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悪夢(ルディウス視点)

 目を覚ますと隣で気持ちよさそうに眠るレアの姿。

 レアがこの屋敷に来てから、この寝顔を見るのが毎朝の楽しみの一つとなっている。

 いや。結婚してからはこの寝顔も全て俺のものだと思うとさらに幸せが募る。

 レアがゆっくりと目を開き…まん丸に見開かれた。

 ん?開き過ぎでは?


「え!?なんで侯爵様がここにいんの?夜這い?俺、そっちの趣味ないけど?」


 突然男のように話始めたレアに俺の目も見開かれた。


「レア…急にどうしたのですか?」


 戸惑うように問いかけるとレアは訝しそうに首を傾げた。


「ついに見境がなくなったのか?俺の事まで夫人に見えるようになるなんて…」


 落ち着け、俺。

 この話し方には覚えがある。

 『お前はもしかして役立たずか?』と言おうとして止めた。

 中身はあいつでも外見はレアだ。

 レアに向かって『お前』などと死んでも言いたくない!


「どちら様ですか?」


 頬をひくつかせながらも丁寧に柔らかく問うた。

 するとレアは可愛い顔のままきょとんとしながら淡々と答えた。


「侯爵様、頭おかしくなったのか?テネーブルだよ」


 おかしいのはお前だ!!

 とぶち切れたかったが、レアの外見に向かって怒鳴るわけにもいかず体を震わせた。

 すると突然寝室の扉が開き姿を見せたのは…。


「ルディ!私、テネーブルになっちゃった!!」


 役立たずの姿をしたレアだった。

 俺はすぐに飛び起き役立たず…レアの元に駆け寄った。


「レア…ですか?」


 この外見に敬語を使いたくはないが、中身がレアである以上使わないわけにはいかない。

 レアはコクコクと何度も可愛く頷くもその姿だと可愛さが半減!むしろ気持ち悪…いやいや。中身は愛するレアだ。外見がたとえこうでも…。

 チラリと外見だけは役立たずの姿を窺うと、中身のレアが不安そうに俺を見上げている。

 見た目は決して可愛くはない!!むしろ気持ち悪…いやいや!助けを求めているのはレアなんだぞ!!

 もう頭の中は混沌と化していてどう対応して良いのやら分からない状態だ。

 不安気なレアの…外見は役立たずだが…優しく手を握ると極力姿を視界に入れないように食堂へと移動した。



 そこでレアに聞かされたのは目が覚めたら役立たずの姿になっており、急いで侯爵邸に来たとのことだ。


「ルディ…どうしよう…私、ずっとこのままなのかな…」


 レアを椅子に座らせると不安気に上目遣いで俺を見てきた。

 外見がレアならば即抱きしめて不安を解消してあげたいところだが…目の前に座っているのは俺と同じくらいの座高の男。


「ルディ。もし私が一生このままでも愛してくれる?」


 レアのその言葉に俺は覚悟を決めた。

 瞳を潤ませる男…レアを抱き寄せて力強く宣言した。


「レアがたとえどんな姿になったとしても俺は一生愛し続けます!」


 しかし返って来た言葉に思わず離れた。


「中身が夫人だからって俺の体ごと愛されても…」

「お…お前…!?」

「いや~なんか元に戻ったみたいっす」


 俺は役立たずを食堂に放置し、急いで寝室にいると思われるレアの元へと急いだ。


「レア!!」


 寝室の扉を開けると辺りを見回していたレアが俺を見つめた。


「どうしてルディウスがここにいるんだ?」


 問われて固まった。

 レアは俺をルディウスとは言わない。

 しかも元に戻ったのなら喜びで俺に抱きついてきてもいいはずだ。

 だが目の前のレアの眼差しは鋭く冷たい。


「…どちら様ですか?」


 本日二度目の問いにレアは首を傾げた。


「寝ぼけているのか?自分の従兄の顔も忘れるとか」


 王太子かよ!!

 ということはレアは今頃…。

 頭から血の気が引いた。

 急いで王宮に向かわないと!!

