黄原
春馬が神城と一緒に帰るのをみて、俺は少し、
ーうらやましくなった。
ふつうに神城みたいな彼女が俺にもほしい。嘘でもいいから、ほしい。神城みたいな美少女が彼女だなんて一生自慢できる気がする。
ーだから、神城は春馬を選んだんだろうって、そうわかるけど。
なんか悔しい。羨ましい。
ー春馬はいいヤツだって、そうわかっていて、俺はべつに神城に憧れはあるけど、恋愛感情はないはず?
なのに、もやもやしてしまう。
「あーあ。ちっちぇーな?俺」
ここで、俺の好きなアニメや漫画の脇役ならさ?よかった?や、悔しさを露わにできるんだろうけど。
ーなんか完全なるモブ。
いや、名前はあるから、モブではない。
吾輩は猫である。は、また違うけど。
やばい。たぶん、これは春馬の呪いだ。絶対、春馬が思う系だ。
…いま、春馬が羨ましいと思ってたのに、春馬は嫌だなんて、我ながら勝手だよなあ。
自分にあきれながら、春馬と神城の後ろ姿をみる。
「後ろ姿だけなら、なんかしっくりくるな?」
「なんだろうな?もっと違和感あるかと思ったのに」
「カップルだって、なんかみえるよね?」
「姉弟には見えるか?」
「兄妹には、絶対、見えないね」
春馬?なんかかるく毒吐かれてるぞ?
ただ、みんなが言うことは、わかるけど。
奇妙なことに春馬と神城の後ろ姿だけなら、カップルとしては、違和感ない。
後ろ姿でも神城は、なんか目をひくやつだけど、春馬が神城の隣にいても違和感ないよな。
春馬は、そのことを自慢なんかしないだろうな。これから先、神城が芸能人になってどの道を歩んでいくのかは、わからないけど。
それは春馬自身は関係ないって、思うんだろうなあ。神城の評価だから、春馬はなんにも自慢とは思わないんだろうなあ?
神城の自慢にはなりたいと、思うのかもしれないけど。
俺は神城が彼女だと、俺の自慢になるって派だから。
ーだから、神城が選んだのは、春馬なんだろう、
きっと、春馬はありのままの神城を見てるんだろうなあ。
ーあいつに独占欲があるのか?ものに対してなら、まだわかるけど。
人が言うほど、孤独が好きなわけじゃないだろうけど。春馬はラッシーやじいちゃんといたしな。
ただいまの春馬はラッシーがいたら、それでいいようにも見える。
「ー村上と明日菜が心配?」
修学旅行で変わったっていや、こいつと春馬も変わったな。
ー春馬の視界にあっさり入ったな?こいつ。
「柴原はどう思うんだ?」
柴原真央。
神城明日菜とならぶ、我が校の美少女だけど、顔立ちが整ってるだけなら、柴原も負けてないけど、神城とは、なんか違う。
いま目の前にいる柴原はたしかに笑ってながら、それなのに、なんか違う。
「さあ?明日菜が神様のサイコロをとめたとだけ?私にはあんな大天才がなんでそんな事いったのか、わからないし?けど、明日菜が自分で止めたよ?」
「俺はその言葉すら、知らねーけど?」
「日本人にとって、神様って曖昧だしね」
柴原が肩をすくめる。少しつかれた様子にもみえた。
「おまえと春馬はないのか?」
「明日菜に石にされたくないから?」
「神話かよ?そもそもいなくなるだろ?神城は」
春馬の様子なら、神城はスカウトをうけいれて、東京に行くよな?
どう考えても、続かないだろ?
「どうして?世の中には、意外に初恋が実ったパターンもリアルにたくさんあるよ?」
「それはそうだろうけど、住む世界が違くなるぞ?」
「明日菜が先にある意味で社会人になるだけじゃない?」
「こんな田舎の中学生なんかますます相手にされないだろう?」
「どうして?いまは、SNSやネットで、いつでも明日菜の情報がきける時代になるよ?」
「春馬は探さないだろう?赤木や俺でもないし?」
「黄原はやるの?」
「最新情報命」
「台風とかならね。地震対策しながらさあ?きりないから、ある程度でやめちゃうよね?これ以上はたぶん家が持たないだろうって、割り切ってある程度でやめない?あれと同じで、サーチしたら、だいたいいちばん最初にくるページって、なんか最悪パターンから入るページもあるし?熱愛報道とかでて、村上がサーチするかな?」
「いい方には、いかないのか?」
「日本のサーチは、なんかそっちかなあ?記事を追いながら、結局、それに対して、ネットの声ではー。って載せて終わる記事がたくさんだからさ?記事書いてる人の意見は⁈って思わない?結局はなんかSNS読んでる気分になるんだ」
「まあ、それならもうSNSのトレンド調べた方がはやいかもな」
「めんどくさくない?」
「まあ、人それぞれだろ?つくづくおまえと春馬って似てんな?」
「じゃあ、黄原私とも仲良くする?」
「それは勘弁してくれ?」
春馬はひとりで手あまりだし?
口に出さなかったけど、柴原には通じたらしい。
「だいじょうぶだよ?黄原。きっと両思いだから」
「誤解されるから、やめろ?」
「ゴカイっていえばさあ?小学生がミミズ見て、どうしてママ、地上にウナギいるの?って言うんだって」
「春馬やおまえだろう?」
そもそもゴカイとミミズとウナギでかなり違くね?
餌と獲物じゃね?
「ミミズって知らないのかなあ?」
「知らねーよ?ってか、用事はなんだよ?」
「ん?黄原がなんか羨ましそうにしてたから?一緒に帰るかなあ?とか」
「やめてくれ?赤木に恨まれるのは、ごめんだ。新しい話題であいつらを守るつもりなら、他をあたれ?」
「あら?ばれた?」
「おまえと春馬が神城に何したか忘れたのか?」
「ただの時刻表遊び?」
肩をすくめて、周囲をみわたす。
「まあ、目的は十分かな?」
いつのまにか、俺たちにも視線が集まって、遠くに赤木が俺を睨んでた。
「ー勘弁してくれ?」
俺は一生モブでいい、って思った。
春馬、だいじょうぶか?