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第14話 彼女と彼氏と彼女とスカウトと。



ーしってるか?俺は柴原にであう前から、明日菜を見つけていたんだ。


ー明日菜を見つけたから、柴原にであったんだ。


春馬くんの声が、ぼんやりとした頭に、くっきりと響いた。


ーえっ?


いま、春馬くん、なんて言ったの?


びっくりして、起き上がりたいのに、私の身体は、自分の心とは、正反対に動かなかった。


あの春馬くんからのはじめてのプレゼント。


凍らすタイプの殺虫剤をかけられた虫みたいに、私の身体は動かなかったけど、


ードクン。


心臓の音が、大きく耳に、きこえてくる。


それと、おなじように、ううん、私の鼓動なんか無視するように、春馬くんの声だけが、耳に響いてくる。


「明日菜は疑うけど、俺と柴原は本当にありえねーからな」


はっきりと、春馬くんの声がきこえる。


ーうそ、だ。


私は心の中でつぶやく。


だって、いつだって、春馬くんの中でおおきな存在は、真央でー。


ー私は、真央には、かなわないって。


真央になら、春馬くんをとられても…。


私じゃなくても、春馬くんが幸せになるなら・・・。


春馬くんが、ずっと笑ってくれるなら・・・。


ー私じゃなくても、真央、なら、


…私は春馬くんから離れられるのに。


私の心はずっと殺虫剤に凍らせたまま、そのまま仮死状態で、一生を終えてもいいって、


ね?


春馬くん。


私は、本当は、ずっと、そう思っていたんだよ?


ーいつか春馬くんのいちばんが、私じゃなくて、真央になる日が来るんじゃないかって。


なのに。


いま、春馬くんはー。


混乱する私の心や頭を無視して、春馬くんの声がきこえてくる。


「…俺にだって、人並みに青春をおくれるチャンスは、あったんだよなあ。知ってるか?俺にだって、思春期は存在するんだぞ?とくに大学時代なんて、なんの枷もなく、教師の目もなくて、遊び放題だぞ?俺の大学は頭よかったし」


ー知ってるよ。


そんなこと、とっくに、わかってるよ?


春馬くんにとって、私という存在が呪いのように、春馬くんを縛りつけてることくらい。


ーウシガエルに、ごまかして、


ーでも、ごまかせなくて、


ーだから、思いっきり、嫌な顔をしたことを。


私はちゃんとわかってるよ?


春馬くんが、いつもとぼけた顔で笑ってくれるのに、


ーあの時は、はっきりと嫌な顔をしたよね?


ああ。


そっか。


春馬くんは嫌な顔をみせてくれたんだ。


ね?


春馬くん。


私は、あの時、なにを間違えたんだろ?


春馬くんは、いつだって、


ー春馬くんなのに。


頭のいい大学に通っているってだけで、わりとモテるんだ。


不貞腐れたような声に、つい口元がゆるみそうになる。


ね?


春馬くん。


春馬くんは、頭はいいけど、


ーあいつ基本的には、バカと紙一重だから。


ね?


春馬くん。


真央がもう口癖みたいに、そう言うことを知ってる?


頭のいい大学ってだけで、本当の意味でモテるなんて、誰が思うの?


ね?


春馬くん。


それは、私の外見だけをみて告白してくる人と、なにが違うの?


ーまあ、でも村上は、村上だから、明日菜は大丈夫だよ。


いつも真央は、最後に私に笑ってたけど、


ーそれは、真央がちかくにいるから。


私じゃなく、真央がいるから。


ね?


春馬くん。


そうじゃないならー。


「俺の彼女は神城明日菜だって、言い張っても、誰も信じてくれないし、先輩からとか女の子を紹介されたし、告白だって、されたぞ?俺だって、モテるんだ」


子供みたいに、ふてくされたように、春馬くんの声がする。


ーやさしく私をつつみここむ、いつもの春馬くんの声がする。


「大人気女優の神城明日菜と遠距離恋愛10年目になります。修学旅行で、学校イチ可愛い子がスカウトされたら、告白されて、でもそのときには、もう遠距離どころか、3か月限定で別れるはずの彼氏でした」


春馬くんが確認するように言った。


そうだ。


ーそうだよ。


春馬くん。


私が、修学旅行で、スカウトされたから。


あの日に、スカウトされたから。


ースカウトされなかったら、はじまらない恋だったよね?


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