SS ※暗いです 非通知
スマホが振動した。
スマホの画面には、非通知表示。
ー?
って思いながら、とりあえず電話にでる。
はい、村上です。
ーあっ、よかった。でてくれた。
ほっとしたような、声に俺の呼吸がとまりそうになる。
ざわつく大学の浮かれた新入生を勧誘する声が遠ざかってく。
「…明日菜?」
こたえた声がなんかかたくなった。
だって、さがしてたんだ。
無意識に、目に入ってくる、似たような背格好の女子の髪型やファッションが、
ーいま話題のラブストーリーのヒロインを真似してるから。
目を逸らしたくても、目に入ってくるから、つい目で追って、
ーなんで、そばにいないんだろ?
そう思うんだ。
俺からあいにいけば、いつだって笑ってくれる、そうわかるのに、
わかるけど、
ーまた泣くのか?
また、泣かせちゃうのかな?
明日菜は悪くない。仕事だ。明日菜がのぞんだわけじゃない。
ー仕方ないだろ?だって、なんにもできない。
東京の大学には入れない。福岡だって、俺の両親が頑張ってくれた、は、わかる。
だけど、ほんとうなら、いたはずで。
ーとなりには、いないかも、だけど。いつだって、走って、泣いたら、抱きしめて、ただあたまなでて、
ー守りたいんだ。
泣かせたいわけじゃなかったんだ。
だけど、
ーもしもし春馬くん?
震えてる明日菜の声に、
「いま、俺は大学いるんだけど、なに?休みなのか?」
って、ひどい言葉がでたんだ。
明日菜からの着信があってたのは、知ってた。べつに着信拒否したわけじゃない。
だけど、
ーもう少しだけ、時間がほしかった。
どうしようもない雑音に耐えれるまで、、、。
ー俺が明日菜の彼氏だ!
って叫ぶ前に、怒りをぶつけないために、
ただ、邪魔な情報をシャットアウトして、リアルの明日菜だけを信じたいのに。
ーなんで、明日菜は約束をやぶったんだ?
春になったら、福岡であおうね?
大学生の俺と、明日菜はたくさん東京で頑張ってたから、少しだけのんびりしてさ?
ただ、これからの時間をゆっくり、巻き戻しながら、だけど、振り子時計にゼンマイくわえて、ただ、少しのズレを、いつかは、
ー電波時計みたいにあわせて、
かさねていきたい、未来が、
ー非通知。
最低な俺は、最低な声がでた。
叫びたかったのは、明日菜だろう。
嘘つきは、
ー俺だよ?
だって、いま、
ー非通知なら、でた。
明日菜は気づいてたんだ。