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第23話 彼氏と彼女と彼氏の憧れのシルバーバック。


車で5分くらいの場所にあるコンビニの駐車場に、デミオをとめて、5分。


俺は、ふだんはあまり気にしないサラダコーナーを目の前に、首を傾げていた。


ーなんでこんなに、いろいろと種類あんの?


サラダなのにパリパリ麺やパスタいるの?


明日菜の言ってるサラダって、どれ?!


「・・・野菜ジュースじゃダメかな。100%のやつ」


ついさっきまで、明日菜を空腹から守ってやる、って思ってた俺は、いったい、いま何処?


コンビニ食の進化に、唖然としている俺だ。


そもそも、サラダコーナーって気にして見たことないし。


金払ってまで、草食べようと思わないし。


弁当買えば、1種類くらいは、野菜あるし。


似た値段で、キャベツやもやしは、腹いっぱい食えるし。


ーそういえば、もやしで魚釣りするって、どっかできいたことあるけど。


釣れんのか?


形は、ワームっぽいし、いけるのか?


YOUやネットで調べた事ないから、わかんないけど。


〇ちゃんいかを、試したことは、あるけど。


ああいうのって、YOUに投稿するくらいだから、うまいアングラーなんだよな、基本的に。


沖縄の釣り動画とか、マジでずーっと見てられるし。


もやしに、エギ用のスプレーしたらいいのか?


・・・もはや、なに釣りだよ、それ。


もやしの何倍もスプレーが高いじゃねーか。


いや、けど、釣れたら動画いけるのか?


ームリだな。


俺の関西に、住んでいる釣りの師匠が、Youは編集が面倒だから、アップしないって〇ンスタしてたし。


ちなみに俺は、いまだに〇ンスタとTik〇ckの違いがマジで、わかってない。


ソンケーする師匠と、その奥様だけの動画をみてるだけだ。


ほんと、なにが違うんだろ?


根本的に、たぶん、俺が、違うんだろうけど。


わっかんねー。


ちなみに、学生時代に頼まれて、やった顔本で、ものすごい量で、一瞬で、知らないやつらの情報が入ってくるから、マジでビビった。


ー解約したいんだけど、解約の仕方がわかんなくて、名前を適当にして、放置しているけど、いちいち「知り合いかも」ってくるの勘弁してほしい。


おんなじ理由で、〇インもひびったし。


なんで登録した瞬間に、あんなに情報もれんのって思ってたら、ちゃんと規約に書いてあった。


あんな長い文章、最後までみるやついるの?


ー見ないから、詐欺に引っかかるんだろうな。


俺みたいなやつが。


ラ〇ンはブロックすぐかけたけど。


ガススタ安くなるし、ワクチンの予約で必要だし。


・・・逆にブロック解除の方法、わかんなくなったし。


「明日菜用のスマホもってきて正解だったな」


明日菜から、俺の情報がもれるならまだしも、俺から、明日菜情報がもれるのは、確実にダメージの大きさが違う。


高校時代に、必死にバイトした俺って、えらい。


ーバイトしたから、明日菜と時間がすれ違ってた気もするけど。


「まあ、あんときはまだ、明日菜が、しつこく連絡くれていたし、な」


柴原に言ったら、健気って言えって、やっぱり校庭100周させられて、女子連中に指さされて、笑われていた俺ってどうよ?


いや、マジで。


そんな悲惨な?夏の思い出を思い出しながら、俺はてきとうに、何個かサラダとヨーグルト、俺用のおにぎりと2人分のミネラルウォーターを買った。


ちなみに、ペットボトルは、手洗い用の水としてよく釣りに持っていくから、容器がかたいやつを選んだ。


ー明日菜がつかったペットボトルって、魚釣りに持って行っても、いいよな?


魚を洗うわけじゃないし。


魚を触った手は洗うけど。


・・・なんかやばい気するからやめとこう。


ちなみに、スマホの電子マネーは使う俺。


スマホをピッするだけで、ぺぺってなる。


べんりだけど、口座引き落としにしたら、すぐ残高ゼロになりそうだから、いちいちコンビニでチャージする。


めんどくさい、って思いながらもチャージするのは、まあ、使う時便利だし、ポイントたまるからだよな。


ポイント意識しだしたのは、社会人になってからだけど。


そんなことをおもいながら、コンビニを出ようとしておもいだした。


そういえば、他にもほしいものがあったのを、思い出して、ちょっとだけ、帰りがおそくなった。



「あっ、おかえりなさい」


玄関をあけると、明日菜がバタバタとよってきた。


ーので、


「ただいま、明日菜」


俺は、かるくだきよせて額にキスする。


たぶん、これも、明日菜の恋愛ドラマなんで見慣れたシチュエーションだけど、


「ーなっ?!」


おでこを両手でおさえて、半泣きで、でもうれしさを隠せない「明日菜」を知っているのは、俺だけだから、


ーもう、いいよ?


