帰宅 春馬
神城が足をとめた。この近くらしい。
さっき家族には、俺と一緒にいるのを、見られたくないようなことを言ってたしな?
たしかに、俺がいたら、ストーカーの心配をされそうだ。
イチイチゼロは、できればお世話になりたくたい。ならない努力はいるよな?
神城が手をのばすから、こんどは素直に、大きなバックを渡した。
やっぱり、神城の華奢な身体には、重くみえるけど、まあ、いっか。
神城がそもそももつ荷物だし?
俺が背負う必要なんかない、はず?
ーって、平和ないまなら、思うけどなあ?なんでだろうな?
ってじいちゃんは、俺の頭を撫でたっけ?
ーやっと痛いって、言える世界になったんだ。きちんと声にだすんだよ?春馬。嫌なら嫌って言え?
ーいや、かっこつけても、すべて嫌は通らないぞ?親父?
ーいやだ!採血なんぞしなくていい!
逃げ回ってたよな?じいちゃん。そのあとどうなったかは、知らないけど。
ーあんなに注射きらいだったのに、最後にみたじいちゃんは、点滴姿かあ。
というか、じいちゃんが怖がってたのは、採血結果なんかな?
ー?
「今日…、ううん、いままでも、ありがとう」
神城のセリフにも、
ー?
「いままで?」
その荷物、そんなに重かったか?返さないほうがよかったのか?
「うん、クロックスとか、傘とか、あの日とか」
あの日?
穏やかな神城を見たのってー。
「ああ、ラッシーはあんな飴食べないぞ?」
犬に人間の飴はやらない方がいいような?
「それはクロックスの時でしょ⁈」
俺はラッシーになれないらしい。
「最後までブレずに短気だな?神城さん」
ーよく怒るよなあ?ラッシーには優しかったくせに?
さすが異世界代表だ。
「まだ最後じゃないからね⁈それに、何度も言うけど、私を短気って言うのは、村上くんと真央だけだからね?」
まあ、夏休みまでは、たしかに?
5月で、もうなんか暑いけどな?
ー今年の夏も暑いだろう。
神城は不満そうに俺をにらんでくる。ただ、いま、そんなに暑いか?今日はまだ蒸し暑くはないぞ?
バックはたしかに重そうだけど?
「まあ、明日は休みだし?ゆっくりしたら、イライラもおさまるかも?」
「そう思うなら、あいうえお作文やめて?」
「あっ?つぎはナ行か?」
「やらないからね⁈そもそも私の話をきいてる?」
「ナガレタゴカエルって知ってるか?」
話した気もするけど。
「庭には、いないと思うけど?」
庭には2羽、
「ぬいぐるみにいるかな?」
「猫の方が可愛いと思うけど」
鶏いたら、食べられるんじゃないか?その庭?あぶなくね?
「のんきな感想だな?神城さん?」
それとも鶏が強いのか?
「どうして、私なの⁈」
ー鳥と猫だと、日本だとどっちだ?
ー?
わからないのに、即答か?すげーな?
「ほら?やっぱり短気だ。神城さん」
鶏も猫もなく暇なくね?泣き言なんか言わせないような?
いや、それは柴原か?
「ー村上くんは、明日、部活なの?」
ため息まじりに仕方なさそうに、神城が俺をみた。明日は部活はあるな?
「そう。部活がある。部員たちで買った土産も渡すし?そこにいないと、なんかめんどくなりそう」
「なんか言われるの?」
「お礼」
「よくない?」
「返事がいるから?あいうえお作文以外に」
「私にも、まともに返事して⁈」
だって、みんなで買ったし?俺言われたから、その金額をだしたし?
まったく考えずに渡したし?
疑問ですらしてないし?
土産の意味をそもそもわかってないし?
ーあっ、けど、一個はえらんだな?
「ああ、けどひとりだけは、確実に話すよなあ。私は他の部員と違う土産じゃないと嫌だって言ってきたし」
「えっ?」
「偉そうじゃないけど」
「えっ?」
「偉そうな態度だよな?発言だけなら」
「えっ?」
「衛生は保ってくれてる」
たまに部室の片付けしてると、手伝ってくれる。
「えっ?」
「えらいって方言で使い方ちがうよなあ」
「えっ?」
「えらい大変だから、労えよ?か?」
たしかに、部室の掃除は大変だよなあ?
異世界人の後輩は、部室じゃ着替えてないし?
ーあまり使わない部室を俺と一緒に片付けてくれるし?
先輩、へたなんだから、練習時間がもったいないし?
「私が村上くんの彼女だからね?」
言われ放題なような?逆らわないけどさ?
「えらいよなあ?俺」
…誰か労ってくれ?えらい目にあった修学旅行じゃね?
「俺が神城さんの彼氏だよ?」
とりあえずいま、は?
俺は笑った。




