帰り道 春馬 ②
担任の解散の言葉に、バスからおりる。土の香りがつよい見慣れたグランド。陽射しもやっぱり違うよなあ。
空を見上げると、やっぱりなんか違う気もするけど、低いのか高いのかは、わからないかも?
…晴れたままなら、夜にミザールかチップス◯ーの手作り望遠鏡を覗くかなあ?
今日の空をみて、何を俺は思うんだろ?
星に願いを?だっけ?あの日、俺が願ったのは、夜空じゃなく、陽がさす空だったな…。
空に願いを?ってあるんだっけ?
ーほら?春馬、おもしろいだろう?
片手でできる不思議な赤に夢中になって、
ーすまん、じいちゃんが悪かった。太陽は絶対に直接みたらだめだぞ?
太陽観察の仕方を丁寧にじいちゃんが教えてくれたけど。いまでも光のトリックは楽しくて仕方ないけど。
俺のミザールもチップス◯ーも、屈折式だけど。
ー反射望遠鏡かあ。
いまはスマホで簡単に、いろんな天体写真が見れるけど、昔は写真集とかだから、高かった。
ーそれからしたら、信じられない世界だな?手のひらサイズでほんとうにすごいな?そもそもコンピューターや電話やカメラから何年だ?
親父があきれてたな?
ー専門性もいらないで簡単にわかってしまう、気、になる世界だから、一歩間違えたら怖いな?って言ってたかなあ?
その言葉をきいてからは、俺はなんかあまり調べなくなってきたけど。
一個見たら、できるだけ違う意見もみてみるようにしたな。
それがいいかはべつの話だけど。逆に混乱するは、あるけど。もうただ素直に写真みてきれいだな?かなあ。
ーけど、神城は嫌がってたな。
目立つからだろ?もう誰にも見つからないように、土の中にいればいいのに。
けど、蛍って幼生でも光るんだっけ?カブトムシの幼虫は光らないけど。
ージブ◯?
小さな頃に異世界人がみせてきたなあ。目をうるませて、感動するわ。
だったけと、俺は幼すぎたのか、
ーびびってた。
乗り物とかは不思議だったような?不思議な世界だよなあ。
ーアニメなら、黄原ならくわしいよな?
って思うけど、黄原がみそうなジャンルだっけ?
アニメならなんでもってやつじゃないしなあ?
ー少しは世界をひろげろ?春馬。
って部屋に数冊ある漫画のタイトルや表紙を思い出すけど、
ー読んでないからわからない。というか、読んで違う感想になったら、説明がめんどくさいよなあ。
黄原は気にしないとは、わかるけど。新しい何かをはじめるって、俺にはかなり気力がいる。
次から次に新しい漫画を探す黄原ってすげーよな。
けど、ジブ◯ではないような?というか、うちのじゃがいも好きの異世界人は流行ったらなんでもいいタイプか?みたいな気もするけど。
ーお土産、じゃがいもじゃないけど、いいのかな?やっぱり、博多のコンビニで買ったらよかったのかな?
けっきょくは兄貴がくれたリスト通りしか買わなかったけど。さっき北熊本で買った阿蘇の水のペットボトルは、飲みかけ入ってるけど、ラッシーの散歩で使うかな?だしな。
「ほら、春馬、はやく神城のところに行けよ?悪目立ちしてるぞ?」
って、いきなり背中を押されて、びっくりして、背後にいた黄原を振り返った。
ーめだつのは、神城だろ?
いや、悪目立ちは、俺か?
野球部でいちばん下手くそで目立つのは、たしかに?
ー先輩、悪目立ちです。私が教えますから?
って後輩から何度か言われてるしな?
だけど、俺の場合は土にいても目立たないカエルだよな?神城みたいに、幼生で光るなんかないだろうし?
「後ろにいるぞ?きちんと声にだせよ?」
黄原があきれて俺をみて、その視線が俺を通り越すけど、振り返って、そこにいるのって、大抵の場合、
「か?」
苦手なやつほど目に入るよな?俺はカエルが苦手だ。なぜか必ず見るけど。
とりあえず思いついたひと文字をいったら、後ろで、
「おまえ、それは音だ。通じねーぞ?」
って声がした。
とりあえず1文字口にしたぞ?だけど、そりゃあ、そうだよなあ?
じゃあ?
って思ったら、神城がなんか不機嫌に俺をにらんできた。
「そのかえる、じゃないから?」
なんでわかったんだ?
俺はびっくりした。
黄原が、
ーえっ?通じるのか?神城?
って言う声もしたけど、とりあえず?
ー返事、なら?
「き?」
かな?
「季節的にはいてもおかしくないけど?」
晴れてるし、グランド乾いてるよ?
って、神城はますます不機嫌になるけど、
「く?」
「雲はあるけど、雨降らないと思うよ?」
もしかしたら、通雨とかあるかもだけど?天気雨だっけ?
って、同じ感想じゃあるけど。
「け?」
「ー経験的に?私は天気に興味ないよ?」
理数系は苦手だよ?ってますます不機嫌になる。
「こ?」
あっ、やばい。終わり?
「ここにいてもしょうがないからー」
いや、全部いったら、カ行がおわる。うちに家業はないけど。終わらせたくはない、カ行?
「か?」
リフレインしてみたら、
「カエルけど、また、カ行にもどさないで⁈」
…いいじゃん?またふりだしで?
「き?」
「きこえてるよね⁈」
「く?」
「くりかえさなで?」
「け?」
「結論言ったよね?」
「こ?」
「ここからはなれよう?村上くん」
神城の声が低くなる。これ以上はムリらしい。たしかに、目立つしなあ?
ー神城がいるだけで、視線を感じるなあ?
ってか、ずーっと怒ってね?神城。
「短気だな?神城さん」
「「どこが⁈」」
って様子を見守ってた黄原と神城の声が重なったけど、黄原はともかく神城は短気だよな?
って思ってたら、神城の視線が少し何かを気にするように迷う仕草をみせた。
ー?
神城の視線を追うまえに、
「もういいよ?帰ろ?」
って、神城が右足を一歩後ろにひいて、くるってまわる。
うちのラッシーもおやつやる時にはしゃいでまわるけど、ラッシーはくるくるまわるよなあ?
ー?
なにに、いま神城は動揺したんだ?
チラッとみたら、
ー苦笑してる柴原がいたけど、苦笑いなら、黄原も?
ー?
だった。