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SS 6

あらら。


私は内心で明日菜の態度に苦笑する。


うちの事務所にスカウトという形で、ある意味で恵まれた環境が用意された明日菜は、明日菜の温和な性格が幸いして、あまり悪意にはさらされてないけれど、恵まれすぎたデビューに業界内では、嘲笑もあった。


実力がないくせに、事務所の力だけで、恵まれた仕事についてる。


ただ勘違い、と揶揄する声もなかったわけじゃない。


ただそのことを、私たち事務所も、なによりも明日菜自身がよくわかっていた。


あの子は、あの場所から逃げ出したかっただけで、村上くんや真央ちゃんも、


ー逃げて?助けて?


そう私に問いかけるような、すがるような瞳で、


ただ、環境をかえる。環境がかわる。


どちらにしろ、ストレスにはなるけど、明日菜自身が最終的に判断して、東京にきた。


芸能界というある意味で、知らない世界にきたけど、好き勝手にスマホで写真とられ、あることないこと噂されたのは、狭いあの世界より、マシになったらしい。


この子を世界的に大スターにするなら、SNSの活動を。ネット利用を。


そう考えなくても、勝手に明日菜自身を置き去りに、明日菜ができあがっていく。


華やかな世界に、この子もいずれは、染まっていく。


そう思ってたのに、明日菜の人気に火がつく前に、明日菜が辞めたいと言ってもいいとまで、思ってたから、仕事は吟味しながらも、大切に育てていた。


がっつくわけでもなく、淡々と、けど仕事に対して生真面目で、ひたむきで、スタッフにも丁寧な明日菜は、スタッフウケもよかったけど、一部には嫉妬される子でもある。


とくに優菜の代わりにヒロインをして、もともとファッションモデルを中心に活動していたのもあり、同性のファンが明日菜にはたくさんいるし、その逆もある。


当たり前に、そんな明日菜は業界内でも目立つ。


明日菜がヒロイン役をした時、相手役はまわりは、当然に女性ファンがたくさんいて、好青年だってたくさんいる。


ー私が育てた彼は裏では遊んでたけど。


いまでもスイッチが切り替わると、明日菜は神城明日菜になる。


まあ、たまにベテラン俳優陣がイタズラ半分でアドリブで演技を試すけど、明日菜が対応していく。


雑誌のインタビューなんかでは、かなり素がでてるけど。


明日菜の恋愛は特殊だから、あまり記事には、なってない。


誰だって、13歳の遠距離恋愛が続くなんて思ってないからだ。


同じ寮にいるプロダクションの子たちから、村上くんの存在が、出なかったのは、あまりに純粋で、あまりに、


ー変だけど、明日菜が幸せそうにしてる。


し、


ーふつうに私たちには、わからない感覚だ。


外見だけなら、いや社会的にみても?外資系のイケメンエリートだけど。


あまり輝きは、ないのよね?


いわゆる派手さはない。もちろん、存在感はあるけど。


明日菜を、いまかこんでる相手役とは、どこか雰囲気が違うのよねー。


そもそも明日菜があきれた顔をみせるのは、村上くんにだけだし。


「あれが、神城明日菜の選んだ人?」


「あまり、違和感ないけど」


「まあイケメンだよね?」


「並んでて絵にはならないけど、違和感はないのかも」


思わずふきだしそうになる。そう、


ー絵にはならない。


それは見せ方の違いだろう。映え?なんて言葉ができるほどだし。


不思議すぎる時代に、けどあんまり変わらない人もいるのかも、しれない。


「10年かあ」


ながいのか、ながくないのか、ただ、


ー確実に私は老いたのかしら?それとも、余裕ができたのかしら?


もう私には子供が望めないだろう年齢になり、結婚とかは、もう考えない気もするけど。


ただ、


ー10年。


かあ、


不思議と奇妙な、新婚夫婦とその友人をみながら、


明日菜がやわらかな瞳をしてることに、やっぱり、


ー10年かあ、


って私はなんだかしみじみした。


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