「留守中、大丈夫だったか?」


そう言いながら、玄関にある除菌ジェルをプッシュ。


かえったらー♪


じょきーん―♪


てあらーいー♪


忘れずに、だな。


ちなみにいまの阿〇ヶ谷シスターズなら、うまいんだろうな。


俺の好みドストライクのシスターズ。


・・・あれ?俺って、年上好きなのか?


「あれ?俺の彼女って、明日菜だよな?」


「・・・誰とくらべたの?」


「阿〇ヶ谷シスターズ」


「・・・ここは、日本だから、ハーレムは、だめだよ?春馬くん」


「ハーレム以前に、明日菜いるし」


「へっ?」


「へりくつばっかりだけど、さ」


「へっ?」


「へんな豆知識ばっかりだけど、さ」


「へっ?」


「へんに意気地はないけど、さ」


「へっ?」


「へんに強がってるけど、さ」


「へっ?」


「変になるくらい、明日菜だけが好きだ」


よし、決まった!


「・・・ガッツポーズしなかったら、かっこよかったね?春馬くん」


ーあ、やっぱり。


「・・・決めたと思ったのになあ」


「他の女の人の名前をだした時点で、アウトだよ?」


明日菜が少し呆れて、でも優しく俺の肩に両手をのせると、


「おかえりなさい。春馬くん」


柔らかな唇が頬にふれた。



がさごそとコンビニのビニール袋から俺は、買ってきた食料をテーブルにだしていく。


その量に明日菜がすこし呆れていた。


「なんでそんなに買ってきたの?」


「サラダがわかんかなかった」


素直にいったら、


「お菓子までサラダ味にしなくても」


「だよなー。ジャガイモ使ってる時点で、野菜入ってるのに、サラダ味って、なんだろうな?そもそも、サラダ味って何味だ?」


「たぶん、深い意味かあるんだよ。興味あるなら、自分で調べようね?春馬くん」


「調べていい?」


「いまは、さきにごはん食べようね?」


「・・・サラダって、メシになるの?」


ーこれぞまさしく、サラメシじゃねーか?


「もう、いいいから。あれ?酔い止め?」


ちいさな箱をとりだして、明日菜が首をかしげる。


コンビニにあるか、不安だったものの、ひとつだ。


子供用の酔い止めなんかの、第2種類医薬品はむりだったが、医薬部外品の大人用はかえた。


もともと念ために、かったものだし。


「ごはん食べたら、明日菜と出かけたい場所があってさ。ちょっと山道をとおるんだ。明日菜って、車酔いするだろ?」


「うん、昨日は、飛行機用に飲んでたから、平気だったけど」


「だから一応買ってきた。でも明日菜の薬が残っているなら、そっちを飲んだ方がいいな。これ、医薬外品だし」


「うん。わかった。あっ、そうだ、そういえば、純子さんから伝言だよ」


お互いに手を洗って食卓につくと、明日菜が思い出したように言った。


「軍曹?」


「うん、さっきね。空ちゃんが来て、萌ちゃんと純子さんがー」


「ああ。萌ちゃんが、俺にコバンザメしたかったのか」


「・・・たぶん?」


「便利だよなー。くっついてたら、飯も移動もしてくれる。いいな。あの吸盤」


「・・・よくあるの?」


「うーん、たまに、かな?雨の日とか釣りに出ないから家にいるし。雨天時の轟木三姉妹がうちにいるのって、降水確率よりかなり高い」


「・・・まあ、みんな気軽に、遊びにいけないものね」


明日菜が小さく息をはく。


そう。轟木三姉妹がうちに遊びにくる理由は、遊びにいけないからだ。


コロナ前だったら、ふつうに雨天用の商業施設や児童施設なんかで、暇つぶしできていたのが、できなくなった。


なにしろ大雨でも、小さな公園のトンネルは、子供たちで、過密状態になる。


ー友達と遊びたい。


トンネルの中で、ゲームやなんやで、わいわいしてる。


つい最近までは、商業施設やお互いの家なんかだったんだろうけど。


「で、軍曹からの伝言って?」


梅干し入りのおにぎりを開けながら、明日菜に問うと、明日菜はちいさな、本当に野菜しか入ってないサラダを手に取り言った。


「今週は、壱さんがいるから大丈夫って」


「ああ、よかった」


「どういうこと?」


「いや、壱さんが夜勤の時は、俺、その日は酒を飲まないようにしているからさ」


「どうして?」


「べつに、頼まれたとかじゃないんだけど、これは、俺の勝手な理想っていういうかさ」


なんつーか。明日菜の前で言うのは、ちょっと気恥ずかしいけど。


本当に俺の、勝手な理想に、俺が轟木一家を巻き込んじゃってるだけだし。


「明日菜ってさ。俺よりネット見るだろ?」


「うーん?どうだろ。私もあんまりみないかなあ」


「えっ?」


「だって、私はネットに載る側の人間だもん。見たくもない記事も、目に入るし。マネージャーからも受け流せないなら、見るものじゃないって、言われているから。そりゃあ、ニュースやオリンピックとかは、みるけど」


言われてみれば、明日菜はネットに「載る」側だった。


いまどきのネットは、簡単に相手を傷つけて、それで自殺にまで追い込むような時代だ。


ー確かに、見たくないものは、無理してみなくていいと思う。


とくに、こまらないし?


