sS
「あのね、お姉ちゃん」
めずらしく妹の真菜が、真剣な表情できいてくるから、
ー私は、耳をふさぐかまよう。
たまにとんでもなく、不気味な話をするからだ。うちにいるウシ様は、たしかに我が家の守り神?
萌お姉ちゃんにとっては、キューピッド?
だけど。
私は、ウシ様より、ウマ様がすき。
だから少しだけ身構えながら、真菜をみる。
「どうしたの?真菜?」
「あのね、お姉ちゃん?金魚をね、大きくて、きれいな美人さんにするには、外の飼育で、冬や空腹がいるんだって」
「そりゃあ、アビるには、そうなるんじゃないか?」
って、となりであの子が、本から目をあげて、真菜をみてる。
ママと真央おばさんと、あの子の妹でお買い物に行ってる。
あの子は外出が嫌いだから残ってたけど、真菜はこの質問のために、考えていたらしい。
…ママたちがいる時にしてくれたら、2人きりだったのに。
でも、逆に緊張で挙動不審になりそうだし。
ー結果的に、真菜がいてよかったのかなあ。
「どういうこと?」
って真菜がきいた。あの子は詳しいのかなあ?
って、私も不思議に思うけど。
その前に、
「きれい?」
「うん、色鮮やかで、目をひく金魚にするには?金魚すくいにいないタイプ」
って真菜がいう。
真菜は、金魚すくいでも、持ち帰らない、すくうだけをいつもやる。
金魚が傷つき弱るだけだろうだけど。
だから、持ち帰り金魚のサービスの数が増えたような?
ってパパが首を傾げていたけど。
たまに、金魚なら真菜でも?って私も思うけど、パパが言うには、真菜は間違いなく手掴みしそうだし。
ネットって、意味を知るまでは、少しまて?かなあ?
ってパパは複雑そうだ。自分のミスで失わないとわからないこともある。
だけど、その辛さもわかるから、体験させたくないし、結局は、手助けしちゃうだろうし。
そう悩む。
って、ママが教えてくれた。ママは、そこまで考えた事がないって、苦笑いしていて。
ー真央も春馬くんも、失敗がきらいだから。
いい方に予想外なら嬉しいんだけどね?
って真央おばさんも、言ってたなあ。
りんご飴の微妙な甘酸っぱさとジャリジャリに悩む夏祭り。
しゃり、じゃり。
って真菜は言うけど、私も同じだなあ。
「知ってるの?さすがだね?お兄ちゃん」
「いや、なんとなくだよ?ほら、空腹時にやっぱり子孫残す本来の役目思い出すだろうし?それなら、ふつうに目立たなきゃダメだろ?」
調べてないからわからないけど。
寒さの後に春がきたなら?
子育てシーズンなら?
って言う。大災害とかあると、ちょっとだけ、出生率があがるとかさ?
危機感的なものかなあ?
淡々と無表情にも見えるけど、あくまで俺の考えだから、調べなよ?
と本をおいて、真菜に自分のスマホを取り出して、一緒にみだす。
少し前まで私にもしてくれてたのに、最近は会話もなんとなくなくなって…。
いいなあ?真菜。
「美人さんかあ?」
ついつぶやいたら、あの子が振り返る。
「興味あるなら、スマホ貸すけど?」
「3人で一緒にみよ!ほらお姉ちゃんも!」
「えっ?」
って戸惑ってる私たちをよそに、にっこり無邪気に真菜は金魚を調べ出した。
きっとあの子は、真菜と私に自分のスマホを渡して、また読書するつもりだったよね?
私も自分のスマホあるけど。
真菜の無邪気さに少しだけ感謝かなあ。