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帰り道 明日菜 ②


バスから降りて、校庭にまつは、うちの学校はなかった。


担任の先生が、学校到着前に帰宅までのちょっとした注意をして終わりだった。


だから、バスから降りたら、


「じゃあ、またね?明日菜」


真央が背中をぼんってたたいた。その反動で、一瞬だけためらったけど、自然とバスのステップを私もおりた。


バスからでたら、この校舎やグランドから比べたら、小さな空間からでたら、


ーなにかが圧倒的な力で、抗えない歯車が動き出しちゃいそうだ。


数年後に、二十歳すぎて体験するとは、思わなかったけど。抗えない時代の力ってあるのかな?


真央は、


ーすごいよ、明日菜?神さまのサイコロを明日菜がとめたよ?


って言ってたけど、いまから何年か後に体験した世界は…。


ーありのままの世界をそのままさらしだした。


だった。


ー自分で判断した、でよくない?なんで他人にまで自分と同じ選択を求めるの?


自由意思なら、自由でよくない?


ーみんな悩んで、自分で判断するよ?なんで、それでよくないの?あれ義務じゃなかったよ?


こっちからは、なんにも言わなかったよ?だって、自分が考えて、決めたから。きちんと自分で考えたから、


ー賭けだよなあ?だった。


そこまで楽観的じゃないよ?思慮深くもないけど。考えないで、どっちも批判だけしかしてないよね?


ーあれはシーソーだよ?どっちかにしか判断できないように、工夫されてるんだよ?


日本社会はふつうをもとめながら、自分がふつうだと納得いかない不思議な社会なんだ。


ー島国だからって言うけど、


ー?


島はたくさんあるよ?だけど。真央なら答えてくれるのかなあ?


いま校舎からも視線が集まってる日常が日常になってる私と変わらないかなあ。


校舎にいる子たちがただの人とも思えないけど?ひとりひとりに必ずヒストリーがあるはず?歴史があるはず?教科書には載らないだろうけど…。


うーん?昔から新聞に載りたいや、ニュースになりたいは、たぶん一定数はいて、それが世界規模になって、簡単になるから、存在価値に満足しなくなるのかなあ?


ー私が興味ないものや相手をスマホで撮るはないのに。


なんでも手のひらでできるから、こんなにも世界が怖くなるのかなあ?


…すごい時代よねー。お母さんついていけないわ。もう簡単スマホでいいわ。


ー少しでも若いうちに新しい機械になれなよ?お母さん!


…私がもう年っていいたいの朝陽?


ーお母さんは私より年寄りだし?


…あなたも、明日菜より年寄りよね?


ー若いよ?


…すぐに私と同じ年になるわよ?


ーお母さん、顔がこわい。


お姉ちゃんが若干、ひきつってた。私とお姉ちゃんはそんなに感じないけど、お兄ちゃんはちょっと上かなあ?


お兄ちゃんと同じって、いわれたら、違う気もする。


だからって、お兄ちゃんとお姉ちゃんが世代が違うとも、あまり思わないけど…。


不思議だね?


時間。


時を重ねるかあ。それとも時を刻むのかなあ?


ー私は夏までに、村上くんや真央とどんな時間を一緒に歩めるんだろ?


いま、バスから降りて、グランドに立ったけど。視線の先には村上くんの姿が見える。


黄原くんが私に気づいて村上くんの背を、さっきの真央みたいにおした。


違うのは、村上くんは私に気がつかずに、後ろの黄原くんを怪訝そうにみてる。


私はなんかムッとする。


ー神城さんはスターだろ?


って言ってたくせに、


ー見つけてくれないの?


って思った。じゃあ、なんのために、私は東京にいくの?


わかってる。村上くんは、スターっていった。


ー俺のスターとは言わなかった。


あんな神城さんは見たくない。


ー見てくれないの?たくさん、私をストーカーしたくせに?あの変な犬まで巻き込んで?守ってくれようとしたくせに。


お姉ちゃんがカエルって言ったから、


「か?」


って、振り返って、私をみるなり、村上くんが言って、お姉ちゃんのことを思い出してから、ついこたえた。


「そのかえる、じゃないから?」


村上くんはびっくりした顔で、乾いたグランドや晴れた空を見上げて、


「き?」


って首を傾げた。


「季節的にはいてもおかしくないけど?」


晴れてるし、グランド乾いてるよ?


「く?」


「雲はあるけど、雨降らないと思うよ?」


もしかしたら、通雨とかあるかもだけど?天気雨だっけ?


「け?」


「ー経験的に?私は天気に興味ないよ?」


…真央ならきっと色々教えてくれるし、こんなへんな、かきくけこ、しないよね?


「こ?」


だから、なんで、いつも一言なの?


「ここにいてもしょうがないからー」


「か?」


「カエルけど、また、カ行にもどさないで⁈」


「き?」


「きこえてるよね⁈」


「く?」


「くりかえさなで?」


「け?」


「結論言ったよね?」


「こ?」


「ここからはなれよう?村上くん」


私の声が少し低くなる。村上くんは、肩をすくめた。


「短気だな?神城さん」


「「どこが⁈」」


って様子を見守ってた黄原くんと私の声がかさなるのと、離れた場所で爆笑してる真央がチラッと視界に入る。


私の目線を村上くんが追う前に、


ー真央に視線を移す前に、


「もういいよ?帰ろ?」


って、右足を一歩後ろにひいて、くるってまわる。たぶん、またカ行に戻るし、


ー真央を見つけたら、真央のところに行っちゃう。


それはなんか、嫌なんだ。


って、思った。

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