結姫
宮は少し寂しくなった
昨年華姫とひな姫の懐妊が分かり、二人は長く宮を離れている
問診では、いつも5人で囲んでいた円卓が今は3人…
そしていつも明るかった結姫は、ひな姫の懐妊が分かった頃から暗い表情を見せ、俯きがちになった
千姫が話題を振っても「そうですわね…」と答えるばかりで、今日も元気がない
月子は冬の間、
「冬は太陽も陰って、つい人も鬱々としてしまうんです。ですから、少しでも日があれば日向ぼっこをして下さいね」
と言っていたが、もう春になるのに結姫の具合は晴れないようだった
月子は結姫の脈を測り、目の内側を見たりしたが、特に貧血ということもなさそうだった
「私も診てくださいまし」
千姫はそう言って、白い腕をめくると月子に差し出した
もちろん千姫にも異常はない
千姫は「お返しです」と言って、月子の腕を取り、見様見真似でまぶたに触れたりした
真剣そうな千姫に、月子は思わず笑ってしまい、千姫も笑って結姫を見やった
けれど結姫の目はただ床を見つめて、千姫のことも月子のことも見てはいなかった
「あの…僭越ながら、何かお悩みでしたら…」
千姫が声をかけるが、結姫はぶんぶんと首を振る
そして大きくため息を吐くと、「いいんです、聞くと辛くなることですから…」と言った