SS 春馬 母のいま
ただ見てくれたらいい。
夫が連れてきた子は、ただのメモ帳に殴り書きされた生年月日、と、5種ワクチンの日付けだけ。
夫はそれが正しいのか、わからないよなあ。
証明する方法なんかない。
そう苦笑していた。
ただ苦笑していた。
大切なことは、そこじゃない。うちの子だ、そうだよなあ?
って笑う。
時々、やっぱり夫はあの義父の子で、やっぱり春馬の父親だと思うことがある。
ラッシーとは違う小さな身体と、ふわふわの毛並みをなでながら、
ーそう、撫でれるようになった。
あまえるよう頭を撫でて?とけどふとした物音にすぐに小さなキャリーケースに逃げ込んでしまう。
トイレは教えてない。メモの年齢より、ふけてるのは、出産回数か?
次男の春馬は虫取りがすきで、よくカブトムシをとりに行ったけど、クワガタより難しいから捕まえた場所にがしていた。
飼育ケースから逃げてしんでる姿に私が悲鳴あげたから、それから虫取りには行かない子になったような気もするけど。
カブトムシを長生きさせる条件に、交尾をさせなと、あとから義父からきいたけど。
オスは次から次に寄ってくるけど、メスには迷惑らしい。
不思議なカブトムシってなりながら、私は、柔らかなココアの毛をなでる。
ココアは孫の真菜の命名だけど、しろいのに?
っておもいながら、
ーばあば、すきだよね?
って屈託なく笑う。
から、つくづく。
ー明日菜ちゃん似でよかったわ。
ココアはのんびり慣れてくれてる。ただのんびりだけが夫とわたしの希望だ。