SS 吉野ヶ里
「タイムスリップできる場所だよ?」
ってママが笑う。
我が家の恒例だ。
花見シーズンに吉野ヶ里遺跡に行く。
国定公園で、年間パスポートあれば、福岡の海の中道公園でも使える。
し、パパがいうには、サラリーマン家計に優しいらしい。
「でもパパは最終に勘違いしていたんだよね。お花見かねたらしいけど、弥生時代に桜はまだなくて、吉野ヶ里にはないんだ」
って伊達メガネかけたママがいう。できるだけ目立たないようにしてるつもりらしいけど、
「まったく存在感消せないよね、明日菜お姉ちゃん」
って萌ちゃんがあきれてる。
となりの純子おばさんが、
「でも懐かしいわね。まだ凛もよちよちで。けど、きっと弥生時代から、親が歩き出す子供に感動することはきっと変わらないのよね?」
「あっ、わかります。いまなら、私も」
って、ママが優しく笑う。
ママがまた歩き出した場所。
ママは笑う。
「きっと変わらないんだよ?弥生時代から、親が子供を思う気持ちは」
だってさ?
ママもパパももちろんみんなが、遡ればご先祖さまが弥生時代だ。
って笑う。
笑うママの左手には空色の腕時計。
なぜか吉野ヶ里に行く時はみんなその時計。
ママはタイムだから、って笑うけど。
ー?
なんだ。