SS 大晦日
「そう言えば、明日菜と、はじめて年越しするよなあ?」
春馬くんが、手を動かしながらキッチンから言った。
今日は大晦日。明日の元旦は、おとなりの轟木さんのお家にご招待されている。
もちろん、ポチ袋も忘れてない。
スマホには、東京の後輩たちから、なぜか春馬くんあてにおねだりが,きてる。
春馬くんはくびをひねり、相場を調べてるけど、あの場合、野良猫みたいな後輩も絡んでるから、完全におふざけ状態だ。
たぶん春馬くんより稼いでるし?まあ、お年玉は嬉しいらしいし?
素直にきちんとお礼言う子たちだし?
私も中学生までは、先輩から優菜とよくもらってたなあ。
優菜が甘え半分、じゃれついてて、私はよく優菜にくっついてたし。
高校卒業してから、あまり帰省もできなかったし、はまだ二十歳だった成人式も春馬くんとは、すれ違いで。
ーあの時には、思ってない大晦日で、
ね?
春馬くん。
「お蕎麦をレインボーにしたらダメだよ?」
「大丈夫だ、柴原経由でレシピを手に入れた」
年越しそばは、そばは他の麺に比べて、噛み切りやすいから、縁切りの意味があるとかないとか?
悪いものと縁切りするために大晦日に食べるんだっけ?って一説にはきいたけど、あとは細長いから長いしできるように?
どんな意味でも年越しそばは、蕎麦らしい、
一人暮らしだとまあるいたぬきさん?
犬猫のルーツになる動物にくまもいて、500万年単位が印象的だった空ちゃんと春馬くんの会話だったけど。
私は東京にいたから、いろんなお蕎麦を食べ慣れてるけど、春馬くんや真央はやっぱり福岡は、うどん文化って言いながらも、
ー年越しそばは、蕎麦らしい。
はりきって、二八蕎麦を作ってる。
きちんと真央からレクチャーされたらしく、手つきも様になってる。
コロナから解放?されたから、海外からの社員さんのおもてなし技として、レクチャーされてるらしいし?
真央は相変わらず実家の和菓子屋さん含め、和食のプロモーションも忘れない。
まあ、相変わらずにぎやかな個性的な会社で春馬くんも、真央も、たまにあう優菜も楽しそうにしてる。
優菜はむかし、先輩たちにお年玉をおねだりしていた快活さは、なくなったけど、穏やかな笑顔で,大人っぽくなった。
イケカマ係長がいろんなイケメンをリストアップしては、優菜のお兄さんから、ダメだしされてるらしい。
ー鈴木兄は、手強いぞ?
って春馬くんが呆れていたけど、春馬くんたちプロジェクトチーム一丸で、なぜか当のイケカマ係長でさえダメだしするらしい。
そのうち、いいタイミングで出会うわよね?
ーそれくらい、縁、って不思議なのよね?
らしい。
今年、私がたくさん出会えた優しい縁は、たとえ年越しそばを食べてもまた美味しい繋がりを、長細く続くんだろうね?
「できたぞ!明日菜」
鼻歌まじりに、春馬くんが持ってきてくれたお手製のお蕎麦をみて、
「わあ、美味しそう」
だけど、見事に、具をカラフルレインボーだったのは、もうスルーした。
ね?
春馬くん?
大晦日まで、
ーあいうえお作文は、私も嫌なんだ。
って思いながら、やっぱり続くんだろうな?
だって、
「あ?」
「あじ?」
「い?」
「いいあんばい?」
「う?」
「うん?」
「え?」
「海老天いりだね?」
「お?」
「美味しいよ?ありがとう、春馬くん」
「あ?」
「ありがとう!って繰り返しはしないからね⁈」
2人きりなのに、変わらないにぎやかな私たちだね?
って笑うんだ。




