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第26話 彼氏と彼女と山道と。


福岡県、那珂川市。


そう言われても、同じ福岡県民でも、すぐに、把握は難しいだろう。


ー筑紫郡、那珂川町。


そういわれた方が、昔から福岡に住む県民には、馴染みが深い。


もっとも、当の市民たちも、いまだに間違えて那珂川町といってしまうらしい。


ただ、住所を書くときに、筑紫郡がなくなったから、


ー楽。


らしい。なるほどなあ、だった。


そんな?那珂川市は、隣接している春日市や福岡市と同じく、福岡都市圏の一部を構成する。


いろいろな市が、周囲の市町村を合併して市になる中、単独での市への昇格をめざした稀有な市でもある。


実際に、2010年の国税調査では、49.785人でごくわずかに5万人に到達せず、その後、那珂川町では「市になろう」キャンペーンが実施されれていた。


その甲斐あって、2015年の国税調査では、50.004人にたっした。


わずか一世帯分の数値で、市となった、稀有な市でもある。


毎日のように「今日は何人?」と役所に電話できいてくる老人もいたとか、いないとか。


そんな那珂川市は、JR西日本の新幹線の車両基地があり、それを利用した博多南駅ビルがあることでも有名だ。


しかも駅は春日市にあるのに、駅ビルは那珂川市という実にへんてこな、新幹線の駅が存在する。


片道300円で、博多駅まで10分でいける、便利な市だ。


ただし、基本的は山が多く、人口は平野のさかえた場所に集中しているため、同じ市内でも過疎化と都市化の差が激しい市でもある。


そんな那珂川市と佐賀県の県境に位置するのが、2019年に竣工された、福岡県で最大のダム、五箇山ダムだ。


その手前にも南畑ダムがあり、上にはたしか、背振ダムがあったような?


ってか、3つのダムが佐賀との県境の背振山にあるのかよ?


ちなみにこの背振山には、何年かに一度の割合で、クマが目撃話がもちあがる。


九州にはいないので、毎回イノシシだろうでおさまっているが。


ー熊、出たら、怖えな。


イノシシも怖いけど。


そんなことを思いながら、車を走らす。


俺の住んでる地域からだと、ちょっと遠いのだが、そこはドライブ好きな俺だ。


明日菜に、酔い止め薬をのんでもらったのも、裏道じみた峠を、三つほどぬけるからでもある。


およそ80分のドライブだ。


「ほんとうに運転が好きなんだね?春馬くん」


運転用のキャップとサングラスをした俺の横顔をみて、明日菜が笑う。


ー無邪気な、こどもみたいな笑顔で。


「ああ。山道を走ってこその、マニュアルだしな」


しかも、俺のデミオはディーゼルターボー仕様だ。


面白いほどの力強さで、ぐいぐい山道をのぼっていく。


ーちなみに、下りはよわい俺のデミオ。


オートマよりは、ましだけど、エンブレのききが、ガソリンに比べると、いまひとつわるい。


買う時にスズキのスイスポと迷ったんだけど、あれだとマニュアルは、ハイオク仕様だから、学生の俺には、手が届かなかった。


まあ、いまはデミオがお気に入りだから、もしMazda2のマニュアルが生産停止になることがあれば、どうしてもその前に手に入れたい俺だ。


でも、デミオほどの楽しさは、もうないだろうな。


絶対、コンピューター制御の性能が、上がってるだろうし。


それなら、軽自動車選べよって話なんだろうけど、たしかにいろいろ諸経費は安いし、メリットだらけなんだけど、パワーがなあ。


けっこう、山道をはしる俺だ。


どうしても660のエンジンでは物足りない。


ジムニー系なら別なのかな


けど3ドアだと使い勝手が悪いし、四駆はゆれるから萌ちゃんたち酔うだろうし・・・。


いつか、俺も、明日菜と結婚したりしたら、家族のためにデミオを手放す日が来るのかな?


マニュアルあるあるだけど、家族のだれも、特に奥さんがのれない車を買うなって毎回叱られるって、マジなんだよなあ。


「明日菜は、運転免許取らないのか?」


「うーん。いまのところ必要性を感じてないかも。東京だといらないし」


「そうだよなあ」


「でも、春馬くんが楽しそうに運転しているから、免許取ろうかなあ」


おっ?マジで?


「でも、オートマ限定かな?」


「・・・だよな」


そもそも、もうほとんどのメーカーが、マニュアル車売ってないしな。


いまや、トラックでもオートマの時代だし。


日産なんか、もうすぐ、自動運転だぞ?


もはや、運転免許いりますか?


って、時代がくるんだろうなあ。


それで、悲惨な事故が無くなるなら、いいとは、頭でおもっているけど。


そういや、釣りする時も、となりでいきなり、水中ドローンで地形撮影するやつもいたなあ。


ー魚逃げるんですけど?!


あれって、地形をよんで、釣るから達成感があるんじゃねーの?


・・・もはや気分は、原始人な俺だ。


そう思いながら、車をはしらせていると、細い山道にはいっていく。


「・・・けっこう狭いんだねけ」


「ここから、南端ダムまでは、狭くて、カーブが多いから、酔わないように外みてろよ?」


明日菜の助手席側の窓を少しあけてる。


道幅が狭いうえに、両側から木の枝が伸びていて、晴れていても、薄暗い山道がつづく。


カーブもふえるし、こんな狭い道でも下手したら大型バスとすれ違うから要注意だ。


俺は、デミオのギアを、こまめに変えながら、でもクラッチ操作をミスって、変なアクションがつかないように、細心の注意をする。


俺一人なら、あの赤い帽子のチョビ髭みたいに、ヒャーッホーイ!って、るんるんで、ここぞとばかりに、ギアチェンジや加速を楽しむんだけど、さすがに明日菜をのせているとなると、できないし。


もともと、安全運転だから、制限速度しかあげないうえに、大抵の場合、目のまえに車いるしな。


相手が飛ばしてなければ、ふつうに、車間距離をあけてついていく。


むしろ、よけれる場所があれば、後続車に先に行ってもらう俺だ。


だって、地形がわかんねーから、先導してもらったが安全だし。


先頭、疲れるし。


たまに、白バイいるし。


あおったやつが捕まっていたら、自業自得だろって、思うし。


情報って、大事だな。


っていうか、なんで正義の味方のはずのパトカーや、白バイが、免許取った瞬間から、怖いって、感じるのは、俺だけ?!


対向車や前後に警察車両いると、なにもしてないのに緊張するんですけど?!


「あっ、ダム」


左手にみえたダムをみて、明日菜が言うけど、


「それは南畑ダムな。俺が行きたいダムは、もうちょい先にあるけど、ここからは道が、広くてきれいになるぞ?」


「あっ、ほんとうだ」


基本的には将来、いまきた山道も、きれいに整備されると、きいたことがある。


この国道385線は、そのまま、有料の東背振トンネルにつながっていて、福岡と佐賀の県境でもある。


金を払わないで通行したいなら、坂本峠という道があるが、ものすごく細いうえに、2トン車以上は禁止という山道だ。


しかも、たいていの場合、ちょっとの雨や雪で封鎖されるし、う回路なので、それなりに時間がかかる。


それなら、320円のトンネル代を払って通行する人の方が多い。


トンネルを通り抜けたら、佐賀県にようこそだ。


いやトンネルね前から佐賀県だよな?


ただし、今日は、そこまでいかないけど。


俺はダムが一望できる、山登り専門のお店の駐車場に車をとめるため、左にウィンカーをだした。


ーここで、俺たちの未来が、たぶん、動くって思いながら。


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