SS 真菜のお土産
「ママ!作って!」
パダバタとただいまも言わずに、元気よく次女の真菜が玄関からはいってくる。
そのあとから息を切らした陽菜がウンザリした顔で言った。
「ただいま、ママ。もうずーっと学校からマラソンだよ?真菜!」
って不機嫌に言ってる。だから貴重面な陽菜にしては、マスクなしで帰って来たみたいだ。
ランドセルのまま、うがい手洗いしにいく真菜に、無駄だと知りつつ言った。
「帰ったなら、ただいま。だよ?」
「ママ、お姉ちゃん、ただいま〜」
「なんで、私?」
「まあまあ。おかえりなさい。陽菜、真菜」
学校の時間割があうと、たまに陽菜が真央と一緒に帰ってきてくれる。
真菜はこんな性格だし、元気良すぎて、情緒クラスにいる。
だから、はい、と差し出されたビニール袋はには、クラス菜園で収穫した野菜だ。
大根、菜の花、さつまいもとか,その季節によって違うけど。たまに収穫して貰ってくる。
面白いなあ、と思うのは、自分で作ったものを支援級親や先生に売って(販売も客寄せも、作品の説明もする)。
そのお金で給食の代わりにコンビニやハンバーガーやパン屋さんとかに、自分たちで買いに行くという勉強?がある。
独特の取り組みで学校が楽しいらしい真菜は、少しずつ社会ルールや我慢も学んでいくけど、興奮したら、こうだ。
「だけど、いちおう、横断歩道は止まって左右みたよ?きれいに手まであげてた。人混みじゃ足踏みしてだけどね」
って陽菜もうがい手洗いして、子供部屋にある学習机にランドセルを置いた。
「真菜も宿題やる!」
あんなに嫌がってた宿題も、やらないと落ち着かないらしい。
私は宿題をやる2人を横目に真菜からもらったビニール袋をみた。
中身には小さなキャロットと、やたら大きなラディッシュ。
中はカスカスな気もするけど。
材料あったかなあ。
「もとは空ちゃんに春馬くんが作ってたんだよね」
空ちゃんはふつうクラスで、鉢植えに理科の時間に観察していたやつだけど。
材料は、たまたまあった。
餃子の皮、ケチャップ、ウィンナーに、とろけるチーズ。
真菜のきらいなピーマン。
陽菜は食べるけど、まあ、喜んでるから、ピーマンはいいかあ。
フライパンに餃子の皮を敷きつめて、ケチャップぬって、スライスした具材を適当にならべて、チーズをのせて、ふたして焼いたら、ラディッシュのピザの出来上がり。
「空ちゃんいるかな?」
「バイトだと思うよ?またかな?凛ちゃんも学校だし」
「じゃあグンソー呼んでくる!」
「純子おばさんだよ?真菜」
真菜は春馬くんの言葉そのままに純子さんをグンソー呼びだ。
陽菜があきれながら、声かけて、そして真菜とは違うドリルをしながら、
「私も真菜みたいなプリントの方が覚えやすいんだけどなあ」
って漢字の書き取りをしてる。
真菜のプリントはテストっぽい形式だ。
陽菜は真央の子供と中学生はダメだけど、高校は頑張って同じになりたいらしい。
相当な努力がいるけど?
まあ、がんばって?かなあ。
「陽菜、焼けたよ?焼けたて食べよう」
「うん!」
素直に笑う陽菜はやっぱりまだ子供だなあ、って私は笑うんだ。