イケカマ係長 放浪記
なんかBSにありそうなタイトルよねー。
アタシはダーリンがヨーロッパの本社に出張してるうちに、ひとり女旅を結構したのよ?
まあ、のんびりおひとり様よーん。ほんとうなら、真央や優菜もありだけど、真央は赤ちゃんいるし、優菜と旅行はねー?
優菜は気にしないでしょうけど、いちおうアタシも気をつけてるわよ?
いちどネットの悪意に晒されて、まったく関係ない傷をうけたあの子をまた傷つけたくないもの。
大人だって傷つく社会を、無邪気に悪いとも思わずにやってしまう、も、もう仕方ないって言うけど。
そう笑って受け流すには、もうあの子は大丈夫だろうけど。
ーうけた傷は加納さんたち大人の方がきついのかしらね?
守り抜くときめて、守れなかった。
いつまでも引きずっていく、悔恨なのかもしれないけど、怨嗟にはしたくないらしい。
どうせなら、縁再にしてほしい。
また笑って、ふたたひ一歩を踏み出す日がくると。
また明日菜に逢えたから、そう笑ってる優菜の現役の頃を私は知らないけど。
あまりにまっすぐなあの子たちを育てた、場所を見てみたくなったのよ?
最近は、なんていうのかしら?
なんか言葉があったわね。
まあ、これ幸い、私だってご褒美で、部屋に温泉付きの旅館を探して、のんびり一人旅よ。
ダーリンいたら、あぶないとかうるさいけど。うちのダーリンより、私は鍛えてるし、ほら?そこはもう骨格からどうしても違うわよねー。
身体能力的なものは、やっぱりあるし。
だから、変な噂が優菜に再来してもこまるわ。大人なのんびり一人旅なのよ。
宿から適当にタクシーにのり、おすすめまでお願いしたら、へんびな場所にきちゃってたわ。
昭和レトロなスナックにいたわよ?
「あら?いらっしゃい」
って笑ってる美人ママが。
カウンターにも、テーブルにも、誰もいないけど。
「まだいいかしら?」
「日本語堪能なら、ぜひ?」
そういえば、私は外見的にも外人よねー。
「カタコトだけど、OK?」
「暴れないなら?というかタクシーの音してたから、◯◯さんの宿泊の方?」
「あら?提携してるの?」
「提携というか、ここは神城明日菜の出身地として有名だからね、ふらりと記者さんとかが酔って口滑らしそうな場所にくるのよ?もちろん、ガードするけど」
「あら?しっかりしてるのね?私が外国記者だったらどうするの?」
「においでわかるわよ?何年もこの世界にいるもの。せめてもの償いもあるしね。うちの甥っ子って酒癖わるいし、旦那さんになった子に個人的な恨みを持っててね。初恋をその子にとられたか?とか?ずーっと会社まで同じ子でただの友人らしいけど」
「あら?真央?」
「そうそう、真央ちゃん、って、えっ?」
あら、いやだ。ダーリン、
アタシ記者並みに、口が軽いわあ。