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赤木


なんで、よりによって、ここでコイツにあうんだよ?


どんなミラクルだよ?


…ふつうにありえるよなあ。うちの地域には、飲み屋がそもそも少ない。


とある親戚筋の昔から馴染みのお店だ。まあ、うちは両親ともに忙しく、ここで飲み食いしてガキの頃は育ってた。


俺の親父たちは、はやくに独立するからか、わりと若くで親になるけど、まあ親父たちは頑張ってくれたし、真央と若くで未来をって思うくらいには、尊敬したし?


衣食住には、苦労しなかった。きちんと親父たちは、俺たちの目の前で、支払いしたし?たぶん安いだろうけど。


まあ、親戚だから、ここで酒飲んだのは二十歳からだし、飲酒運転はしないけど。そうじゃなきゃ、目の前にいる人に迷惑かけちまう。


し、なによりかけがえのない誰かのナニカを俺の身勝手な行動が奪ってしまう。


(そうわかってるくせに、真央や村上春馬になると俺は暴走してしまう。神城はどうでもいい。村上春馬が嫌な目にあえばいい。ザマァをしたい。村上春馬なら、どんな目にあったって、俺はザマァって思う。ザマァって、思うしかないだろ?)


だって、ザマァは俺の中の正義だ。圧倒的に俺の味方で、ヒーローが、シンデレラが思うのが、


ザマァ。


だから、俺は村上春馬に、俺から真央を奪ってったあいつに、軽々とあっという間に真央の視界に入ったあいつに、


一方的な醜いザマァをしかける。


だけど、ザマァされてるのは、俺なんだ。なんの特にもならない俺のザマァだ。


馬鹿みたいに、ザマァされるおれだ。こんな逃げ場もないクソ田舎で、馬鹿みたいに狭い世界で、この場所で生きるくせに、馬鹿みたいに、身勝手な俺のザマァが他の誰でもなく、俺を傷つけてく。


腐れきったおれの苦い初恋を、俺はまだ肥やしに、変えられない。


ただただ苦い初恋に、真央から逃げたくせに。


(あの時、きちんと真央と向き合ってたか?いちばん楽な方法に逃げなかった?真央にまだダメだと俺は注意したか?)


ガキすぎた俺だけど、真央は頭はいいけど、アンバランスなほど中身は幼いというか、もう真央は考えない世界があった。


そのままを、そのままの価値基準、世の中はそうなってる。


そう判断したら、もう考えない、リスクもすべて考えずにただ行動する。そういう危うさも真央にはあった。


あの真央が選んだ相手がいるなら、


「なあ?あんた、真央の相手を知っているのか?」


俺はグラスの氷をカラカラとまわす姿が絵になる、となりの村上竜生にいう。


中学時代、俺の中学の女子はみんなこいつに憧れていた。イケメンで、サッカー部のキャプテンで、真面目で、勉強できて。


いつもサッカー部のやつらと、つるんでて、女っ気なくて、チョコレートも受け取らないヤツ。


ただ、中2の修学旅行で、弟の村上春馬の方が一気に、有名人になったけど。


真央の目が、たまに村上春馬を見るから知ってだけど。べつに、村上と真央が恋愛関係にあったわけじゃない。


そういう目じゃなかった。やっぱり神城も目線で村上を追ってだけど、神城の温度とは、また違うまなざしで、しいていえば、珍虫をみるような?


そういう目つきで、真央は村上春馬をみていた。神城がいる間も、けど、神城が転校してからも、小さなまちだ。ふたりがやらかしたことは、いっきに地域に広まってたけど。


いつのまにか鎮火するほど、ふたりはいつも一緒にいた。県で頭がいちばんいい高校にうちから受かったのは、ふたりだけで。


そこは通学時間がかかるから、よく2人で通学してるのをみかけて、そのまま2人は県外の大学に進学して。


成人式は神城が出席したから、なんかすごいトラブルでさ?俺たちの地元を盛り上げるのは、いいけど、もう少し地元を守る俺たちをみて?


とも思わないけどけど。


(そういえば、あの時も真央と村上は、いたよなあ)


俺には見向きもしなかった真央だ。村上春馬は、なんか無表情に俺を見てきたけど。


いつだって揶揄うように、俺から仕掛けてスルーされる。まるで俺なんか透明人間みたいに、スルーしてくる。


けど、久しぶりに福岡空港で神城のとなりで、夫としていた村上は、ずいぶん大人びてみえた。


真央をみるまなざしとは、まったく違う優しい目で、ただ愛しいと神城をみていた。


真央をみるまなざしとは、違う。


(奇妙な信頼関係)


真央と村上春馬。


あの間に神城だから、日本中を、いや、世界ですら虜にしちゃうヤツだから、って思ったけど。


真央が結婚した。しかも赤ちゃんまでもういる。


相手は村上春馬じゃない。


中学時代の同級生で、村上の幼なじみの黄原から無理矢理、みせてもらったスマホのメモリーには、


(どうみてもゴリラ)


って男が赤ちゃん抱っこした真央のとなりで、優しい目で真央と笑ってた。


真央は、俺が見たこともない穏やかさで、スマホに映ってて。


ただ、きれいだった。


ほんとうに、きれいだった。


わかってるさ、もうおれのザマァは、賞味期限切れだって。


わかってるさ、身勝手な嫉妬だって。


腐りきった初恋を、拗れまくるなら、せっかく腐れちまって弱くなったなら、


(たちきり、ねじきり、捨てたらいい)


いつか土が腐葉土にしてくれるかも?


そう思うくせに。


「ーちくしょう」


やっぱり、悔しくて仕方ないんだ。誰に対してじゃなく、俺が。


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