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SS うたたね


ふと、みると、明日菜先輩がひだまりの机の上でうたた寝をしてる。


私たちの希望で、明日菜先輩と対談していた。音楽誌の一枚。


先輩はもう学生服は恥ずかしいって苦笑いしていたけど、憧れの先輩として、企画で一枚お願いした。


今年二十歳になる私たちの大先輩は、いま人気と実力で休む暇もないほど、スケジュールがたくさんある。


ほんとうなら、休みたいはずなのに、先輩は、心の隙間を埋めるように、なにか必死に忘れたいかのように、仕事をしてる。


寮や事務所で顔をあわせたら、いつだって優しくて、おだやかな笑顔で私たちをみまもり、違うけど、たまに意見やアドバイスくれたり、逆に私たちに質問してくれて、わからない事は一緒に考えてくれる。


ファッション誌にアドバイスくれたりするけど、演技に関しては、私たちはあまり明日菜先輩に質問はしない。


だって明日菜先輩は、ほんとうに人がかわる。別の人格みたいになる。


けど、


「…やっと眠ったわね」


って、明日菜先輩のマネージャーさんが、小さくため息をついた。


「ほんとうによかったんですか?いま先輩、映画の番宣とかで忙しいですよね?」


他にもアニメの吹き替えやドラマの撮影や、モデルの仕事もある。


毎日、分刻みみたいなスケジュールに、やっとあいたスケジュールに、私たちの以前からの希望をきいてくれたけど。


「…恋愛映画の番宣だもの。あの子がスマホをみてはため息つく姿はみたくないの」


撮影中は、私が預かってる。とマネージャーさんは言った。


「ほんとうに、あんなヤツのどこがいいのかしら?」


って、苛立ちを隠せないけど、苛立ちながら、けど、とても複雑そうで。


ロケで小さな昔の廃校を利用した。すこしだけ昭和レトロな曲で、そこに私たちのダンスをプラスしたけど。


あたたかな、ひざしが穏やかに明日菜先輩をてらしてる。


明日菜先輩が眠ってる。


それだけで子犬みうなおだやかな気持ちになる。


「…この写真を送ったってよろこばないヤツのどこがいいのかしら?」


寮母さんと仲がいいから、寮母さん経由でおくったら、


ーなんで、ゲジゲジやミニムカデは悲鳴なんだろ?


ってきたらしい。


「ファッション誌と昆虫図鑑を一緒にするんじゃないわよ?」


たしかに、カラフルだけど。


「…相変わらず変な人ですね?」


私たちの間では、明日菜先輩の遠距離恋愛の彼氏は有名人だ。


ただあまりに変人すぎて、


ー存在すら疑ってるけど。


あの変なプレゼントに、それでも明日菜先輩がただ嬉しそうに笑ってるから。


いつも大人びた瞳で、あきらめたように、けどやさしく笑うから、


ただ、笑うから。


ー泣いていいよ?


ー休んでいいよ?


ー眠りなよ?


って、私たちには言うのに、ひたすらに、


ー明日菜先輩は存在を消してくんだ。


透明感にあふれて、あふれすぎて、、、。


ーカミジョウ アスナ


しかいない。


そこに明日菜先輩が存在すらしない。


ただ、一枚の写真のように、


ー平面図になる。


絵になりすぎるワンシーン。


「どんな夢をみてるのかしら?」


そうつぶやくように、痛みに耐えるように、マネージャーさんは、ただみまもり、私たちも黙ってみていた。


ー明日菜先輩の恋は、私にはできない。


どうして?


そんなに辛いなら。


「手をはなしたら、いいのに」


明日菜先輩なら、他にもたくさんいる。


たくさん、いる、のに。


手放したら楽なのに。


その手をはなしたら、


「…いまの明日菜に、凍らすタイプの殺虫剤をプレゼントしてくる彼氏なんか寄ってくるかしら?」


ファッション誌と昆虫図鑑を一緒にしてるけど。


どうして、植物図鑑じゃないの⁈


って、あとから明日菜先輩が怒ってたから、


ー明日菜先輩への影響力はすごいんだろう。


昆虫図鑑のプレゼントがきていた。



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