災害時のネット情報って、わりとデタラメだしな。


まあ、あたりまえにみんながパニックならさ?


ーよくわからない恐怖心をあおる情報ほど、嘘が通るし、なによりも、


いや、そんなに被害をうけてるなら、まずネットに、まだつながらないだろ?


もっと復旧に時間かかるぞ?発信源をちゃんと確認しろよ?


が、


ー通らないくらいに、パニックになる。


は、わかる。けど、俺はまずそのネット先をみない。


だって、なんで災害時に、スマホでわざわざそこをみるんだ?


貴重なバッテリーの無駄遣いだぞ?


まあ習慣なんだろうけど。


ー習慣って、おそろしいな。


だから避難訓練とか大事になるよなあ。


福岡も五年連続で大雨特別警報だしなって、考えていたら、


それで、と明日菜が視線でうながしてきた。


「ん?ああ。ーくだらない理想って、笑ってくれていいんだけどさ。もうずいぶんと前の記事で、記事自体はまったく覚えてないんだ。飲酒運転だったのか、たんなる子育て記事だったのかも、覚えてないんだけど」


俺の頭に、強烈に印象にのこったコメントがあった。


「コメントをぼんやりみてたらさ、ひとりの父親がすっげーカッコいいなって思ってさ」


内容は、すごくシンプルだった。


家族が全員、無事に眠りついたら、ようやく酒をのむ。自分、しか、運転できないから。


「その記事を読んだ時に、めっちや気障なヤツだなって、そうおもったけど。文章自体も、素人、だったけど。けどさ、ああ、もしも本当なら、すげー家族を大切にしているんだなって」


もちろん、それなら酒自体を飲まなければいい。それが最善だし、その父親は飲んでるじゃないか。夜中にもしもがあったら、意味がないじゃないか。


「俺も、そう思ったけど。でも、やっぱりかっこいいなってさ」


飲みたい酒を我慢するわけでもなく、それで、ストレスを発散しながら、けど、無理なく、自然に、家族を大切に守る父親。


たんたんとした文章だけが、俺の頭に残っている。


「だから、壱さんがいない時は、なんかあったら俺が少しでも役に立てるように、凜ちゃんが高熱出したりしたら、病院に連れて行けるようにって」


そう、勝手に、いつか手にしたい未来のために、予行練習していただけだ。


それを明日菜にいうのは、とても気恥ずかしかったけど。


「そっか・・・。そういう素敵なお父さんもいるんだね。そういえば、さっき真央から連絡があって、イケメン先輩ともご挨拶できたよ?」


「めっちゃイケメンだろ?」


俺は、胸をはったけど、明日菜は、ちょっと微妙な顔になる。


「性格はイケメンだと思うけど」


「なんで?!あれこそ、真のシルバーバックだろ?!」


「はっ?」


「野生だから、歯はしっかりしているぞ?」


「はっ?」


「母親にも子供にも大人気だ」


「はっ?」


「灰色の毛が特徴」


「はっ?」


「灰色の毛が背中に鞍の形に発達している」


「はっ?」


「灰色の背中で、シルバーバック」


「はっ?」


「灰色なのは、長寿の証でもある」


「・・・なんの話?」


「ボスゴリラ」


めちやめちやカッコいい、シルバーバック。


「イケメン先輩、そっくりだろ?」


俺が笑うと明日菜が呆れたように笑った。


「とりあえず、朝ごはん食べようか?春馬くん」


「・・・はい」


おっかしいなあ。あとで、YOUにのってるかの有名なシルバーバックみせてやる。


車の前に、道の真ん中に悠然と立ち止まって、群れ全体を安全に渡らせたシルバーバック。


・・・英語だったから、意味はなんとなくだったけど。


たしかに、ファンタスティックだったなあ。


しっかり、赤ん坊を抱っこした母ゴリラや若いゴリラ守っていて。


いまの柴原をやさしくうけとめてまもってるイケメン先輩その人だ。


「それで、春馬くんは、どこに行きたいの?」


明日菜が言うから、俺は素直に、こたえた。


「五ヶ山ダム」


2019年に竣工した福岡県で最大のダムの名前を。

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