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イチオシ短編

うんこBBQ 〜外はカリッと、中はホクホク〜

作者: 七宝

【注意】うんこが出てきます

「おい、うんこマスター! うんこマスター!」


 誰かの声が聞こえる。目を開けると、いい大人がピンクの全身タイツを着てうんこマスターと何度も叫んでいるのが見えた。そうか、聞き間違いじゃなかったんだな。


 思い出した、俺はさっき死んだんだ。手を上げて横断歩道を渡っていたところを戦車にはねられて即死。我ながら最悪な最期だったなぁ。

 ということは、ここはあの世か。うんこマスターと叫ぶおっさんがいる世界って天国? 地獄?


「うんこマスター! 目が覚めたんだな! 良かったぁ!」


 うんこマスターって俺のことなのかよ。でもまぁ、心配してくれていたんだな。悪い奴ではないんだな、このおっさんは。俺はここがどこなのか聞いてみることにした。


「おっさん、ここは天国なのか? それとも地獄なのか?」


「何言ってんだ、いつもの街だよ。そんでここはお前の店だろうが。頭を打っておかしくなったか? 大丈夫か?」


「ああ、大丈夫だ。なんでもないよ」


 病院に行けとか言われると嫌だから嘘をついたけど、大丈夫な訳がない。俺は店なんてやっていないし、こんな全身タイツの知り合いはいない。ということは、ここは俺のいた世界とはまた別の世界なのか? もしや、これが噂に聞く異世界転生!?


 戦車にひかれて人生終わったかと思ったが、まだ生きられるんだな。嬉しいよ。ただ、うんこマスターって呼ばれるのは嫌だな。


「そうか、大丈夫なんだな。じゃあ遠慮なく注文するぜ。中1本とビール頼むわ」


 中1本とビール? 生中1杯じゃなくて? ビールと中1本は別物なのか?


「ごめん、中ってなんだっけ」


 病院は怖いので、怪しまれないようになんとなく、さりげなく聞いてみる。


「お前やっぱ頭打ったんじゃないのか! すぐに病院に行こう!」


 おっさんは俺の腕を掴み、店の外へ連れ出した。そういえば、俺の店って何屋なんだ? そう思い俺は店の看板を見た。


『うんこBBQ(バーベキュー)


 マジ? マジのマジ? なんでそんな名前にしたんだよ過去の俺。そういえば俺が目覚めるまではこの体は別の人間だったっぽいよな。じゃあ店名考えたのはこの体のやつか。


 どんな見た目なんだろうか。鏡が見たいな。どんな顔してんだろ⋯⋯んっ? すんごい髭もじゃだ! おいおい、どこまで髭あるんだよ⋯⋯って、アラウンドザワールドじゃないか! ちゃんともみあげまで繋がってるよ!


 あ、頭痒い。ボリボリ⋯⋯!? 髪がない! めっちゃツルツルしてるよ! ザビエルみたいな髪型になってる! じゃあアラウンドザワールドじゃないじゃん⋯⋯ここで途切れてるじゃん⋯⋯


「さぁ、乗れ!」


 ピンクの真ん丸の車に俺を乗せようとするおっさん。病院怖いよぅ。頑張って言い訳考えないと。


「思い出した! すぐに焼いてあげるから、店に戻ろうぜ!」


「そ、そうか⋯⋯? 大丈夫ならいいんだが」


 とりあえずBBQ屋ということが分かったので、何かしらを焼けばいいんだ。おっさんは首を傾げながら店に入ってきた。


「じゃあ早速焼いてくれ! オレあっち向いてっからよ、そこでやっていいぜ!」


 なんであっち向くんだよ。説明しろよ。っていっても俺が店主なんだもんな。何作ってたんだろ。レシピとかマニュアルとかないのかな。俺1人で営業してたのかな。異世界転生ってガイドとかついてくれるもんじゃないの? 読んだことないから知らんけど。


「まだか? 便秘か?」


 便秘か? もしかしてあっち向いてるっていうのは、俺がうんこをするのを待つってことなのか? だとしたらうんこを焼くってことになるよな。うんこBBQって店名だけど、本当にうんこを商品として提供してるのか?


「今ふんばってるから、ちょっと待って」


「ああ、分かった。頑張れよ」


 やっぱそうなんだな。俺がうんこを捻り出して、この網で焼いてビールとともに提供する。そういうことだな!


 俺は腹に力を入れた。すると、いとも簡単にぶっというんこがニュルルンと出てきた。特に便意も無かったのに、ちょっと力を入れただけでこんな電柱みたいなのが出るなんて⋯⋯そうか、これが『スキル』ってやつか! 俺はうんこの能力者なんだな! 嬉しくねぇ!


