SS サッカーと野球
春馬くんの寝顔をみてたけど、ルービックキューブを机に置くために立ち上がった私の手に、ふと大学時代の写真がサイドデスクにあることに気づいた。
真央や数人の女子と写ってるし、中央には教授みたいな人もいるから、ゼミかな?
あとは寮での写真も数枚同じ場所に無造作に置いてある。
ウッドパズルをやりながら筆記用具を漁ったみたい。春馬くんは、わりと貴重面にしてるけど、真央と同じくほどほどに気をつけてるらしい。
ーたぶん、許せなくなる。
自分のこだわりを必要以上に他人にも要求して、できないと腹が立ってしまう。
他人は他人といいながら、
ー同じレベルを求めてしまう。
ものすごいこだわりになる、とだけ、日常生活が困難になるってわかるから、やらない努力がいる。
やる気スイッチを強制的に切る自己防衛本能。
ってなに?
とは、思ったけど、最近の春馬くんのウッドパズルを見てたらなんとなく理解できるかなあ。
ただ不思議なほど、春馬くんはインテリアってわかったら、わかった瞬間にわりと適当になってる。
ギミックないってわかったから?
ね?
春馬くん?
説明書の最後は、読まないの?
ー翻訳しても日本語がわかんないぞ?
って相変わらず口をへの字にしてる。
直訳?
どっち⁈
日本語の直訳?
日本語のSVO、C?
…和英辞典みて、
ー⁈
みたいな?
ね?
春馬くん。
わたしにはよくわからない、例えだよ?
真央ならわかるのかなあ?
写真の人たちは、真央にも負けない容姿の人たちで、私なんかよりずっと春馬くんと時間をすごしてる。
寮にいる春馬くんは、少し年上らしい男性達とサッカーボールを手に笑ってる。
そういえば、リトルチームにいたんだっけ?
「野球はまだ見たことあるけど、サッカーしてる姿も見てみたかったなあ?」
ついポツリとつぶやいたら、
「あっ、簡単だよ?明日菜お姉ちゃん?」
「こら、空!勝手に新婚さんの家に入らない!」
って玄関から賑やかに声がした。私は振り返る。
手にちいさなビニール袋を持った萌ちゃんと、空ちゃんがいる。
「お母さんが、お裾分けだって」
産地直売のミニトマト。
空ちゃんが元気に笑う横で、少し髪がのびた萌ちゃんが苦笑した。
「ごめんなさい。でも不用心だよ?玄関開いてたよ?」
「あっ、つい寮のくせで。ごめんね?ありがとう」
いつも後輩たちが遊びにくるから、つい鍵を忘れちゃう。春馬くんからも注意されてる。
謝りながら、
「簡単って?」
「春馬お兄ちゃんの特技で、空がよくせがんでるの。ボール遊びができる場所で、できるんだ」
…けど、人が集まるから、人気がない朝早くがいいかなあ?明日菜お姉ちゃんとだと。
と萌ちゃんの助言で、早朝に萌ちゃん、空ちゃんと春馬くんと、一緒にボール遊びできるひろい公園にきたけど。
「またやるのか?最近、やってないから、できるかなぁ?」
って、首をかしげながら、春馬くんの足元にはサッカーボール。手には軟式の野球ボール。
「たぶん、あたらないぞ?」
って、いいながら、春馬くんは、軽くリフティングしてから、
ーどかっ!
と音がするほど、少し斜め高くにサッカーボールを蹴り上げて、野球の投球フォームになった。
あれ?YouTube系?
って一瞬思ったら、サッカーボールは、そのまま地面にワンバウンドして、ツーバウンドして、
スリーバウンドする前に、
ーゴン!
って音がして、野球ボールが当たってた。
「やった!」
「どうして、ツーバウンドなんだろね?」
って萌ちゃんがあきれた顔で拍手してる。空ちゃんはダッシュで,ボールを犬みたいに追いかけてる。
「スリーバントは失敗だから?」
って私はつい言ったけど、
ーボールばっかりみてたから、春馬くんを見てなかった。
「ちなみに明日菜お姉ちゃん。春馬お兄ちゃんが当たるの最初の一回だけだから?」
「だよね?」
空ちゃんがもう一回と言わないから、
ーよくわかる。
って私はあきれて笑ってた。