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SS クリスマス


真夜中だから、寝静まったマンションの、俺や明日菜を受け入れてくれた優しい人たちを起こさないように、なんとなく足音に気をつけてしまいながら、そっと玄関の鍵をあける。


鉄製の玄関はガチャってなる。防犯的にはなる方がいいんだろうなあ。


けど、一度気になりだしたら、やっかいな音にもなるのかなあ。


俺に霊感ないのは、


ーラッキー?


うちの犬はラッシーだ。


よく明日菜って、小型犬じゃないラッシーを怖がらなかったよな?


熱くなり始めた土混じりの空気が懐かしいけど。いまは、12月だ。


コロナ時代と変わらず、玄関で消毒してから、ムダに優秀なウシ様センサーを避けて靴をぬぐ。


人の気配はとうぜんありあ、うちの家はクレージーマンションならぬ、かの世界的大スターの緑のちょび髭弟のマンションじゃないし、


なんども言うけど、俺には霊感とかないし?


チラッとみたら、明日菜がソファでうたた寝していて、エアコンはちょうどいい室温だから、問題ないだろうし?


インフルエンザも流行り出し、俺はうがい手洗い前に風呂に入る。


さっき入ったのか?明日菜のにおいが一気に鼻腔から、脳まで優しくふわふわつつんでくる。


ー下半身にはいかないくらいには、疲れてるらしい。


枯れてないよな?


って若干変な方向に心配になるけど。


頭からわしゃわしゃと髪を洗って、そのまま身体も洗うと、スッキリした。


明日菜が使ってるのは複雑すぎて俺にはよくわからないから、相変わらず俺は近所でお手軽な入浴セットだけど。


夜中だからちょっと伸びかけたザラザラした髭もカミソリで剃っておく。


明日菜に、っていうより、お隣さん対策で始まった習慣だけど。


萌ちゃんはさすがにないけど、空ちゃんや凛ちゃんはザラザラだと遊んでる時、ふいに手が触れてくるから、痛いと言われてから気をつけてる。


…明日菜が拗ねたけど。仕方なくね?


画面越しに触れなくちゃわからない程度のヒゲの話を、おままごとみたいな遠距離恋愛の彼女にする話じゃないだろ?


って、なるけど。


ーもっと意味不明なあいうえお作文より、楽しいよ⁈


って、明日菜が睨んできたけどさあ?セリフ違うけど、たまにあざとい仕草が妙にクセになるからさ?


いや、もう明日菜は無意識だろうけど。


ー妬いたの実は俺だぞ?


相変わらず小さな自分にため息だけど。


ー俺ってほんとうに明日菜に対しては求めてばかりだ。


すねてばかりのクリスマスを挽回って、どうするんだ?


だよなあ。


浴室内はせっかく明日菜のにおいがしていたのに、俺の安いファミリーパックで、よくわからないにおいになったけど。


お湯は温かいし、それでも優しいにおいが微かにするし、疲れてるから,つい眠くなる。


うとうとしていたら、


「春馬くん?お帰りなさい。お風呂いつもより時間長いけど大丈夫?」


って控えめな明日菜の声と小さなノック音にはっと目がさめた。


「あー、いや、うん、えっと、OK?」


「…なんでひとりであいうえお作文してるの⁈」


「し?明日菜、夜中だ」


「あっ」


すりガラス越しに明日菜が口を両手でおおう気配がする。


「明日菜」


「い?」


「いい匂いがする」


「う?」


「ウキ釣りのコマセにも匂いがさ?」


「え?」


「餌の食いつきもいいけど」


「お?」


「オキアミは王道だよなあ」


「私はあの魚じゃないからね⁈はやく上がらないとのぼせるよ?」


ご飯温めるから?


と言って、明日菜がすりガラスからはなれてく。


…しくじった。


寝てるフリして起こしてもらえたら、俺の裸に恥じらう明日菜がみれたのに?


いつもなら働く悪知恵も働かないとは。


久しぶりに、やっぱりへこむな?


もう一度、冷水で顔を洗うと浴室をでた。


いつのまにかお気に入りの夜着一式がそろってた。


あと冷えたスポーツ飲料。


心配してくれたんだな?


って、俺は今日、やっと口元がゆるんだ。


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