ルービックキューブな彼女 8
…やばい。失言だよな。
無口なくせに口を開くと嫌味にきこえる。とは、よく友人に注意される。
ズレてるらしい。
僕自身には、どうやっても自覚や悪気はないけど、もう生きた年齢くらい注意も受け続けたわけだから自覚はある。
たんに想像やまわりのパターン的にだけど。たぶんこれが、
…人生経験値?
人生がルービックキューブくらい簡単に目に見えてYES、NO、を目に見えて教えてくれたら楽なのに。
(謝るのも変だよなあ)
って思いつつなぜか、というか、こういう場面で僕は人の目を見ることが苦手だ。
悪気はないんだ。だけど、もうズレてる。
…ルービックキューブにはズレがないのに。
だけど、
「…はっきり、言ってくれるんだ」
って、野良猫みたいな彼女は少し笑った。その笑顔がなぜか、野良猫が警戒心をほんの少しだけといたときのささやかな変化を感じて、僕は意外な気持ちになった。
「きみはいまの言葉をひどいって思わないの?」
ついまた口にしていた。
おいおい。話をきくのはおじさんの僕だろ?なんで僕の悩みみたいな質問してんだよ?
って内心思いつつ、口にしてしまうくらいには、僕は彼女に興味が少し沸いたらしい。
いい歳食ったオッさんがバカかよ?って思うけど。
彼女はまた笑う。ただ無邪気じゃなくて、無気力に近いだろうか?
「…ほんとうに先輩の彼氏….、違うか。いまは旦那さんか。似てるね?そういうところ」
…なぜなろう。
その先輩の彼氏、いや旦那にムカつく僕がいた。