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帰り道 春馬 ④


ーやっぱり細いよなあ。


神城の身長は同じくらいだけど、同じ異世界人の後輩は元気いっぱいに部活の練習バックを振り回してるからか、その印象の違いに不思議じゃある。


柴原もバスケ部でよく持ち歩いてるから、たんに見慣れないだけかな?


ー疲れちゃいるだろうし?


いや、あいつら部活帰りでも元気だよな?


柴原はわからないが、後輩はめちゃくちゃ元気いいよな?ついこの前まで小学生だったから、そう思うのかな?


異世界人だけど、その辺は後輩としかいいようないしなあ。後輩だけど、野球うまいから俺には、先輩か?


ー部活でしかつながりないしな?うちの異世界人みたいに、重たいなら、言ってきそうだし。


神城は断ってきたから、神城にとっては、よけいなお世話なんだろなあ。


ただ、神城の歩くペースが少し速くなりはした。神城は無意識だろうから、俺はペースをおとす。


神城が後輩たちみたいに体力あるようには見えない。そういえば、ラッシーも子犬時代が終わったころ、俺のペースにあわせてくれてたな。


「俺、いまラッシー?」


ラッシーの方が優しいよな?


神城が言った。


「送ってくれるのは、家の近くまででいいから。お姉ちゃんにみつかると、いろんなこときかれるし」


そいや、演劇部にはお姉さん絡みだっけ?俺も似たようなもんだけど、


ー春馬は野球やれよ?サッカー部は俺がいるから。


神城とは、なんか、たぶん、かなりちがう気もする。


「お姉さんと仲いいの?」


「うん、仲はいいかなあ?」


そういいながら、神城の不機嫌な顔が少しゆるむ。少し懐かしそうな雰囲気もある。


俺は先輩たちの会話を思い出した。


「ああ、そういえば、お兄さんもいるんだよな?3人兄妹の末っ子だっけ?」


「…いちおうきくね?どうして知ってるの?」


いやそうに俺を見るけど、わざわざ言う必要あるのか?


「神城さん、うちの部員に大人気だから、部活ていろんな話が耳に入ってくるから?部室って先輩たちの話を一応きいとかないとダメだし?」


イヤホンとかで、耳塞いだら生意気だってたぶん言われるし?


「お疲れ様、俺の耳?」


ほんとうに、そうだよなあ。べつにききたいわけじゃないぞ?きいてないなら、きいてないで怒るしなあ。


「なんでよ⁈」


神城が怒るけど、いや?俺に言われても⁈


「だって、防ぎようがない系だろ?一方的に目や耳にはいる情報って?」


「ー言われてる私には?」


そりゃあ、まあ?


「大変だな?」


本心だけど、神城が、


「ータ行はしないって言ったよね?」


そういえば、タ行だな?なら?


「ち?」


「違う話でもしないよ?」


「つ?」


「つべこべ言ってもムダだよ?」


「て?」


「丁寧にしてもダメだよ?」


「と?」


「とりつく暇もなく、村上くんペースだね?」


いや、タ行にもちこんだのは、神城だろ?


「神城さん、やっぱり」


「超能力なんかないから」


退屈しない、でリフレインは無理らしい。超能力なら、多通信でよくね?


他通信か?


ーだから、声にだすんだよ?春馬。


頭にじいちゃんの声がリフレインしたけど、必要ないだろ?


神城とは、夏までだ。


「ー真央も一緒に帰ったらよかった?」


神城が小さな声でつぶやいたけど、


ー?


「柴原の家、逆方向だろ?」


和菓子食いたいの?梅ヶ枝餅にあまり反応してなかったよな?


しかも、道がちがうし?


「真央の家知ってるの?」


「だって、有名だろ?柴原のとこの和菓子屋。うちのじいちゃんが好きでよく食べてたよ?」


俺もすきだし?あの和菓子うまいよなあ?


神城が少し拍子抜けした顔になる。


「ああ、そっち?」


「えっ?どっち⁈」


たしかにわかれ道だけど、いまのセリフは、どっちだよ?


田舎の風景は、


ー目印がない。


公園はとおりこしたしな?神城がラッシーにあの変な味の飴玉やった場所。


俺はわかれ道を前にとまどう。


「私のストーカーじゃないの?」


「それは迷わずイチイチゼロへ?」


東京とか人多いし?神城はめだつし。


ーこんなふうにそばにいないし?


「絶対、言えよ?なんかあったら、あの人に」


バック持ってもらう前に、無理する前に、待たずに声出せよ?


神城が少しうつむいた。


「ー村上くんにじゃないんだ?」


言われても、無理だよ?東京だろ?


「自転車で東京までは、かなりかかるぞ?」


「交通手段、自転車なの⁈」


「だって、いちばん速いぞ?兄貴の自転車。俺のはママチャリだから、落ちるけど」


待ち時間ないし?


積雪ほとんどないから、便利だし?田舎にはいちばんてっとりはやくね?


自転車が。


ー異世界人が財布にいれてた土産代でも、東京はむりだろ?


神城は顔をあげて、俺をきれいな黒い瞳でじっとみつめてきた。


「…よんだら、来てくれるの?東京まで自転車で?」


「いや絶対にイチイチゼロしろよ?それか加納さんだっけ?あの人呼べよ?必ず助けを呼べよ?」


…ほんとうにそうだぞ?


じっと俺を見上げる神城は、頼りなさげで心配になる。


ーだいじょぶか?


自転車しか乗り物ない俺には気軽に行けない距離にいくぞ?


ーミザールもチップス◯ーも映し出してくれるけど、手をいくら伸ばしても、とどかないぞ?


ーだから。


「絶対に呼べよ?」


かならずきっと、


ー声にしてごらん?春馬。誰かにとどくから。


この世界はきっと、まだまだ未来は夢みれるから。ゆっくりやすんだら、一歩をふみだしたら、あっという間に、きっと世界がかわるから。


そう思うから?じいちゃんやラッシー以外もおまえの味方はいるから?


ー私なら守れる。


あの人はそう言ったんだ。


「だいじょうぶだよ?神城さん。かならずいつか、声はとどくから」


俺と柴原には、いない存在だけど。


ー神城はだいじょぶだ、よ?


って、思うんだ。


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