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姉の威厳

 楽しい休日は終わり、今日からいよいよ新生活スタート!


 …なにしよう…。


 そう、私は今、やることが見つからなくてフリーズしているのだ。

 今までは来る終末の日の準備に毎日を忙しく過ごしていた。

 だがいざその日が来ないとなったらすることがない。

 私の人生って一体…。



 とりあえず花のレアに会うため庭に出た。

 恥ずかしいのだが、ルディが花にレアという名前を付けていたのだ。

 持ち主には逆らえず私もレアと呼んでいる。

 そんなレアをルディから好きなようにしてもいいと許可を貰ったので早速手入れしてみようと考えた。


 …手入れが完璧すぎる!


 終了。

 その場に項垂れた。

 ルディのレアへの愛が深すぎる!

 ふと視線を横に向けるとレア以外のところには少しだが雑草が。

 草むしりでもしているかと手袋をはめてむしっているとバタバタと走る足音が近付いてきた。


「お嬢様!何をなさっているのですか!?そのようなことは我々が致しますので!!」


 手袋も雑草も没収され屋敷に戻された。


 …なにしよう…。


 振り出しに戻り、トボトボと部屋に戻ろうとすると花瓶を持った使用人が部屋の扉を開けようとしていた。

 重そうだし手伝ってあげようと手を伸ばすと…。


「お嬢様!お止め下さい!私達の仕事ですから!」


 競歩と思われるくらいの速度で使用人が現れ扉を開けた。


 その日、ルディが戻るまで食堂のテーブルに突っ伏したのだった。




「…それでこの状態…」


 帰ってきたルディがどうやら執事から事情を聞いたようだ。


「ルディ…私はダメ人間です。食っちゃ寝食っちゃ寝とヒキニートになりそうです」

「ひきにーと?」

「私も仕事がしたい!このままじゃ罪悪感が半端ない!」


 私の隣に腰掛けたルディに掴みかかった。

 ルディは私を落ち着かせるように私の手を優しく握った。


「レア。落ち着いて下さい。仕事ならいくらでもありますよ」

「本当?」

「はい。俺のために新しいハンカチを刺繍して下さい」


 …ハンカチ王子の座でも狙っているのだろうか?


「前に二枚もあげたよね?」

「ハンカチは何枚あっても困りません」


 一生ハンカチに刺繍してろと?


「ルディ。私の手を穴だらけにしたいの?」


 色んな意味で拷問だ。


「…では俺の専属使用人とかどうですか?」

「…それルディがいないと暇だよね?」

「レアにしては鋭いところを突いてきますね」


 私にしてはってどういう意味よ!?


「そういうのじゃなくて!なんかこう、もっとこのお屋敷の役に立ちたいの!」


 ルディは少し考えて口を開いた。


「では夜会の準備を手伝ってもらえますか?」


 話を聞くと王太子から侯爵になったお披露目をするべきだとうるさく言われたらしく、今度、侯爵邸で夜会を開く予定にしたそうだ。


「俺は仕事があるので執事に任せようと思っていたのですが、レアが主体となり準備されますか?」

「やりたい!」


 元気よく挙手するとルディに頭を撫でられた。

 え?子供扱い?私、あなたより年上ですけど?


「そういうことだからレアを手伝ってやってくれるか?」

「喜んでお手伝いさせて頂きます」


 執事は丁寧な所作でお辞儀をした。

 ルディのお祝いの席。気合入れて準備しないと!!



 とはいえ…。


「お嬢様、配置はこのような感じで如何でしょうか?」

「すごく良いと思います」

「お嬢様、お客様にお出しする料理の試食をお願いします」

「すごく美味しいです」

「お嬢様、お客様にお出しする食器ですがこちらは如何でしょう」

「すごく素敵だと思います」


 この調子で全て出来る使用人達が私に確認しにくるだけという体たらく。

 自分の美的センスの無さが恨めしい!!




「一から十まで自分が指示したがる主よりよほどいいと思いますよ」


 ベッドの上で招待客リストを眺めるルディに今日の成果を報告すると慰められた。


「使用人達も下手に口出しされるより楽だと思いますし、レアが本当にいいと思ったのでしたら使用人達も協力した甲斐があるというものですよ」

「でもさ、もう少しみんなの力になりたいというか…ルディの為に何かしてあげたいというか…」


 最後の方はぼそぼそと呟いたのにルディにはしっかり聞こえていたようで…。


「レアがそんな風に思ってくれていたなんて嬉しいです」


 リストをサイドテーブルに置き抱きしめられた。

 突然の抱擁に私の思考は停止。

 緊張で体が震えた。

 そんな私の気持ちなどお構いなしにルディは私のこめかみにキスを落とした。


 ぎゃああああああ!!


 私の心の声である。


「ルルルルルディ…」

「はい」

「ままままままだ結婚していないし…」

「そうですね。結婚後の楽しみに取って置きます」


 私が寝やすいように布団を持ち上げてくれた。

 横になると私に布団をかけ肘を突きながら私を見下ろした。


「おやすみなさい、レア」

「おやすみ、ルディ」


 ルディが優しい手付きで頭を撫でてくれているうちに眠ってしまった。



 最近、私、お姉さんとしての威厳がない?

 この侯爵邸に来てからというものルディの私への甘やかし方が半端ない。

 両想いになったから?

 それとも私が気付いていなかっただけ?

 だが私も姉としてのプライドがある!

 これは姉としての威厳を見せなければ!!



 本日も夜会の準備を行いながら日中を過ごし、ルディが帰ってきたとの報告を受け出迎えた。


「おかえりなさい、ルディ」


 今日はお淑やかに挨拶をすると馬車から下りたルディが立ち止まった。


「今度は何ごっこですか?」


 遊びだと思われている!


「ルディ。私はお姉さんなのよ。淑女として当然の振る舞いよ」

「…なるほど」


 ふっふっふっ。公爵家で淑女を学んだ私の実力を見よ!


「姉弟の禁断の恋という設定も楽しいかもしれませんね」


 ん?

 ルディは私に詰め寄ると顎を持ち上げた。


「愛していますよ、姉上」


 ゆっくりとルディの顔が近付いてきて…。

 こ…これはキスされる!?

 真っ赤な顔でギュッと目を瞑るとおでこに柔らかい感触が。


「そんな可愛い初心な顔では手を出しづらいですよ、姉上」


 余裕ぶる弟がマジむかつくんですけど!!





読んで頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
おねーちゃん、頑張って!(笑) そして、使用人の皆様が有能過ぎるのか、レアお姉様がポンコツさんだからか、はたまた両方?!(笑)
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