SS 春馬の釣りタイム
「春馬くんがマタニティブルーみたいだよ?こんど、真央とあう約束してるし、釣りに行ってきたら?」
ってお腹がかなり大きくなった明日菜から言われたけど。
会社で柴原にきいたら、
「明日菜も心配してるよ?だって村上って基本的には、アウトドアだよね?」
そう基本的に俺はあまり家にいない。たしかに明日菜から逃げてたのもあるけど、デミオで山走りながら行く海釣りは、いちばんのストレス解消だ。
明日菜がいるから、最近はあんまりデミオも運転してない。べつに飛ばしたり危ない運転するわけじゃなく、山道は前の車に自分でクルーズコントロール遊びをできる。
が、わりと山道とばす車がいる。なぜかくだりで。しかもブレーキランプばかり。
で、さすがにいまの明日菜を乗せて行かないけど、俺だけなら違うしなあ。
一定の車間距離遊び。だから、楽しい。ちなみに車間距離は俺はあける派。たんに、山道はなぜかブレーキのタイミングが変な場合があるから、どのタイミングか予想しながら走るのが楽しいだけだ。
もちろん後続車がいる場合は、俺もブレーキランプをある程度は合図するけど。いないなら、かなり車間距離の確保ゲームで遊び倒す。
クルーズコントロールを使ったことないから、どうだかは知らないけど。マニュアル乗りでクルーズコントロール機能使う機会があるのか?
まあ、ひとりでもスピードデタラメなら、ついていかないし。完璧におっさんみたいにどんくさい走りをするのが俺だ。
西鉄バスの右左折時の一時停止はいろんな意見があるけど、俺も左折時に一時停止の再確認のくせが、おかげでついただよなあ。
デミオがもう古いはあるけど。
…大人気女優の明日菜をのせる車か?
仕事の時はプロダクションだし、いいのか。たぶんもうしばらく俺の愛車はデミオだしなあ。
赤ちゃん産まれたら金かかるしなあ。俺の場合、たぶんイケメン先輩みたいに出世できないしなあ。
うちのエースだしなあ、先輩。俺は柴原にきいた。
「柴原が妊娠中、かなりマタニティブルーだっただろ?あの頃のイケメン先輩,息抜きしてたのか?」
「うーん?コロナ禍だから、家にいたしね。基本的に先輩はインドアだし?先輩は村上みたいなイタズラしないしね?」
「俺がいつ明日菜にイタズラしてるんだよ?」
「日常生活がバラエティーだよね?村上と明日菜の会話。まあ、明日菜が短気すぎるもあるけど。ほら?先輩は短気じゃないからさあ」
「…べつに僕らからみると明日菜さんは、短気じゃないけどなあ」
イケメン先輩が苦笑いした。
「先輩は、妊娠中の柴原おいて、でかけられます?」
「うーん?ふたり目の時にどうなるかは、わからないかなあ?」
体験してないしなあ。って先輩は首をひねる。こういうところが先輩らしいなあ、って思う。
「基本的に僕はひとりの時間がなくてもへいきだしなあ」
って俺をみてくる。あれ?
「俺はいまひとり時間が欲しいんですか?」
「明日菜が気を使うくらいに?楽しそうじゃない村上がいても、ストレスなんじゃない?あんた考えこみすぎて、現実逃避したくて、結果的にウッドパズルアレルギー起こしたんでしょ?」
「…だな。俺、イケメン先輩みたいに、父親なれんのかな?」
「僕も急に父親になったぞ?」
「まあ、産まれたからね」
柴原が頷き、会話を聴きながらパソコンむかう鈴木さんが首を傾げた。
「急に?」
「エコーとかはみたりしてたけど、オギャーではじめまして?だからね。妊娠中は真央はもうお母さんの顔だけど、僕はやっぱり産まれてはじめてあったわけだから。やっぱり、違ったなあ。あっ、毎日顔がかわるから、ほんとうに、毎日写真や記録残した方がいいよ?」
って真面目か顔で先輩が俺じゃなくて、鈴木兄妹にいう。
鈴木兄妹は苦笑した。
「私達には、相手すらいないから」
「あら?優菜は恋愛とかしたいってならない?まあ、あなたの過去は知ってるけど」
イケカマ係長が参加する。うちのプロジェクトチームは手を止めなければ、わりと自由だ。
もはや自由時間化したのがオンラインだろう。あれ、奇妙な定着だよなあ。
もはや、自由だし。
「私はあきらめてますね。日本だと。まだ記憶に名前残ってるし、本名やめてればよかったんですけどね。明日菜と違って目立たないし」
肩をすくめる。
「僕も優菜がいるうちは、いいかなあ。生活力がそもそもないしなあ」
「お兄ちゃんは生活力はあるでしょ?ただ同居は厳しそうだよね?」
「あんたたちが少子化を掬いなさいよ?」
「そんな重いテーマでした?」
「パパになる村上がマタニティブルーって話でしょ?」
柴原が話を戻す。戻しながらも、
「そういえば、地元で公的に合コンするんだって。後継のお嫁さんやお婿さん募集だってさ?ふたりで参加しない?」
「あら?面白いわね?」
「いま日本で恋愛考えてないって言いましたけど?」
「俺の地元には、まあ、数人しか残ってないかなあ」
なんか成人式の時いたよな?
ーアイツもいるな。
「…若干の不安あるから、優菜はパスで、鈴木兄どう?田舎平気だよね?」
って言いながら、地元のホームページあけてる柴原。仕事はやいな?
って仕事じゃなくね?
「とりあえず保留で。僕、生活力ないから。で、村上くんは釣りにいくの?」
「行きなよ?そんな顔でそばにいたら、明日菜がストレスだからさ?」
って柴原がまたもとのタスクにもどした。もどしながら、なんかキー打ってるけど?
すかさず、イケメン先輩がデリートした。
「さすがにダメだよ?真央」
「だって出逢いないよ?うちのプロジェクトチーム。既婚者ばかりだもん」
「ふたりに抜けられたら、ますますプロジェクトが遅れるから、だめよ?優菜の場合、田舎は辛いかもだし」
「じゃあ、鈴木兄はOKで」
「だから、村上くんのマタニティブルーでしょ?なんで僕なんだよ⁈」
「真央やめなよ?」
って、イケメン先輩がまた柴原をやんわり制する。さすが先輩。
柴原の行動読んでる。
柴原よりさきに手が動いてる。もはや反射神経か?
で、
ー俺はひとりの時間が欲しかったらしい。
明日菜に気を使わせてどうすんだ?って思った。
まあ、楽しかったが寒かったし、久々で鈍かったしなあ。
2時間で10匹。例のベイビーと、ニョロニョロが2匹。
まあ、少しは気分転換かあ。
俺がマタニティブルーになってどうすんだ?って思った。