SS
深夜遅くに、マンションの俺の部屋の灯はともっていた。
ただメッセージは既読にはならなかったから、きっと眠ってるだろうなあ。
チャイム鳴らすのも、明日菜が起きたら気まずい。だって、こんな日に、俺のミスでいろんな人に迷惑をかけた。
ーいまさら、明日菜にかっこ悪いところをみせたくない、とか、どの口が言えるんだって話だ。
最低だった大学時代の俺を思い出す。
10年遠距離恋愛していて、そのうち5年が最低な彼氏だったよな。
こんなクソみたいな俺に、バカみたいにいまさら、プライドとか言っても、明日菜は気にしないだろうけど。
だけど、
ー情け無い。
ってぼやく。
クリスマスや恋人たちのイベントの時には、だいたい明日菜がモデルやってる雑誌の特集やドラマや映画の番宣で、だいたいイケメン俳優やアイドルとカップル役で肩を寄り添い画面に映る。
それを眺めながら、明日菜の仕事だって割り切るには、ガキすぎて、ガキだったから、たくさん傷つけて。
ーそれでも自分から終わりの言葉だけは吐けなかった。
…吐けなかった。
終わらせるなら明日菜から、って、それすら卑怯な俺はどこかで決め込んで。
ただ、なんで隣にいるやつが俺じゃないんだろう?
とか、思ったりして。
その度に柴原に先の尖ったヒールの踵で踏まれたり,脛を蹴られたり、文字通り痛むに涙目になりながら、恐る恐るスマホをみるんだ。
そんな最低の俺を明日菜が待っててくれて、結果的に強引に釣り上げたけど。
やっと迎えた穏やかな恋人イベント…いや、もう夫婦だけどさ。
「まじ、さいてーだな」
ってつぶやきながら、そっと玄関を開けた。