ここは天国ですか
…ルディに監禁される夢を見た。
監禁されるのはヒロインのはずなのに…もしかして今度はヒロインに転生した?
寝返りをうつと目の前には…壁?
いや違う。これは…男の体!?
恐る恐る目の前に広がる胸板をツンツンしてみた。
服の上からでもわかる逞しさ…ってにやけている場合じゃない!
ソロリと顔を上げると…蝋人形?
作り物のような綺麗な顔立ちをしたルディが眠っている。
本物かどうか確かめるため頬をツンツンしてみた。
柔らかい…。
すると突然顔が動き指を舐められた。
生きてる!?
咄嗟に指を引くと目を開いたルディに見下ろされた。
っていうかなんでルディと寝ているの?私は誰?ヒロイン?それとも意地悪姉さん?
「おはようございます、レア」
意地悪姉さんのままだった。
終盤にヒロインが監禁されるような変な状況で転生したわけではないと知り何故かホッとした。
いや、今の状況も十分変だが…。
「なんでルディと寝ているの?」
「覚えていないのですか?」
私が覚えているのは王太子に告発したあとにルディが現れて、ルディと話して…ルディの笑顔で死んだ。
なるほど。ここは天国か。いや、違うだろ。
「レアが気を失ったあと、伯爵邸に連れて来たのです」
ということは、ここはルディのお屋敷。
「それで何で私とルディが一緒に寝ているの?」
「レアが俺に会いたがっていたようなので、目を覚ました時に寂しくならないよう配慮しました」
会いたいとは思っていたけどなんでルディがそれを知ってるの!?
「レアが部屋で呟いているのを聞きました」
私の心の声を読んだルディが付け足した。
「あの時ルディいたの!?」
「ええ、外に」
恥ずかしい!!
まさかあれを聞かれていたなんて!!
「なんで声をかけてくれなかったのよ!!」
「公爵に見つかるわけにはいかなかったので。レアの努力を無駄には出来ませんから」
それは…その通りだ…。
「だからって盗み聞きしなくても…」
「偶然聞こえたんです」
ルディは少し眉尻を下げながら私の頬に優しく触れた。
「その言葉を聞いてどれだけ俺が我慢をしたか…」
ルディから向けられた熱い視線に目を逸らすため俯いた。
「だからって一緒に寝なくても同じ屋敷にいたらすぐに会えるんだし…」
照れくさくなり少し不貞腐れたように呟いてみた。
「…部屋がなかったので」
飄々と嘘を吐かれた。
こんな豪華な部屋がある屋敷に住んでて無いわけないよね。
そこでなんで嘘つくかな?
「いや、部屋はあるよね?」
無言のまま無表情で見つめられているけど、これ絶対言い訳考えているよね?
君の事を何年観察してきたと思っているんだい。
「レアが俺を弟としてしか見ていないのなら何も問題ないのでは?」
え?思いついた言い訳それ?
確かに弟としてしか見れないとは言った。言ったけども!あれは事件の件もあって…。
ルディに視線を向けるも無表情のまま見下ろされている。
ルディは素直に気持ちを伝えてくれたのに私が拒否したのは事実だよね。
頭をコツンとルディの胸に当てた。
「嘘吐いてごめん。ルディを巻き込みたくなかったの…」
「…それで?」
え?それだけですけど?
「レアは俺をどう思っているのですか?」
ここで告白するの!?
もっとこう花が咲き乱れる綺麗な庭とか雰囲気のあるレストランとか色々あるのに…ここベッドの中ですけど!?
将来子供とかに『お父さんとお母さんはどうやって結ばれたの?』って聞かれた時『ベッドの中で告白し合ったんだよ』…って嫌すぎる!!
「ルディ…こういう大事な話はもっと場所を選んで…」
「気持ちを聞きたいだけなのに場所は関係ないと思います」
この子には情緒というものがないのかもしれない。
分かったわよ。
そこまで言うなら将来子供に聞かれた時に恥をかくがいい!!
「愛してなければ会いたいなんて思わないから!!」
『そうベッドの中でお母さんに告白されたんだ』…これ絶対私が恥をかくパターンだ!!
真っ赤になりながら顔を覆うとルディがベッドから起き上がった。
え?何?何か怒らせるような事でも言った?
ルディは引き出しから用紙を出すと私に手渡した。
「これに署名をお願いします」
差し出された用紙に目を落とした。
『結婚申請書』
…結婚!?
しかもルディの名前はすでに記入済み。
結婚ってあれだよね?夫婦になるってことだよね?
ちょっと待て。私達、今、気持ちを伝えあったばかりだよね?
「ルディ…結婚は…早くないかな?」
結婚したくないとかではないが姉弟からいきなり結婚とかおかしくない?
しかも相手は私を殺すかもしれないと警戒していた相手だよ。
これ小説だったら読者もついていけないくらいの急展開だぞ。
「せめてもう少し恋愛的なものを楽しんでからでも…」
「そう…ですか?」
『そうですね』とは言いたくないのね。
「ルディ…」
私はそっとルディの手を両手で持ち上げた。
「私はもっと結婚する前の恋愛とかを楽しみたいの」
「結婚しても恋愛はできますよ」
いや、まあ、そうだけど…。
「こう…手を触れるだけで胸がドキドキするとか…」
ルディの視線が私の両手に向けられた。
いや、まあ、触れるどころか握っているけど…。
「こう可愛くオシャレした姿でルディをドキドキさせたいとか」
ルディの視線が乱れて服がはだけた私の胸元に…。
そういう意味でのドキドキではな…くもないのか?
服を整え咳払いをした。
「とにかく!もっと恋人同士の甘い時間をルディと過ごしたいの!!」
言い終わると無言で無表情を貫くルディと見合った。
「…わかりました」
分かってくれた!?
顔を綻ばせるとルディがギシリとベッドに足をかけ迫りながら私の顎に手をかけた。
「では今日一日、俺と甘い時間を過ごしましょう」
全然伝わらないのは何故ですか!?
ベッドの上だけで一話書き上げたのは作者始めてかもしれません。
読者の皆様の温かい感想やポイントなどに励まされながら、誘惑に負けそうになる心をなんとか維持してここまで書き上げることが出来ました。
読んで下さっている読者の方々には本当に感謝しております。
今日は告知しておいた『いいね』ランキングを発表したいと思います。
たくさんの『いいね』ありがとうございます。
告知してからの変動が激しく作者嬉しく思っています。
同率第一位
秘めた想い(ルディウス視点) これは最初から一位だった回です。投稿するまで何度も書き直した甲斐がありました!
全ては君を守るために(ルディウス視点) これ絶対少ないと思っていたのに予想外!何が良かったんだろう…。
第三位
揺さぶられる感情(ルディウス視点) 本編の方では人気のなかったこの場面。ルディの視点で人気出て良かったです。
それにしてもルディウス視点ばっかだな…。
告知前は本編もランキングに入っていたのですが…。
最下位は「危機に頼るのは」でした。そんなにダメだった?
以上になります。
このあとはしばらく甘い時間を過ごした後、新たな問題が発生する予定です。
今後ともよろしくお願い致します。
読んで頂きありがとうございます。