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夫婦にまつわるすれ違い、または溺愛を描く短編集  作者: キムラましゅろう


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22/43

とある夫婦(17)ポンコツ、潜入捜査をする

今回はお遊び回です。


おまけの投稿としてお届けいたします♪





わたしの名前はコルル(偽名)。

わたしは今、潜入捜査中だ。


何の潜入捜査かって?

それは……結婚したばかりの夫が近頃不審な行動ばかりを起こすので、その原因を突き止める捜査なのだ。


浮気は疑ってません。

そんな不誠実な人ではないと信じているもの。


ましてや新婚の、長い婚約期間を経てようやく結ばれたこの新妻(わたくし)を差し置いて、他の女に現をぬかすとは思えない。


でも……毎夜政務が終わってから側近を一人だけ連れて出掛ける先が娼館だった事から、見て見ぬフリは出来ませんな、と思ったわけで。


え?娼館だったら浮気確定?

違います!わたしの旦那様は浮気なんか致しません!


絶対に何か訳があるはず。


だからわたしは街の清掃活動で知り合った町内会長さんの口利きで、娼館の謎多き魅惑の掃除婦コルルさんとして潜り込んだワケなのだ。


え?浮気は間違いないのに傷付くだけだから止めておけって?


だから!絶対に浮気ではないんですってば!


だって彼ってば昨夜はわたしを散々ベッドで翻弄して(キャッ♡)夜が明けて日中は騎士団の合同演習に参加して一日中剣を振るっていたのだ。


そしてその後はちゃんと政務もこなして……

まぁ政務は、わたしがポンコツだから難しい案件を全部振っちゃってるのが悪いんだけどね……


とにかく、そんなハードなスケジュールをこなした後に娼館で浮気?


いくらスーパーでハイスペで完璧な彼でも無理だと思う。


あ、ちょっと待って、誰か来た。


お客さんだわ、小柄な紳士が妖艶な娼婦のお姐サマと一緒に階段を上がって来た。


「……いらっしゃいませ」


わたしは掃除婦らしく屈んで掃除をしながら挨拶をして、やり過ごした。


その紳士とお姐サマが部屋へと入って行く。


キャ、キャー……ここは娼館なんだから、部屋に入ってする事といったら一つよね。


これでも人妻なのでウブウブな事は言わないけど、なんかドキドキするわね。


そういえば夫は何処に行ったのかしら?

この娼館に入ったのを確認して、わたしも掃除婦として潜入するために裏口から入ったのだけど……


その後見失ってしまった。


きっと何処かの部屋にいるはずなのに……


その時、また誰かが階段を上がって来た。


(きざはし)を踏み締める足音が力強い。


重心をしっかり足腰に込めてる感じね。

足音にブレがない。


足音の主はもしかして騎士なのかもしれないわ。


そう思いながらまた屈んで顔を見せないように掃除をするフリをしてやり過ごす事にした。


でも、足音の主がどんな人なのか気になる……!


