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「えっ?アクアリウム?というか、水草から?」
てっきり、金魚でも飼うのかなあ?
って思ってたら、真菜は大好きなお兄ちゃんから、もらった図鑑を真剣にみてる。
ちなみに真菜もあの子も図鑑好きだ。あの子はもう少し難しそうなものを読んでるけど。
真菜はスイッチがはいると夢中になるけど。
まさか、水草からはいるとは…。
私とママはチラッと思わずウシ様をみる。
萌お姉ちゃんと彼氏さんは、ママがおきたらバイバイしたからいないけど。
「真菜、そんな難しいことできるの?学校のプランター野菜すら枯らしたよね?」
って、ママが心配するけど、
「うん!だから、水中なら、できるって!お兄ちゃんが」
真菜はにこにこしてる。ママが心配するくらい学校からもらったオクラの苗を枯らして落ち込んで、もう植物なんか育てない!って言ってたのに。
…たしかに、違うアプローチかあ。
あの時の真菜の落ち込む姿に、少し考える素振りを萌お姉ちゃんの大切な人はみせてたけど、慰める萌お姉ちゃんの傍らでなにも言わなかった。
少し無口なところが、あの子に似てるかなぁ。
パパもママに言わせると、あんまり話す方じゃないらしい。
コミュ力お化けみたいな福岡支社だからなんとかなるって、真央おばさんも言ってたかな。
たしかに、パパの会社の人は楽しい。ママの会社の人たちも優しいけど。
たぶん、なんだかほっとする雰囲気がある。私が神城明日菜の娘から解放される場所かなあ。
たぶんパパの会社の人たちは、村上春馬の娘って見てくれるからかなあ。
マンションの人たちもだけど。
たまに、耳や目にはいる情報にウンザリしながら、それでもママはママだし。
パパはパパだ。
真菜にはきいたことない。たぶん真菜は考えない気もする。
…私をそのまま村上陽菜って見てくれるから、私にはあの子なのかなあ。
それじゃあ、私を見てくれる人がいたら、萌お姉ちゃんみたいに忘れて違う恋ができるのかなあ?
違うアプローチをしてみたら?
そうしたら、私は?
…どうしてあの子がすきなんだろ?
って真菜をみながら少し思った。