イケカマ係長 放浪記 ③
おひさー。
って、場所は相変わらずど田舎にいるんだけど。
もう少し賑わっても良さそうなのに、
ー客はアタシだけなのよーん?
どういうこと?
「この辺は、やっぱり高齢者が多いから、寝る時間が早いしね。若者たちは今日は違う場所で、地元の合コンよ」
「あら、内心、ダダ漏れ?」
「飲み屋の洞察力というか、わりとわかりやすいわよ?」
「それは忠告かしら?」
「どうだか。いい人いるなら、大丈夫じゃない?お酒にのまれるタイプには見えないし?外国だもの?気をつけてるでしょ?」
「あら、アタシの世界だと、故郷より、絶対に日本が安全だわ」
いきなり命がなんて、ふつうなら考えずにいるし、銃をみても、モデルガンとしか思わない気もするし?
ドッキリ?なんて,思うかも?
まあ、最近はやたらその手のニュースが増えたけど、世界的にはまだまだ安全な方だろうし。
「あなたこそ、もしかして店じまいだったのかしら?」
「まあね。いつもの悪ガキたちが来ないなら、しめようかしら?」
って、ほんとうに店のドアに営業終了を出してしまう。
「あら?のみたりない」
「あなたと呑みたいだけよ?真央ちゃんの上司だって人とねー」
「真央を深く知ってるの?あの子たちあまり故郷の話はしないわよ?」
まあ、いまならその理由もわかるけど。と言っても、村上はずーっと、おれの恋人は神城明日菜だと言ってたわよね。
ボスが村上を面接で気に入ってた理由だし、結婚式でのボスと言ったら…。
まあ、みてたら、ボスの孫の蓮が可哀想になるくらいには、村上と真央は仲良いけど。
ー柴原は俺の国宝。
相変わらずの発言だけど。まあ、福岡支社の名物だ。
もはや珍品だ。
いまさら、神城明日菜から返品は受け取らないわよ?
わりと大迷惑だったのよ?うちの会社としても。
まだ新人でたまたまオンラインだから、そこまで営業先に顔だしてなかったし、うちはまだ外資だからよかったけど。
あの騒動、私も巻き込まれたのよねー。よくも、まあ、ふたたびリアルに連れ戻したわよね。
「あの子たちの世代って、それともこういう世界で育つ子たちは、強いのかしらね?」
「うちの甥っ子はまた違うけどね。跡取り息子だから、嫁に四苦八苦してるわ」
「都会じゃあふれたフリーよ?」
「田舎じゃ一大事よ」
ってまた黒霧のむ手つきが色っぽいけど。
「まあ、アタシも独り身通したから、甥っ子の足を引っ張ってるかもね」
って、グラスについた口紅を拭うしぐさも、まあ、ねえ。
「うちもダーリンとふたりよ?転勤でもしたら、養子持つかもだけど、あまりリアルじゃないかしらねー」
アタシはダーリンと出会わなければ、結婚なんかしてないし、わりとダーリンに最後まで抵抗したわけだけど。
「不思議よねー、人生」
「でしょ?だから、誰かつぎの合コンいないかしら?」
「うち海外行くわよ?」
ってアタシはばっさりきったわ。脳裏に鈴木兄妹がチラつかないわけじゃないけど。
うちに必要な有望株を渡す気にはなれないわ。