わたしは少しだけ視線を上に向けて、件の人物の方向を見やった。


かなり体の大きな紳士だわ。

まるで熊みたい。

ウチの騎士団の総団長みたいな。

そうクマ……


「ってええっ!?クマックスっ!?ふがっ……


足音の主が思わぬ人物過ぎて驚愕して声を上げてしまった瞬間に、後ろから口を塞がれ抱き寄せられた。


わたしだって一応は武術の嗜みがある。


これがただの暴漢の所業だったら反撃をしていたと思う。


でも抱き寄せられた瞬間に香った嗅ぎ慣れた香りに、わたしは抵抗するのは無意味だと悟り大人しくした。


だって、今わたしの口を塞いで後ろから抱いているのは……


わたしはチラリと後ろを仰ぎ見る。


ホラやっぱり。

それは我が愛しの旦那サマだった♡


眉間に深くシワを寄せてかなり怒ってる様子だけど。


「こんのっ……ポンコツがあぁぁ……!」


へぇふぉん(シモン)!」


「おいっ……お前、こんな所で何をしているんだ……?」


「へふぉふぁ、ふぁふぃひゃひゃひゃへふひゃひゃ……」


口を塞がれながらも一生懸命伝えようとしたら、

「ちっ」と舌打ちをされて手を離された。


もう、相変わらずキレッキレの舌打ちでシビれるぅ。


「シモンが何やらコソコソ調べているみたいだから気になって……何かあったの?我が国のピンチ?」


わたしがそう言うと、直ぐにそのまま近くの部屋に引きずり込まれた。


あ、シモンたらこの部屋にいたのね。


さて、ここでご紹介しましょう。


彼はわたしの夫で名をイコリス=オ=ジリル=シモン。

隣国モルトダーンの元第一王子だったけど、いずれ王配となる為に婿入りしてくれた。


そしてわたしはこのイコリス王国の第一王女で次代の女王、イコリス=オ=リリ=ニコルと申します。


先々月に結婚式を挙げたばかりのわたし達は新婚ホヤホヤなのだ♡


「なのだ♡じゃねえっ」


「ぎゃんっ」


ひ、久々に脳天チョップを頂きました……


わたしも落ち着いたオトナの女性になって、すっかりシモンの脳天チョップから縁遠くなっていたのに……


「何が落ち着いたオトナの女だ」


「あ、また声に出てた?」


心の声が表に出るのも相変わらずらしい。


「まさか俺が娼館で浮気してるとか疑ってないよな?」


「まさか!シモンに限ってそんな事はないと分かっているわ」


「それならいいが……ハァァァ……」


シモンが盛大にため息を吐いた。


「でも何をしているのかは気になるじゃない?あなたが動いてるなら国の大事に関わる事だろうし」


「そうやって首を突っ込もうとするから秘密裏に動いていたのに……」


「お生憎サマ。わたしのシモンセンサーを舐めないで欲しいわ。シモンのちょっとした変化もすぐに分かるんだから!」


「……喜ぶべきなのか、怖がるべきなのか判断に迷うな……」


「ふふふ」


その時、同じフロアで動きがあった。


大きな声や物が倒れたり壊れたりする音が聞こえる。

捕物が始まったような、騒然とした大きな物音が辺りに響き渡った。


わたしはシモンに腰をぐいっと引き寄せられる。


「お前はここで俺と一緒にいろ。一歩も動くな、分かったな?」


「そ、そんな恐ろしい顔しなくても飛び出して暴れたりなんかしないわよぅ……」


「どうだかな」


「部屋の外では何が起きてるの?」


「バックスを始めとするイコリスの騎士達が違法魔法薬のバイヤーを一斉に捕縛している」


「あぁ、だからさっきクマックスがいたのねって、ええっ!?違法魔法薬っ!?他の国で問題になったっ?イコリスにも入って来ているのっ!?」


こうしちゃいられない!

わたしも犯人の捕縛に協力しなくてはっ!

