SS ある日の寮
私たちは、きらびやかな大都会のひとつのマンションに、地方から集まってる。
業界では入る事すら、難しいとされる芸能事務所に、オーディションを勝ち抜き、やっと入れた。
オーディションなのに。
「こんど、新しく中学二年生の子が寮に入るからよろしくね?」
と、寮生が集められてスタッフから、そう言われた。私たちはそれぞれ、もうそこそこ忙しい立ち位置だから、わざわざ集められた事に、ざわざわしてた、寮の食堂で。
うちの事務職のなかでも敏腕マネージャーと名高いタレント側からしたら、加納女史についていけば大スター間違いなし、とまで信頼されてる、ある意味厳しいけど、信頼抜群のマネージャーさんが、私たちに言った。
「加納さんの担当なんですか?というか、最近、オーディションなんかありました?」
まあ、私はもうすぐ寮を出るけど?っていちばん芸歴の長い先輩が手を軽くあげて、質問した。
私たちもそこが不思議で加納女史をみる。そうしたら、加納女史は苦笑した。
「ああ、その子は私がスカウトしたから、オーディション組じゃないのよ」
「加納さんがスカウトですか?」
スカウトって言葉にさらにざわつく。わたしも驚いた。
うちのプロダクションでは、ほとんどきかない言葉だ。
しかも加納さんが?
「すごい子なんですね」
「そんなに美少女なんですか?」
「うーん?美少女ではあるけど、外見的には貴方達の方がきれいかなあ?もちろん美少女だけど、あの子のは、空気感かな?」
「空気感?」
「あっ、空気感は、あの子の変な彼氏かあ。明日菜は存在感があるけど、あっちはどうかしら?」
「えっ?彼氏持ちの子ですか?」
交際OKしてるってこと?まあ、うちはうるさいほうじゃないけど。
「どうせ南九州の地方の子よ?すぐに遠距離なんかより、身近な子たちに変わるわよ?13歳だし」
「13歳⁈」
そりゃあ、また原石中の原石だなあ。
私たちはあきれ半分できいてた。話をしてる加納女史が目を輝かせてる。
加納女史は、たしかに敏腕で有能だけど、本気の加納女史についていくには…。
(13歳?)
この女史に負けない子がくるんだよね?
って若干身構えていた私たちは、後日であう、13歳の神城明日菜。
に、ハートを射抜かれた。
うちの寮の最年少はとても素直で可愛い!
いまやすっかりうちのプロダクションの看板娘だ。




