ヤナギ
マツバはそれを聞かれても…と困ったが、「どうして華姫さまやひな姫さまでなく?」と尋ねると、「今はそんな話しに行けないだろう」との返事が帰ってきた
確かに、華姫もひな姫も懐妊が分かって里に下がって久しい
時折顔は見に行っているだろうが、会えていない妻の話をさせるのは酷だろうと思った
ヤナギはにやにやと笑いながら、「月姫さまがマツバに迫っていたら驚くね」と言った
「だってマツバのほうが惚れてるんだからさ」
その言い方にマツバは思わず赤くなったが、事実なのだから仕方ないと思った
「千姫さまは?」とギンはヤナギに尋ねる
ヤナギは、すっと真顔になって「残念ながら、お互いにそんな気分じゃないね」と言う
「ギン、私たちはまだ何者でもないんだ。もちろん貴族だし、二十歳になって宮を出ても変わらず出仕をして暮らすんだろう」
けど…と、ヤナギは俯く
「せめて、そのときの自分を見てから千姫に決めてほしいんだ」
それから、「全然宮にいる間に子どもが出来たっていいんだけどね」とへらりと笑った
マツバは「貴族には変わりないしね」と同意するように頷いた
「私も考えとしてはヤナギ寄りだけど、華姫さまやひな姫さま、それに結姫さまも、ただ相手が好きなだけだろう?」
そしてギンに「好きだから子どもも欲しいんじゃないか?」と言った
ギンは確かに、と頷いたが「けれどなぜか焦っているようにも見えるんだよなぁ」とも漏らした
「けれど夫婦のことだから、話し合ってみるよ」
ギンはそう言って、マツバとヤナギとにお礼を言った