と思って部屋を出ようとしたけどその瞬間、シモンに横抱きにされた。


「だから大人しくしてろと言っただろうがっ!一体いつまでポンコツでいるつもりだぁ?おい゛」


あ、超絶に怒ってらっしゃる……。

きゃ、きゃぃぃ……ん。



そしてしばらくしてわたしとシモンがいる部屋にシモンの側近のアルノルトが入って来た。


「シモン殿下、バイヤーの一斉捕縛、無事に終了いたしました…って、えっ?ニコル殿下っ!?」


わたしはシモンに抱っこされたままアルノルトに挨拶をする。


「アルノルト、ご苦労様」


シモンがアルノルトに尋ねた。


「怪我人は出していないな?」


「はい。娼館側の協力を得ていたので全員無事です。騎士たちにも怪我はありません。デューダー団長が娼婦のお姐サマ方に大人気で顔中にキスの嵐が降ってましたが」


「え、何ソレ見たい」


「………」



その後城に帰ってから、シモンに落ち着いて今回の捕物の顛末を教えてもらった。


他国の王都などの主要都市で蔓延の兆しを見せた違法魔法薬。


それぞれの国の尽力のおかげで取り返しが付かなくなる前に製造販売ルートの大元を壊滅させられたそうだ。


だけど既に出回っている魔法薬の完全回収は難しいとの事だった。


その数少ない押収を逃れた魔法薬を、ウチみたいな小さな国をターゲットにして売り捌こうとしている輩がいるらしい。


そんなバイヤーが数名イコリスに入ったと、そのバイヤーの一人を昔から知っているという娼婦のお姐サマからタレ込みがあったそうなのだ。


そこでその娼婦のお姐サマと娼館の協力を得て、取り引きの場を設けてバイヤー達をおびき寄せたという事らしい。


そして数名のバイヤーが揃った所を我がイコリス騎士団が一斉に捕縛したという訳なのだ。


それをお父様やシモンが指示をして秘密裏に動いていたというのだからビックリである。


「どうしてわたしには話してくれなかったの?」


「正義感の塊のニコに話したら、絶対捜査に加わろうとする事を懸念したと言っただろう?」


「そりゃぁそうよ。国の大事に日和っていられないわ!」


「そんな性格だから黙ってたんだ」


「どうして?わたしの剣技や体術の腕はシモンも知ってるでしょう?」


「………」


わたしがそう言うと、シモンはわたしの目の前に来た。


そして額と額をくっ付けて来る。


「シモン?」


「ニコ、お前はもう俺と結婚した身だ」


「ええそうよ。ふふ、幸せ」


「……という事はいつ懐妊してもおかしくはない、という事だ。こうしている今も、じつはお腹にはもう子がいるかもしれない」


「!!」


それを聞き、わたしは思わず目を見開く。


そして途端に頬が熱くなる。


「ニコ、これからは常にそれを踏まえて行動して欲しい。日常生活は普通にしてていい。だけど荒事などに絶対に首を突っ込もうとしないでくれ。俺の心臓がいくつあっても足らん」


「う、うん……」


わたしの赤面した顔を見て、シモンが悪戯っ子の表情をする。


「なんなら、おかしな行動が取れないように毎日ベッドから起き上がれなくしてもいいんだぞ?」


「っ○☆*◎♡♡!?」


ちょっ……シモンさーーんっ!


オトナのオトコのフェロモンがダダ漏れですよーー!


ていうか貴方そういう事言うタイプでしたっけーー!?


ツンツンデレツンの王子様じゃなかったかしらぁ!?


と、わたしは心の中で叫び、羞恥心の許容範囲が振り切れたのと、イケメンな旦那様の色気にあてられてそのまま撃沈してしまった………




だけどシモンは預言者だったのかもしれない。



この時、わたしはホントに既に妊娠していて、

わたしのお腹には第一子となる子どもがいたのだった。



懐妊していた事をシモンに最初に告げた時の彼の顔は一生忘れられない。


なんだか泣き出しそうな喜ぶ顔がとても印象的だった。


その顔を見てわたしの方が泣いちゃうくらいに。




こうしてわたし達の日々は続いてゆく。



最初は婚約者として。


そして今は夫婦として。


これからは親として、共に手を携えて生きてゆくのだ。


やがて女王と王配としての役割も担う時が来る。



でも絶対に変わらないのはわたしが貴方を愛している、という事。


きっとシモンもわたしと同じ気持ちだと信じている。



そしてこれからも、わたしはポンコツながらも貴方の隣で笑って生きてゆくのだ。




           おしまい




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



今回は

「こんなに好きでごめんなさい~ポンコツ姫と捨てられた王子~」からピュアピュアな二人が夫婦になってからのその後をお届けしました。


この二人、夫婦になっても相変わらずのようです。



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[一言] |シモンセンサー ……スマホとかにノートパソコンとかについてるヤツ。(違)
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