 俺は「おい!」と呼ぶ王太子を無視して王宮へと急いだ。



 王宮に到着すると寝間着姿の王太子が戸惑いながら王宮内を歩いていた。

 レアに間違いない!

 俺は急いで王太子の肩を掴みこちらを振り向かせた。


「ル…ルディ…」


 振り向いた王太子は涙目になっている。

 間違いない。外見は王太子だが中身はレアだ。


「どうしよう…私…王太子殿下になっちゃった…」


 俯く王太子…レアの両肩に手を乗せると王太子…レアが不安そうに俺を見上げた。


「必ず俺が元に戻る方法を見つけますから。だから泣かないで下さい」


 外見は王太子だが中身はレア!そう言い聞かせて王太子の目元の涙を指で拭った。


「でも…このまま元に戻らなかったら…私、公務とか出来ない!!」

「その時は私と結婚すればいい」


 突然背後から聞こえてきた声に振り返った。


「ルディウスと別れて私と結婚すれば夫婦寄り添いながら公務が出来るだろ。私が手取り足取りランドール侯爵夫人…いや…レアを助けてあげるよ」


 サラッとこいつレアを愛称で呼びやがった!!

 怒りが込み上げるも提案しているのはレアの外見をした王太子。

 怒りたいのに怒れない!!

 怒鳴れない以上背後の王太子は無視して王太子の外見をしたレアに向き直った。


「レア!俺はレアがどんな外見をしていようとレアだけを愛していますから!」


 レアを…外見は王太子だが…引き寄せ強く抱きしめた。


「グェッ!?」


 レアから異様な声が聞こえてもお構いなしに抱きしめ続けると背中をバシバシと叩かれる感覚に目を開けた。


「ルディ!苦しいから!」


 先程まで王宮にいたはずなのに俺はレアの姿をした者を抱きしめながらベッドに横になっていた。


「何々?どうしたの??」


 困惑する目の前のレアの姿に俺は首を傾げた。


「…どちら様ですか?」


 本日三度目の問いにレアの姿をした者は首を傾げた。


「えっと…間違っていなければ貴方の妻のレリアですけど?」


 その答えに俺は安堵の溜息を吐きながら再びレアに抱きついた。


「ちょっと!ルディ、本当にどうしたの!?」

「レアがおぞましい姿に変わる夢を見たんです」

「おぞましいって化け物とか?」

「もっとおぞましい物です」


 化け物よりおぞましい物と言われたレアは想像がつかないのか眉間に皺を寄せながら上を見上げて考え込み始めた。


「でも俺はちゃんと宣言しましたよ。レアがたとえどんな姿になっても愛すると」


 レアの胸に顔を埋めていた俺が顔を上げると、レアが微笑みながら頭を撫でてくれた。

 やはりレアの姿のレアが一番好きだ。

 優しいレアについ甘えたくなった俺は調子に乗ってしまった。


「レア、怖い夢を見たので今日は一日こうして一緒にいさせて下さい」


 胸に顔を摺り寄せておねだりするも、頭を撫でてくれていたレアの手の動きが止まり…失敗を悟った。


「ルディ…夢見が悪いからって仕事を休むなんて言語道断よ。仕事には行きなさーーーーーい!!」


 寝室から追い出されながらもう少しおねだりの仕方を考えようと心に決めたのだった。


 そんな俺の悪夢は現実でもまだ続いていた。


 王太子と役立たずを見る度に中身がレアかもしれないと思うとしばらくの間、冷遇出来ずに過ごす羽目になったのだった。





明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


お正月らしく今回は夢の話にしてみましたが如何でしたでしょうか?

ルディは悪夢でしたが、皆さんは良い初夢見れましたか?

ちなみに作者は爆睡で全く覚えておりません。

どうせならゾンビとかに襲われるようなスリリングな夢を見たかったですが…。

作者、そういう夢を見た朝はテンションが上がります!非日常が大好きですから!


皆様にとって良い一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。

読んで頂きありがとうございます。

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