SS 5
ーうちの奥さん、めちゃくちゃ可愛くね⁈
ここにいるどんな芸能人にも負けないぞ?
って、あっ、明日菜も、
ー芸能人、だっけ。
だからあんなに嫉妬に狂ってた俺だけど。
そもそも明日菜は職業だしなあ。
だって、俺と柴原がスカウトしくんだし。まさか明日菜とこうなるなんて思わなかったし。
いま思うと、ガキすぎたよなあ。中2の俺。
いや、だから中2って年齢が微妙なんかな?
もしもあの修学旅行で、キレた明日菜が俺に、あんな奇妙な告白?脅迫?責任?よくわからないけど、
彼氏がいてもいいのなら?って加納さんに言わなかったら、いま、どうなってたんだろ?
いま、柴原とも、どうなってたんだろ?柴原は俺の国宝だけど、国宝はみんなの国宝だからさ?
あくまで明日菜がつないでくれてる、縁だし?
明日菜がいなくても、いまは、もう完全にイケメン先輩は俺の先輩で、もう尊敬できる偉大なシルバーバックだからさ?
10年ひとくくり?
なんとか世代って、10年単位なんだっけかなあ?
よくわかんねーけど。わかってることは、
「俺の奥さん、マジかわいい」
「真顔で言わないで?」
って、明日菜が耳をあかくする。
「もう、なんなの?最近、めちゃくちゃ急に甘いセリフいうんだよ?」
「嬉しいくせに?っていうか、明日菜がいない時の村上って、いつも明日菜、明日菜ってうるさいよ?」
「私には柴原ばかりだけど?」
「それはいつもだし?」
「真央も否定して⁈」
って明日菜が柴原に言うから、つい、
「「ほんとうに短気」」
って、柴原と俺の声がかぶると、明日菜がまた何かをいいかけて、すぐに口を閉じた。
ー?
「まあ、痴話喧嘩はその辺にして?」
って加納さんが、俺と柴原の肩を軽く両手でたたきながら、
「すべての人が、明日菜に好意的なわけでもないんだから、へんな噂があがらないようにね?」
って小さな声で言われた。
「とくに、ほら?村上くんは、指輪しないタイプだから」
たしかに?明日菜の左手の薬指には、俺が贈ったリングはあるけど、俺は苦手でしてない。
「いや、だけど、ほら?明日菜がくれた腕時計はしてますよ?釣り行く時以外は」
って俺は加納さんに、18歳の誕生日にくれた明日菜からの空色の腕時計をみせる。
再販モデルじゃない、いまではプレミアモデルだ。
ちなみに明日菜はその時計も今日もしてくれている。
「もともと村上って、指輪苦手だもんね?」
って、柴原がいう。ちなみに柴原の左手の薬指にはイケメン先輩とお揃いが、
ー今日はある。なぜに⁈
俺の疑問が顔にでたのか、柴原が苦笑した。
「先輩がね?めずらしくイケメンばかりだろうからってしてくれって、お願いされたの。お酒飲まないから、大丈夫なのに。というか、私が浮気すると思ってるのかなあ?」
「心配にはなるんじゃね?柴原美人だし?安心しろよ?俺が必ずガードするから?」
「あんたがガードするのは、明日菜でしょ?」
「俺は明日菜の浮気を疑ったことないぞ?」
「疑ってはないけど、嫉妬はするよね?」
「だって、そりゃ、明日菜だし?俺の宝物だぞ?だけど、さあ」
…スクリーンにいる明日菜が輝いてたし、変な話で、俺は明日菜にしか、こんな感情ならないし。
ただ悔しくて、なんだか、負けてる気がして。だってこんなにも、まわりがキラキラした世界で、目の前のイケメンたちって、ふつうにイケメンだし。
みためがすべてじゃないって言うけど、見た目は大事だし?
けど、俺は柴原をじっと見つめた。柴原は相変わらず見透かしたように、半笑いで俺をみつめかえす。
「イケメン先輩って、すごいよなあ?」
しっかり、フラフラしてた柴原を落ち着かせた。
「みためはゴリラだけどね?ありがと?私の自慢の旦那様を褒めてくれて?」
って、言ったあと、明日菜に、
「私も村上褒める?」
「真央はダメ。春馬くんが調子乗るから」
って、また明日菜が俺の腕にぎゅっと抱きついてくる。
けど、柴原に、って言うより。
ー誰に威嚇してんだ?
よくわからない、のが、俺だ。