SS パズル
ソファーで、うとうとしていたら、春馬くんの部屋から、奇妙な音がする。
いまはホワイトボードや、プロジェクターとかがメインだけど、私の頃はまだ黒板があり、よくクラスメイトが、ひとりは、みんなが嫌がるのを面白がってやるイタズラな、
ーぎぃー。
って音に似てる。
身体がいまだるい私は、視線だけ音の方をみたら、春馬くんが40センチくらいの木の楽器を持ってた。
というか、正確にはウッドパズルを持ってた。
最近、少し体調が悪い私を気づかって、春馬くんは大好きな釣りにも、デミオでドライブにも行ってない。
お隣の轟木姉妹もあまり遊びにこないから、暇らしい。
そんな春馬くんが最近ハマってるのが、ウッドパズル。
ね?
春馬くん?
ー時計のウッドパズルは、カチコチうるさいかなあ?
いまの私には、少しつらくて、せっかくの時計はインテリアになってる。
ふくろうの時計は、後ろ?は、電池の無音時計だけど、なんか迫力があり、真央にもらってもらった。
真央の子供が歯車な大好きで、ずーっとみてるらしい。真央もパズルが好きだから、血筋なのかなあ?
「あっ?わるい、明日菜。起こしたか?」
春馬くんが気づいて言ってくれた。
「うん、完成したの?パズル?」
「あと、無理のオンラインチューニングアプリで、チューニングするだけらしいんだけど、適当にアプリみてたら、うっかりサブスクになりかけた。
しかも、めちゃくちゃ高い。
無料って3日だけであとは自動で、週に1000円?
…高すぎない⁈
ね?
春馬くん。
「よくきづいたね?」
「しらべて、レビューみてみた。プロならいいんだろうけど、一回しか、しかもパズルで使うだけだから、危なかった。他の無料より、使いやすそうだったけど、そもそも俺、楽器さっぱりわかんないしな?」
「どうして買ったの?」
「イケカマ係長が代わりに作ってくれって、くれたんだ。自粛期間中に、暇だから買ってたらしい。作らなかったけど、高いから、捨てるのもなんで、持ってたんだって」
「できたの?」
「うん?一応、チューニングをD?にはあわせたけど、さっぱり?」
ハンドルをまわすと、少し高めの音がリズム良くなって、番号式のキーをおしたら、なんとなく曲になる。
「すごいよなあ、こんなパズル思いつくなんて。そういえば、鈴木兄妹が赴任先で、冬が厳しいから家でできる内職とか探したって言ってたな」
「優菜、元気?」
「うん、プロジェクトのいまやすっかり癒しだな。うちのメンバー濃いから」
「ーだよね?」
美女揃いだけど、春馬くんのプロジェクトメンバーは、なんかすごいから、優菜がいたらほんわかかも?
「あれ?鈴木さんには、嫉妬しないのか?」
…柴原には、怒るのに?
って、
ね?
春馬くん?
「わかってるなら、真央発言、少しは控えてね?」
「いや、俺に水を飲むなと?」
「なんで、真央が生命線なのよ⁈」
「だって柴原、かならず、煮沸濾過しそうだし?明日菜は泥水でも、俺は飲めるぞ?」
「お腹弱いくせに無理しないの!そもそもどうして私が泥水になるの?」
「いや、明日菜がこの間、へんな味のお茶くれたから?」
「ミルクティーのひとつだよ?」
私も苦手な味だけど、もらったから、春馬くんに飲んでもらって、
ーお腹くだしてた。
ダイエットようだったらしい。
ようやくチューニングが終わったみたいで、不思議な音楽が春馬くんのスマホからきこえてきた。
「とりあえず、なんか食べれそうか?」
「うん、食べないとダメだけど…」
私はそっとまだ目立たないお腹に触れる。まだまだ胎動もないし、安定期でもない。
もともと食事にあまり興味ない私は、体力だけは、自信あったけど、
ー悪阻。
人によっては、病気じゃないから、って軽く言うけど、こんなにきついんだ。
自分の身体に違う生命が宿る負担って、こんなに初期からでるんだね?
ー不思議だけど。
「食べないとダメだって、わかるんだけど」
「うん、とりあえず、なんか作るから待ってて?」
春馬くんがそう優しく言って、キッチンにむかうから、つい、言った。
「なぞのレインボーは絶対いやだよ?」
ね?
春馬くん。
ーイケカマ係長のウッドパズルに私は感謝してるんだ。
退屈した、春馬くんが料理に夢中になったら、
ーますます悪阻がつらくなりそうだ。
って、思いながら、流れてくる不思議な音楽に、
…あの人たちは、いまも笑えてるのかな?ってふと思った。
ちなみにパズル動画
https://www.youtube.com/@user-pp8in6tg4t
です。