12章、過去
主人公の過去のお話
あのバラバラ死体を見たあと、俺の声を聞いた近隣住民が駆けつけた。
生き残っていたのは俺ただ一人。
残りの子は、誰が誰であるかわからないほどだったらしい。
バラバラであるだけならともかく、食べられたような痕跡があり、みつかっていない部分があったからだ。
この事件は証拠があまりにも少なく、第一発見者である俺だけで犯行は不可能であり、不審者の目撃情報もないので、俺の証言だけが頼りなのだが、一方の俺は、あまりにもひどい現場をまじかで見たせいか、俺の精神は情緒不安定になっており、俺からは証言が聞けないということで捜査は迷宮入りした。
………ただ今にして思えば、学校であった化け物と同じ類のものではないかと思う。
………俺は……俺の日常は………とっくの昔から崩れていたのだ。
その後の俺の人生は、地獄のような日々だった。
周りは、俺のことを死神など噂し、両親までもが俺のことを疫病神のような存在だと恐れられて。
幼いながらも俺は孤独だった。
いつも…いつも一人だった。
いつまでも続くこの扱いには終わりなんてないと思った。
そんな日常から何年か経った。
よく我慢したものだと思った。
「あと…あと少しだけ…もう少しすればきっと…前みたいに接してくれる…」
そんな思いがあったから。
しかし、そんな思いもしだいに磨り減って、自分がおかしくなりそうになった。
だから逃げた。
いつまでも終わらない…孤独な日常から逃げた。
ただ…ひたすらに…どこへ向かうでもなく…
走った。
ずっと走って…走って……走って…
自分を知っている場所から少しでも遠くへ…
どれほどの距離を走っただろうか?
気が付けば知らない草原。
そこで俺は限界が来て倒れこんだ。
周りは闇。
明かりは満月の月だけ。
そこで俺は、
「月ってこんなに綺麗だったんだ……」
そんなことを思った。
そこで、もう全て終わりにしようと思った。
終わりのない孤独。
終わりがないのならいっそのこと自分が終わろう。
『死』への恐怖はなかった。
手には、祖父が俺にくれたナイフ。
このナイフは、祖父が言うには普通のものではないらしい。
ただ、今の俺には関係ないのだが。
そしてそのナイフを振りかざし……自分の胸にめがけて……振りおろした……はずだった。
「な、何してるの?!」
見た感じ、20前半の年齢の女の人が振り下ろそうとする腕をつかんでいた。
「自分が何しようとしてたかわかってるの!?」
パチンと音がして、頬から痛みがする。
痛みがして俺はこの人にたたかれたことを知る。
次の瞬間、俺は涙が止まらなかった。
すると、お姉さんは俺をやさしく抱きしめた。
それから俺が泣き止むまで抱きしめてくれていた。
「落ち着いた?」
「うん……」
「それで、どうしてあんなことしてたの?」
お姉さんは向かい合い、優しくも厳しい口調で聞いてくる。
「それは………」
そして、俺はこれまでのこと話していった。
友達が『何か』に殺されたこと。
その事件が原因で俺は孤独になったこと。
孤独は何年も続いたこと。
そんな孤独に耐え切れなくなり、逃げ出したこと。
孤独は終わりがないのだろうと思ったこと。
終わりがないのであればいっそ終わりにしようと思ったこと。
お姉さんは静かにずっと俺が話し終わるまで待ってくれていた。
俺の話が終わるとそっと俺をまた抱きしめた。
「そっか…辛かったね」
そう言いながら俺の頭を撫でる。
俺はまた泣いてしまった。
「時間が経てば…もう少ししたらきっと…昔みたいに…接してくれるって…思ってたんだ」
「うん」
「それでも…時間が経っても全然…変わらなくて…」
「うん」
「もう…耐えられなくなって…」
「うん」
「家を抜け出して…ここまで走ってきたんだ」
「うん」
「それから…生きていくことが辛くなって…」
「うん」
「だから…もう…いなくなろうと…思ってたんだ」
「そっか、わかった。でもね、自分がいらないなんて思わないで。誰にも必要とされてないなんて思わないで」
「それでも!いくら自分が信じても!いくら自分が願っても!誰も…」
「それなら、私が君を必要としてあげる。私が君を信じてあげる」
「どうして?」
「?」
「どうしてそこまで言ってくれるの?」
「君は何も悪くないから」
「え?」
「だって君は何も悪くないもの。だから、私でよければ力になってあげたいの」
そう言ってお姉さんは持っていたトランクから何かを取り出す。
そしてまた俺と向かいあって、
「これは私と君を繋ぐ絆。そして君の不幸を少しでも和らげる為のもの」
そう言ってペンダントをつけてくれた。
「どうしてこんな物を?」
「実は私、魔法使いなの」
「えっ!?」
「ふっふっふ、すごいでしょ~」
「うん!」
そうして俺は魔法使いと言うお姉さんと話をした。
この時の俺は長い間、人と話をしたことがなくほとんどお姉さんが話ていたのだが。
そんなこんなでかなりの時間が過ぎていった。
暗かった周りは明るくなってきていた。
「あらら、もうこんな時間か。私、行かないといけない所があるから、行くね」
「え?」
「もう、そんな顔しないの。大丈夫、章は幸せになれるから」
「うん…」
「じゃあ最後に、魔法をみせてあげる」
そう言うと、お姉さんは何かつぶやく。
するとだんだん視界が暗くなる。
「じゃあね、章」
最後に、そんな声が聞こえた。
そして目を開けると、自分の部屋にいた。
「………夢、だったのかな。………ん?」
首にはお姉さんがくれたペンダントがあった。
それからの俺の人生はまた変わっていった。
どこか不自然は感じるものの、あの事件の前みたいに接してくれた。
それからは何事もなく平和な人生だった。
そしてこちらの世界にくるきっかけである事件が起こったのである。
遅くなりました。
本当にすみせん。
いつも私の小説をみてくださっている人達に感謝と謝罪を申し上げます。