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帰り道 明日菜 ③


ー私とあまり変わらない身長なのになあ。軽々とバックもつんだ。


体重は村上くんの方が重そうだけど。私よりやっぱり骨格?が違う。


私には少し重たいと感じる旅行バックを、ふらつきもせずに、村上くんは持ってる。ふたつも持ってる。


ー同じくらいの身長なのに。


私は特別背が低いわけじゃないけど。村上くんは、いまは小柄な方なのかなあ?


ーそれでも力強いなあ。


村上くんの印象は、とことん不思議な村上くんペース?だけど。意味不明なあいうえお作文?だけど。


それなのに、私の歩くペースにあわせてくれながら、


「俺、いまラッシー?」


って首を傾げてる。ラッシーはたぶんあの子のことなんだろけど。


…想像つくから、放っておく。


「送ってくれるのは、家の近くまででいいから。お姉ちゃんにみつかると、いろんなこときかれるし」


明日菜には、やっぱり、カエルだ!


って言いそうな気もするけど。


「お姉さんと仲いいの?」


「うん、仲はいいかなあ?」


うちのお姉ちゃんは、たぶん穏やかだと思う。姉妹喧嘩はあまりしたことない。基本的にお姉ちゃんはお兄ちゃんに文句を言うから?私には甘いし?


「ああ、そういえば、お兄さんもいるんだよな?3人兄妹の末っ子だっけ?」


「…いちおうきくね?どうして知ってるの?」


「神城さん、うちの部員に大人気だから、部活ていろんな話が耳に入ってくるから?部室って先輩たちの話を一応きいとかないとダメだし?」


予想通りのその返事にため息つきそうになったけど。


「お疲れ様、俺の耳?」


「なんでよ⁈」


「だって、防ぎようがない系だろ?一方的に目や耳にはいる情報って?」


「ー言われてる私には?」


つい、言って、


「大変だな?」


ーしまった。


「ータ行はしないって言ったよね?」


「ち?」


「違う話でもしないよ?」


「つ?」


「つべこべ言ってもムダだよ?」


「て?」


「丁寧にしてもダメだよ?」


「と?」


「とりつく暇もなく、村上くんペースだね?」


私はもうあきれて村上くんをみる。村上くんはびっくりした顔で、


「神城さん、やっぱり」


「超能力なんかないから」


キッパリいうと、不服そうな顔になる。なんなの?はじめて一緒に帰ってるのに。


ーなんではぐらかすんだろ?


そりゃあ、そうだよ?明日菜?村上くんだって疲れてる。私のためにわざわざ遠回りをしてくれてる。


…真央が相手だったら、きっと、あいうえお作文なんかしない。


「ー真央も一緒に帰ったらよかった?」


つい口にしたら、


「柴原の家、逆方向だろ?」


って不思議そうにしてる。けど、ね?


「真央の家知ってるの?」


「だって、有名だろ?柴原のとこの和菓子屋。うちのじいちゃんが好きでよく食べてたよ?」


そういえば、梅ヶ枝餅も食べてたような?私は少し拍子抜けする。


「ああ、そっち?」


「えっ?どっち⁈」


村上くんは、キョロキョロとふたつにわかれた道で左右みてる。そういえば、前にあの不思議ない犬のクロッカスの公園にいつのまにかとおりこしていた。


ー私の家は知らないの?


「私のストーカーじゃないの?」


「それは迷わずイチイチゼロへ?」


急に真顔になって、


「絶対、言えよ?なんかあったら、あの人に」


「ー村上くんにじゃないんだ?」


「自転車で東京までは、かなりかかるぞ?」


「交通手段、自転車なの⁈」


「だって、いちばん速いぞ?兄貴の自転車。俺のはママチャリだから、落ちるけど」


待ち時間ないし?


ってまた首を傾げてる。そりゃあ、そうだけど…。田舎の中学生の手っ取り早い移動手段なら、自転車だけど。


「…よんだら、来てくれるの?東京まで自転車で?」


「いや絶対にイチイチゼロしろよ?それか加納さんだっけ?あの人呼べよ?必ず助けを呼べよ?」


…本気で言うから、私は素直に頷いた。村上くんは、俺が行くとは言わなかった。けど、少し茶色がかった瞳がまっすぐに、私を見つめてきて、


「絶対に呼べよ?」


この世界はきっと、まだまだ未来は夢みれるから。ゆっくりやすんだら、一歩をふみだしたら、あっという間に、きっと世界がかわるから。


「だいじょうぶだよ?神城さん。かならずいつか、声はとどくから」


そうちょっと茶色がかった瞳が、かなしげに、けど優しく私をみてくれた。







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