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新生児室から、病室にベビーベッドがうつされた。
明日菜の病院は出産当日は、助産師さんたちがバイタルチェックも兼ねて、あと出産でつかれた母体を気づかってくれて、2日目から母子同室がある。
明日菜は、少し出血が多くて、顔色は悪いけど、まだ点滴をしてるけれど、ベッド脇に近づけた真菜を愛おしそうにみてる。
陽菜の時はどこか不安そうだったのに、真菜はもう愛おしそうだ。すっかり母親の顔で、
「授乳がなれてますね?って少し年上の新米ママさんから羨ましいって言われちゃった」
新生児は入院期間中に授乳する前後で体重をはかり、発育をみる。
初産だと最初のうちは母乳のでがわるく、たまに,粉ミルクを与えることもあるらしい。
とは、明日菜からきいた話だ。
個室の病室内ならともかく、たくさんの女性が集まる授乳室に俺が行けるわけないし。
ー絶対、居心地わるいよな。
いまだに真菜に授乳する明日菜になれないし。陽菜でなれないまま、次は真菜ってかんじだ。
明日菜が仕事で留守でもこまらないように粉ミルクと併用してるけれど。
新生児のゲップだしだって、俺、うまいぞ?
って思いながら、明日菜の寝顔を見つめる。生まれたての、真菜もふわっとあくびをする仕草さがかわいくて、
「幸せだなあ」
きっと、ここに陽菜がいたら、さらに幸せを感じるんだろ。
陽菜はもっと病室にいたがったけれど、言葉巧みに遊びに連れて行かれた。
今回は長めの海外出張が続いてたこともあり、俺は会社に育休届を提出してる。
上手いこと、柴原の出産とズレてくれたから、育休が通りやすかった。
いまなら、イケメン先輩の抜けた穴を俺だって少しはカバーできる…はず?
「…ん?春馬くん?」
掠れたこえで明日菜が俺をよぶ。出産で叫んだため、喉を痛めたらしい。
俺は冷蔵庫からとりだしたミネラルウォーターを片手に明日菜が寝てるベッド脇に腰をおろす。
ペットボトルだけどストーローでのめるタイプだ。
差し出すと明日菜は口をつけて少しのんだ。
出産したばかりで、まだ,シャワーも浴びてないから少し髪もごわごわしてるけれど。
「きれいだな」
つい口から言葉が漏れる。化粧だってしてないし、病院衣だけど。
明日菜が身を起こそうしたから、華奢な肩をだき、手伝う。
いまだにその細さにびっくりして、陽菜の時もそうだったけど、真菜のあまりの小さくってか弱い姿に唖然とする。
ほんとうに、俺が守らないと。
そんなことを思っていたら,明日菜が俺の肩に顔をのせてきた。
少し汗の匂いがするから、なんとなく中2の夏休みを思い出す。
もちろん言わない。流石の俺も我が子をムカデに例える気はない。
「陽菜と同じくらい可愛い子をありがとうな?明日菜」
お疲れ様とその額に唇でふれる。明日菜はただ目を閉じて嬉しそうに微笑んだ。
我が家にもうひとり家族が増えた日。