 とりあえずこれを網に置いて⋯⋯っと。しばらく待てばいいのかな? そうだ、その間にビール用意しよ。ビールサーバーは普通にあるんだな。グラスにも某メーカーのロゴがあるし、おかしいのはうんこ(しょく)くらいなんだな。


 ジュウ〜、とうんこの焼ける音がする。音だけ聞くと美味そうなんだけどな、臭いがすごい。


「お、もう出したんだな! そっち向くぜ⋯⋯っておい! 俺が頼んだのは中だぞ! そんなみっちり詰まった特大なんて頼んでないぞ!」


 しまった、忘れてた! でも中ってどれくらいだ? 今から切り分けても間に合うのか? いい? おっさん。


「それは俺は要らねぇからな! もう1回あっち向いてるから、早くしてくれよな」


 もう1回出せっていうのか。じゃあさっきのは廃棄か? 勿体ない⋯⋯


「ふんぎぎぎぎぎ」ニュポン


 いい感じの、ノーマルサイズのうんこが出た。よし、これを網に乗せて焼こう。


「こっち向いていいよ!」


「おう! ⋯⋯っておい! これうんこじゃねえかよ!」


 うんこ食べたいんじゃないの!? 何なのこいつ! 殺したろか! なあ!


「大便と小便をブレンドしてこその中だろうが! それを焼いて外はカリッと、中はふわとろ⋯⋯想像したらヨダレ出ちまったよ。とにかくそれだと中がホクホクになっちまうからよ、早いとこ小便と混ぜてくれ」


 なるほど、そういうことだったのか。おしっこも出さないといけないからあっち向いてたんだな。律儀に説明してくれて助かる。もしかしてこのおっさん、俺が何も分かってないの気づいてる? 気づいてるけど食欲が勝ってるから何も言わないのか?


 ジョボジョボジョボジョボ


 紙コップにおしっこをした。検尿みたいだな。これをボウルで混ぜて⋯⋯よし、緩いタネが出来上がったぞ。これを棒状に延ばして、さっきの要領で焼けば⋯⋯完成!


「おっちゃん、出来たよ!」


「おっ、今日は串に刺してないんだな。たまにはこういうのもいいな」


 いつもは串に刺して焼いてるのか。フランクフルトみたいだな。そっか、そういえばここBBQ屋だったな。


「さて、いただくとするかね。ビールを左手に持って、箸でうんこ摘んで⋯⋯パクリ! んん〜! ⋯⋯ん?」


 おっさんは険しい顔をしている。さっきから俺間違ったことしすぎじゃない? 何やっても1回も当たらないんだけど。次はなんなんだろうか。


「ひと口食ってみろ。ほら、全然ダシが効いてないだろ? 今日はダメだなぁ。本当にどうしたんだ?」


 確かにダシの味がしない。普通のうんことしっこの味だ。しかし、食感は良い。カニクリームコロッケのような感じだ。ていうか、ダシってなんだ? しっこのことか? あんなもんただのアンモニア臭い黄色い液体だろうに。こいつは今までなに系のダシを感じてたんだろうか。


「今日はもういい、帰るよ。体大事にしろよな。じゃあな」


 おっさんは帰っていった。俺、このままうんこBBQ屋として生きていくんだろうか。ちょっと外の景色を見てみるか。さっきは病院に行かせないようにするのに必死で何も見てなかったからな。


 外に出た俺は驚愕した。今見えている景色は、普通に生きていた頃の俺の家から見える景色そのものだったのだ。青井さんの家も松原さんの家もあるし、そこにコンビニもある。ちょっとコンビニの中を覗いてみようか。


 中に入ると、見覚えのある店員さんが2人いた。棚に並んでいる商品も見覚えのあるものばかりだ。どこにもうんこは見当たらない。ちょっと店員さんに聞いてみるか。


「すいません、うんこって売ってます?」


「そんなもんあるわけないでしょ。売ってるのは世界中探してもあなたの店だけですよ」


「え!? ⋯⋯失礼しました」


 もしかして俺ってこの世界では狂人扱いされてる? 俺だけがおかしくて他は元の世界と同じだったりする? もしそうだったら最悪なんだけど⋯⋯


 店を空ける訳にもいかないので、とりあえず戻った。急に閉めるのも悪いから、明日から休業ってことにしよう。んで明日からいろいろ調べよう。


 店の中ではネットで調べるくらいしか出来なかったので、ずっとパソコンをいじっていたのだが、やはりおかしいのは俺だけのようだ。正確には俺とあのおっさんの2人だが。ずっと店で待っていたが、夜になっても客は来なかった。


 俺はなんのために異世界転生してきたんだろうな。うんこマスターなんて呼ばれて、みんなからは変人扱いされて、最悪だよ。こんな店はやく潰して居酒屋にリニューアルしよう。よし。

 感想いただけると嬉しいです。お礼に1本あげますよ〜(●︎´▽︎`●︎)


 誤字報告ありがとうございます! お礼に中1本差し上げたいです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 夕食時に読んではいけませんでした。 カニクリームコロッケの下りがもう…。 主人公が正常な世界に戻れたようで、よかったです。
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