SS
春馬くんと真央にも招待状があり、私が結婚する前に参加した映画が賞をとっていた。
私は授賞式には、あのぼんやりした世界にいたから、出席できなかった。
なんとなく引退の噂まで広がっていた私だけど、あの空色の腕時計のCMや、寝耳に水の電撃入籍。
しかも、ただの幼馴染の一般人。比較的、休んでた間の詮索はされずにすんでいた。
いろんな騒動がおちついたなか、映画制作チームがささやかなお祝いをしてくれるといわれた。
ー?
どうして、いまごろ?
って不思議に思ってたら、
「できれば、神城を射止めたヤツにあいたい、が、俺たちの本音だ」
って、事務所の先輩が苦笑いする。すっかり一家のパパらしい顔を時々みせながら、なんだかんだ楽しそうにしてる。
「でも、基本的に彼は福岡なんで」
「大丈夫。興行成績のおかげで,スポンサーもちの旅行だ。ちなみにスポンサーも目当ては、神城の旦那さんだ。俺たちのヒロインを10年片思いさせたヤツに興味あるに決まってるだろ?」
「決まって…?って、先輩もう子持ちじゃ?それに、いちおう両想いですよ?」
…たぶん。
「神城は初恋や昔好きだった相手が、どんなやつと結婚したとか気にならないのか?」
私は先輩の言葉に首を傾げるしかない。
「だって先輩、春馬くんが私の初恋です。お互い初恋だし、私はいつもヤキモチ焼くくらい、彼には仲良い女友達がいますし?」
「そのおんな友達をみたくならないのか?」
「私の大親友です」
「どうなってるんだ?おまえら…」
そんな会話を忘れた頃に、招待された。福岡の少しだけお高い居酒屋を貸切にして,スタッフさんや忙しいなか、俳優さんたちも数人顔をみせてくれて、
ーとたんに、春馬くんがありありと不機嫌になった。
「なあ、明日菜?なんで、この映画に関係ない、歴代のおまえの相手役がたくさんいるんだよ?」
春馬くんらしくない、低い声にびっくりして14センチ上にある顔を見上げたら,やっぱりめずらしく不機嫌で、後ろを歩いてた真央と加納さんが爆笑してる。
「さすがは、明日菜。村上にそんな反応させれとは」
「独身には、あてられちゃうわねー」
って言葉に、春馬くんが、少し茶色がかった瞳をパチクリした。
「あれ?俺?けど、だって?いや?だけど…」
春馬くんは、驚いた顔で私と加納さんや真央、周りをみわたしながら、
やっぱり、口をへの字にしたかと思うと、
「やっぱり、嫌だ」
って、急に私ね両頬を優しく両手で触れたかと思うと、急に、少し拗ねたかおで、
「明日菜は、もう村上明日菜だからな?」
ってつぶやくように、泣きそうな瞳でいうから、
ね?
春馬くん。
私はそのまま、背伸びをして春馬くんに口づけた。
まわりから冷やかしやシャッター音がなぜかするけど、
「明日菜?」
戸惑ってる春馬くんの腕をとり、私は笑顔で会場に足をふみいれた。
ね?
自慢の春馬くん。
何人かの女性陣の目がハートなったんだよ?
「さすが、明日菜。みごとな牽制球」
「ほんと短気だよねー」
って声は、
もちろんスルーした。
よ?