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帰り道 明日菜 ②


私は少しうんざり?しながら校門にむかう。村上くんがすぐに隣にきた。


いちおう私の隣を歩いてくれてる。なんか、


ー俺、ラッシーになる必要ないよなあ?


って意味わからない事をつぶやいてるけど。


ーラッシー?


村上くんのあの不思議な犬だろうけど、さっきはカエルで今度は犬…。


相変わらずよくわからない。チラッとみると、村上くんは不思議そうな顔になる。


目があって、私はなんか慌てて言ってた。


「サ行は、もういらないよ?」


もう条件反射かもしれない。


「サラダばかり食ってんの?」


「だから、あいうえお作文はもういいよ?って、いちおうサラダ以外も食べてるよ?お肉もお魚も食べるよ?」


もちろん、パンやご飯も。


「少食なのか?」


「他の子にもいるよ?」


「少しだけなら食べていい系?」


「精一杯、食べようとはしてるよ?」


「そう?」


「そうだよ?絶対にタ行はやらないからね⁈」


って言ったら、村上くんは少し残念そうな顔になった。ほかに会話する気ないの⁈


真央相手には、ふつうに会話?してたよね?


なんだかイライラしてたら、


「サラダばかりだからだ」


ってまた言うけど。


「俺の偏見だしなあ。草食獣がおとなしいなんか限らないしなあ?」


って、つぷやくように言って、


ー私はおとなしくなんかないよ?って言い返そうと口を開きかけた時、手からふいに重みがきえた。


「疲れてんのに、無理するなよ?もうすぐ、少しは視線なくなるからさ」


って、村上くんが私の旅行バックを手にしていた。私は慌てる。


「だいじょうぶだよ?それくらい自分で持てるよ?」


「俺と帰るから、家族の車で帰れなかったんだろ?いろいろあったし、疲れてそうだ」


「それなら、あいうえお作文をやめてくれる?」


…ムダに疲れるから。


「えー、じゃあ、なんの会話するの?」


「あれは、会話じゃないからね⁈」


「声にだしたぞ?」


「音にしただけでしょ?」


「えー?」


「絵はみるものだよ?」


「えっ?」


「映画は音声ガイドもたしかにあるけど」


「ええっ?」


「そりゃあ、映像には音声も映像もあるし、VRとかあるけど…。って、あそばないで?村上くん」


疲れをとおりこして、村上くんをみたら、村上くんはびっくりしたように私をみてた。


「エスパーじゃないからね?」


「エスパー⁈」


…村上くんの頭の中はどうなってるんだろ?真央ならわかってるのかなあ?


ふたりの会話は不思議だけど、自然だった。私は村上くんが持ってくれた私のカバンに手を伸ばす。


自分の荷物くらい自分でもつよ?って思ったけど、村上くんは身をひいた。


ー?


「彼氏だからって、そんなことしなくていいよ?」


しかも仮の彼氏だし?そもそも村上くんは、気にしないだろうし?


それなのに、村上くんは私のバックを持ちながら、足をとめて、じっと私をみてくる。


村上くんの背がいまからどこまで伸びるのかはわからないけど、いまはほとんど私と変わらない。


だから、目線は同じくらいだった。少し茶色がかった瞳に、やっぱり少し不機嫌そうな私がうつってる。


ー不機嫌そうな私に、ちょっとだけいらつく。


もっと可愛く映ればいいのに。


そう思ったのに、村上くんの少し茶色がかった瞳にうつる私はますます不満そうな表情になってた。


ーまた短気って言われる。


そう思ったけど、


「あれだけ視線にさらされたんだ。気疲れしただろ?旅行バックだけだよ?」


そう言ってまた歩き出す。たしかに、言われたとたん、なんか疲れた気分になったけど。


ーあの意味不明なあいうえお作文につかれた気もするけど?


「…ありがとう」


南九州の片田舎とは比較にならないくらい、たくさんの博多や天神の人混みに、視線だけならいいけど、スマホにつかれたはある。


カメラ機能がなければいいのに、って思うけど、私もよくメモ代わりに使うから、ないと不便もわかる。


ーただ、たしかに疲れちゃったな。


私はひとつ大きく息を吐き出して、肩の力を抜いてぬいた。村上くんの少し茶色がかった瞳にうつる私が、さっきまでの不機嫌な私よりマシになったけど、


「ー家に帰ってから大変だろうし?」


げんなりした気分になる。スカウトについて家族と話さないといけない。


「誰のせいよ?」


「えっ?俺も柴原も関係なくない?」


「どうして、真央がでてくるの⁈」


「ー?柴原だから?」


村上くんは首を傾げた。私はため息をつく。たしかに、村上くんも真央も私のスカウトと関係ないというか、私があの時に勝手に村上くんを巻き込んだ。


ー彼氏がいてもいいのなら?


あのセルフを言ったのは、私だ。


「東京行くまでは、俺と柴原がサポートするよ?」


「だから、なんで、真央⁈」


「柴原だから?」


真央の忠犬みたいになってない⁈


って言い返そうとしたけど、村上くんは下唇を少しかんで、顔をちょっとだけしかめたあと、笑った。


「だいじょうぶだよ?夏まで、俺と柴原は頑張るからさ?」


…守るなんか、軽々しく言えないけど。


約束なんかできないけど。


ーあの人にたくすしか、ないけど。


そうきこえた気がして、私はただうなずいてた。


ーあんな神城さんをみるのは、もう嫌なんだ。


ーあんな明日菜は見たくない。


ね?


村上くんと真央には、


ーあの日の私はどう映ってたの?




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― 新着の感想 ―
[良い点] この時から無意識?にライバルになってる真央との今後がどうなってくんでしょうね?大人の時の会話は多少の嫉妬はあったけどちょっとむってするくらいでしたけど、この独占欲全開で春馬を近くに来させて…
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