SS どじょうと分光
「あっ、ママ、このどじょう分光してるよ?」
と、真菜がディスカウントストアーの片隅にあるペットジョブで、アクアリウムコーナーで、言った。
水槽の中には、白っぽい魚体に紅い目をしたアルピノどじょうがいた。
そのどじょうがライトを受けて、反射し、虹色になってるけど…。
「分光してるのは、ガラスのせいだよ?どじょうじゃないよ?」
って陽菜が教えてる。
春馬くんのせいで、うちの子たちは、虹は虹だと知ってるけど、反射の虹色は、分光っていう。
私にはよくわからないけど、春馬くんがよく作った手作りの分光器もどきのおかげだろう。
たまーに、春馬くんはいないけど、たしかに、春馬くんの子だなあ、って思うことが増えてきた。
とくに真菜には、こういう時に感じる。真菜もたまに空気読めずに苦労する、らしい。
ーおもにフォローする側の陽菜が大変らしい。
春馬くんが海外赴任で、いないいま、真菜の通訳は陽菜だ。
私は母親だけど、陽菜の方がよく真菜を理解してる。
ウンザリしながら、相手しながら、やっぱりなんだかんだで、ふたりで遊んでる。
私は3人兄妹の末っ子だから、ふたりのやりとりみながら、少しお兄ちゃんやお姉ちゃんを陽菜を重ねちゃうけど、
ー真菜とは違うよね?
陽菜と真菜は、仲がいいけど、たまに陽菜が無理してないか心配なるけど。
「だいじょぶだよ?だって、ママはパパといて、疲れるけど、いないと暇だよね?」
「暇というか、さびしいけど?」
「でた、ママのラブハラ」
「なに?ラブハラ?」
「ラブラブハラスメント?」
「そんなのあるの?」
「たぶん、違う言葉だけど、最近、真央おばさんに言ってた」
「ああ、なるほど」
あの子ならいいそうだよね?
真央はからかいそうだけど、イケメン先輩は家族の溺愛ぶりがすごいし。
というか真央で手慣れてそうだし?
ー空気がわからないなら、色つけよ?
そう笑ってたなあ。
笑えるくらい強くなれたのは、いつからなんだろ。
記憶にある春馬くんは、もうからかってばかりで、どこまでふざけてるのか、まったくわからなかった。
…。
空気をよむ。
色をつけたら、よめるの?
…むずかしいね?