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SS


少しずつ、お仕事をはじめながら、でもできるだけ、私も生活力を身につけたいから、春馬くんが帰宅するころには、夜ご飯の用意をしてあげたいけど。


13歳からずっと寮生活で、ほとんどお料理経験がない私だ。


春馬くんは、へんなお菓子ばかり作るけど、真面目に作ったら、きちんと美味しい。


真央もやっぱり美味しいし。私よりお隣の萌ちゃんの方がレパートリーは多い。


千夏さんには、勝つのかな?


って、少しだけおかしくなる。たまに東京から福岡支社に顔出しするついでに、私にあいにきてくれる。


だから、私が料理をしてるとしみじみしてる。


私も年取るはずよねー。


って…。


お母さんみたい、は、変わらないけど。


きちんとお肉やお魚を食べる私に少しほっとした顔をしてる。


あの頃の記憶は私にはほとんどないけど…。


春馬くんがお肉好きなのは知ってるし、やっと一緒にいれるなら、同じものを食べたいし?


って思いながら、チラッと時計をみる。けっこう遅い時間まで、最近は働いてる。


真央が言うにはちょっとかりるね?ってイケメン先輩が言ってたらしい。


優菜も忙しいみたいだし、春馬くんだけが忙しいわけじゃないみたいだけど。


その日も終電ギリギリに帰宅した春馬くんは、ただいま、って言って、そのままお風呂に行った。


もう遅いから途中でなにか間食したのかなあ?


さすがに怒りはしない。こんな時間まで空腹で働く方が心配になるけど。


ー?


いつもなら、きちんとそういう時は連絡くれるのに。


いちおうご飯をあたためた方がいいのかなあ?


お料理がまだまだ未熟な私は実は味見でお腹いっぱいになっちゃう時もある。


少し考えていたら、お風呂に入った春馬くんがいつものスェットきて、居間にきた。


と、思ったら、


「あー」


っていいながら、いきなり後ろから抱きしめられる。


不意打ちで、ついふらついたら、春馬くんはそのまま私をズルズルとソファーまで連れていき、今日に私を抱えたまま、ソファーに座った。


相変わらず、私の春馬くんは、ドライヤーを使わないから、ちょっとだけ、印象が変わるけど。


ただ後ろから抱きしめられて、私は戸惑ってた。


そもそもさっきの、


(あー、ってなに?)


明日菜?かなあ?


「せっかく、明日菜がいるのに、残業ばっかだ」


めずらしく拗ねてる。


私はわりといるんだけど?


ひたすら春馬くんの声はすねてる。


あんまりお仕事の不満を言わないから、めずらしいなあ?


私は振り返りたいけど、春馬くんは、


…眠ってる。


最近は夜中もオンラインでやりとりしてるみたいだし。


春馬くんのお仕事先は時差があるし?


この体制だとつらいよね?


「春馬くん、眠いならベッドにいこう?」


っていったら、


「んー?いやだ」


「寝ぼけてないで、風邪ひいちゃうよ?」


「明日菜も眠いの?」


って、寝ぼけてるわりには、しっかり返事してるから、眠くないのかなあ?


「私はねむくないよ?」


「じゃあ、つかれてる?」


「ううん、お仕事少しお休みだし」


つかれてるのは、春馬くんだよね?


「ほら、風邪ひいちゃうよ?ベッドにいこう?」


ちょっと腕の力がゆるんだから、眠ったのかなあ?


って振り向きざまに、ぐっと後頭部に手が伸びて引き寄せられて、唇に温かい春馬くんの唇が触れてきた。


びっくりして、目をひらくと。


少し茶色がかった瞳が、イタズラが成功した時みたいに笑ってる。


不意打ちだから、私の顔があかくなる。


「そっか、そっか、新鮮だよなあ?」


って笑うけど、なんだか悪い予感がする。


さっきの、


「あー?って?」


「うん、たっぷり教えてあげるよ?」


って、


「きゃっ?」


いきなりお姫様抱っこされて、びっくりする。スポーツが好きな春馬くんは、最近なぜか筋トレしてるからか、私をひょいと持ち上げても安定感があるけど。


「な、なに?」


「明日休みなんだ」


って、にっこり無邪気に笑うけど。


「明日菜からベッドに誘われるなんて、めちゃくちゃ嬉しい」


「ちがっ⁈」


っていうか、


「寝ぼけてたんじゃないの⁈」


「いや、あー、明日菜がいる?幸せだなあって?」


「いまさら?」


まあ、私もさっき似たようなことを思ったけど。


まさか、その、あー?


だったの?


私の顔が若干のひきつる。


べつに嫌なわけじゃないけど。ただ、春馬くんが考えたイタズラには思えないし?


「誰からの情報?」


まさか、真央とか優菜とかじゃないよね?


「イケカマ係長。どうせ言われないだろうからって…。なんだよ?どうせって」


って不貞腐れてる。ああ、たしかにいいそうかなあ?


でも、


「ほかの人の名前ださないで」


あんな美人と比べられたくない。


むっとしたら、すぐにまた甘いキスを春馬くんがくれる。


そして、


「けど嬉しいだろ?だって、いつも誘うの俺からだし?」


「あれは、お誘いじゃないでしょ⁈」


「うん、けど、俺と一緒のベッドに明日菜がいるんだろう?」


って、よっぽどお仕事が忙しかったのか、春馬くんは子犬みたいにはしゃいでる。


ね?


春馬くん。


私はつい、


ーかわいい。


って思っちゃうからさ?


腑に落ちないけど。あいうえお作文で負けるのは、嫌いなんだ。


って思いながら、


わざと拗ねた表情できいてみる、


「アンサーは?」


「あー。あすながいる、あー、会いたかった。愛してる?」


「…なんで最後が疑問系?」


しかも首を傾げてる。


少し低い声に無意識になったら、春馬くんは、焦ったのか、足早に寝室までいくと、優しくおろしてくれた。


そして、


「イタズラして、ごめん。けど、明日菜が可愛すぎたから,悪いんだ」


いやなら、やめるって。


ーね?


春馬くん。


嫌って言わせないようにキスしてくるのは、


ちょっとだけ、ずるいなあ。


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