SS
「…ベルトコンベアってあんたね…」
陽菜の卒儀式のことをイケカマ係長に社交辞令?できかれ、ついそう言った俺だ。
自分が子供時代はなんとも思わなかったけど、いきなり一斉に立ち上がるとか、びっくりした。
なんの軍隊⁈
いや、福岡だと、体育の掛け声は、
ーやっ!
だ。
あれ、お隣の轟木姉妹は完璧に福岡育ちだから、全国だと思ってたらしい。
俺や明日菜や柴原も、びっくり的な?
とりあえず卒業式が違いすぎたよなあ。
いろんな意味で、すげー時代だって再認識したけど。
ふと脳裏に浮かんだのはもう死んでから随分たつじぃちゃんの存在だけど。
青春を戦争という時代にいき、その後の混乱期を生き抜いたじぃちゃんは、まさしく、陽菜の学校の校長先生が言った時代、
ー誰にも未来が読めない時代を、生きた。
ただその事実が、いまある。
その息子の親父や孫の俺はもう戦争を知らない時代が当たり前で、平和の中だけど。
いろんな革命や進化や戦果、いろんな変化がある時代には、かならず未知の病気が流行る。
歴史的な解釈ならそうなるけど…。
あっという間に公立の小学生に1人一台の端末が与えられ、授業がすすむ。
ー昭和の三種の神器か?
テレビ、冷蔵庫、洗濯。
なら、
なんだろな?
だって陽菜たちは生まれた時からスマホ世界だ。
効率よく無駄なものは、
ーデリート。
いや、真菜はデリートじゃなくアップデートしそうだけど。
「でもうちも去年体験したけど、村井くんと似たような感想でしたよ?真央が」
ってイケメン先輩が苦笑いしてる。ちなみにイケメン先輩は海外育ちなので、日本の卒業式はこんなだと感じたらしい。
同じく海外派だろうイケカマ係長は、妖艶な唇を、への字にした。
「うちのダーリンは違う話をしていたわよ?」
「俺に言っても仕方ないでしょ?短いなら短い方がいいし」
って俺はイケカマ係長をなだめながら、それでも明るい笑顔だし、先生たちは遠巻きに嬉しそうに眺めてたし?
そこは、あんまり変わらない風景じゃないかな?
…って、なんとなく思ったし。