い」

「ジェルベーラ様。お気おつけて行ってらっしゃいませ」


 エーテリーとダルベルクに見送られると師範が馬車に入る。私も続けて入った。


 馬車の中は金色の装飾が施されていてまさに貴族って感じ。お屋敷もそうだったけど、装飾や家具にお金をかけるのは富の象徴らしい。下級貴族のリーフィ邸でも都内の高級住宅街の豪邸より全然規模が大きい。特に庭の広さには驚いた。


ーー下級貴族でこれなら上級貴族のお屋敷なんてどうなっちゃうんだろう……?


 初対面の人と2人きりで馬車の中に乗るなんて気まずくて退屈だと思ってたけど、師範は案外お喋りの上手い人で話題や質問を振ってくれた。まあ、元は中級貴族のお嬢さんなんだよね。

 貴族の女性はお喋りができたり女性としての品がないとそもそもお茶会で奥方の信頼を勝ち取ったり今後女貴族社会で生き残って行けないそうだ。「私は、貴族院に入った時点で品などなくなったからお茶会なんかではいつも独りだ」と師範は少し寂しそうに言っていた。確かに男の人っぽい喋り方だ。


ーーわたしは姉貴って感じな師範好きだけどね!


 そんなこんなで馬車の時間も楽しく訓練場に到着した。訓練場の見た目はドーム状の石造り?っぽくなっていて騎士団の紋章とグリュックフェアンヴェー王国の紋章が入った旗が入口の上に下がっている。


 師範が入口の魔石に魔力を込めると、石の重厚感のある音を立てながらドアが開いた。


 外装は装飾されていたが中に入ると装飾は減り上から太陽の光が入る石壁に囲まれたような空間だった。囲まれてると言っても、競技場のグラウンドくらいの広さはあって開放感抜群だ。貴族院の訓練場はここよりも広いらしい。


 訓練場には私と師範以外に私と同い年くらいの未就学児とその師範が何組かいる。同じように魔術の実習をしているみたいだ。

 1人顔見知りがいた。金色の髪をなびかせていて紫色の瞳をしている男の子だ。私と同じく下級貴族でお屋敷が隣りな事もあってお母様同士の仲がよい。カステル・フルークと言う名前でやんちゃなガキ。同い年だから貴族院でもお互い助け合えるだろうと、仲良くしておきなさいって言われているが、「遊びに行くぞ」といつも振り回されるのでちょっと苦手だ。まあ、顔はイケメンだけどね!


「ジェルベーラ。今日の実習は自分の魔力量を見る魔術だ。貴族院に入るとこの魔術で魔力量を記録するようになる。基礎魔術だ」


 これを覚えなきゃ始まらないってことだね

 師範は手本を見せると言って左手の平を上に向けて、『クロム』と唱える。唱えられた瞬間、左手から青白い光がシュウィンッという音とともに現れた。光は形を変えいつの間にか薄くてノートパソコンくらいあるモニターのようになった。そこには何やら図や文字が書いてある。


「これは『クロム』と言って魔力量や取得した魔術が見れるようになる。左手に魔力を込めるよにして唱える。光が出てきたあとも魔力を込める続けるんだ。まあやって見ろ」


 魔力を込めるなんて感覚は分からないが見よう見真似でやってよう。……力を込める感じで良いのかな?それっ…!


 師範に言われたとうり左手の平を上に向け、とりあえず力を込めてみた。


『クロム』


 そう唱えた瞬間にさっき見たのと同じような光が出て音を立てながら形が変わっていく。


「ほう、一発で出来るのか」


 魔力を込めるというのは力を込めるで合っていたっぽい。力を込め続けてみる。


「クロムも安定してるし。良いな成功だ」


 どうやら成功らしい。一発で出来るのは中々珍しいとまじまじと私の作ったクロムを見ていた。


「大抵はクロムを作ったあとの魔力を込め続ける所で苦戦するものだ。だがジェルベーラのクロムは初めてながらとても安定している」

「ありがとう存じます」


 作ったあとはクロムに映っている図やら文字やらの説明だった。クロムには右半分に大きな丸い図があって色がついている。この色は四段階で魔力量のレベルを表しているらしい。


「青は下級貴族以下、黄は中級貴族、赤は上級貴族、紫になると領主一族レベルだ」

「では黄色なので中級貴族ですか?……でもわたくしは下級貴族ですよね?」

「魔力量は魔力の密度を表している。すなわち子供の身体と大人の身体では大きさが違く、魔力量が同じであっても密度が違う。子供の身体は小さい上に親の魔力量がそのまま遺伝するので子供の頃の密度は濃く魔力量が多いと示されるのだ。これから先身体が大きくなるにつれ魔力の密度も薄くなるから貴族院で魔力量を増やす練習を行うのだ。言わいる私が怠っていた訓練だな。」


 笑いながら話している。中級貴族と浮かれたが、この魔力量を維持するだけではだめなんだね。しかも魔力量を増やすなんてとても難しいらしい。師範は2年で……本当にすごいな。


 黄色い丸の上には数字も書いてあった。


「この数値は、魔力量だ。基本的に丸の色は目安で数値が大切になってくる。まあ、単純に数字が大きい方が魔力量が多いってことだ。ジェルベーラの数値は……9037…下級貴族にしては多めだが許容範囲ってとこだな」


 下級貴族は大体2000~5000って所らしいけど9037で許容範囲って大雑把過ぎない!?師範が大雑把なだけなのかな……


「師範の数値はいくつなんですか?」

「私は20540っていうところだな」

「に、2万!?下級貴族との差ありすぎでは無いですか?」

「身分差とはこういうことだ。領主一族の魔力量なんて2度見するほどだ。私達の住むトイフェル領の領主様の魔力量は180536だ」

「……0が……数えられないです」


ーー正直言葉も出てこない、


 9037が許容範囲なのにも納得してきた。魔力量を上げて下級貴族が下克上するのが珍しいとは知っていたけど、これ程とは思わなかった。


「必死に努力すれば2年程で現れてくる。私が言うことではないと思うが、努力は報われる。頑張るといい」

「……はい」


ーー上級貴族のお嬢様になる夢、基礎魔術を使っただけで壊れそうです………。


領主様やばいですね……

次回は攻撃魔術の基礎実習です

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