クリスマス ビターバージョン
明日菜が俺を忘れて、はじめてのクリスマス。
第何波かは,忘れたけど、コロナはいまだに絶好調で、いちおう自粛モードだ。
そろそろ自粛にあきて、守らないし、気にしないは増えてきた。
いつまでも自粛じゃ無理だろうしなあ。
相変わらず、今日の感染者数のニュースに、臨時速報ながれたのは、だいぶ前な気がしたし、
ー去年は明日菜にプレゼントを贈りはしたんだよなあ。
俺は空色の腕時計を見ながらため息が出そうになる。いまの俺はただ見てる。
動いたところで、どうしようもない。最悪、ほんとうに、
ー最悪になる。
俺自身じゃなくて、明日菜がギリギリなんだ。
ー俺じゃない。俺じゃないんだ。
つい下唇を前歯で噛みそうになるけど、ギリギリでやめれた。
ーまだ、やめれる余裕が俺にあるし、明日菜のまわりが明日菜を見守ってくれている。
きれいごとじゃなく、明日菜の心が守れるなら?明日菜がただ、また笑う日がくるなら。
ーあの凍えた冬の屋上から、助けてくれたのは、柴原だ。
あの時も俺はただ見ていたけど。
「全然、成長してない」
あきれるくらい、あの頃のまま、まったく成長してないけど。
ため息をつきながら、
ーもし、また明日菜が俺を必要としてくれたなら、
「こんどこそ、俺が動くよ?」
そう言葉にだした。