とある女の子
「あっ、先輩たちのバスが帰ってきた」
運良く?その時間は自習で、いまか、いまかと待ち構えて、窓側に集まっていた子がそう言って、
「えっ?ほんとうに?」
「あっ、ほんとうにバスだ」
「神城先輩いる⁈」
「村上春馬先輩は⁈」
って、とたんにざわざわしだした。私の肩を友達が軽くたたく。
「私たちも窓から見よう?」
「そうだよ?百聞は一見にしかず?とかいうじゃん?」
わりと強引に両側から腕を強くひかれて、教室の後ろ側の窓辺まで連れていかれた。
ー力、つよいなあ。
たんに友人たち自体がみたいんだろうけど。もとリトルリーグにいた私とは違って友人たちは、ふだん大人しい方だけど、こういう時は、
ーやっぱり好奇心に勝てないらしい。
私もなんか、ききたくない情報ばかりで、もはやショックより、ウンザリ感が強くなってた午後。
でまわってる写真もなんだかなあ?だった。SNSの画像加工がない方が不思議な世界だし?
どう考えても、
ーなんで村上春馬先輩が、神城先輩と?
あれだけ村上春馬先輩の近くにいたいちばんの異性(たぶん先輩はわかってなかったけど)として、村上春馬先輩の視線を私は追ってたけど、視線の先に神城先輩がいた、はなかった。
ーと、思いたいけど。
神城先輩は目立つから、私の方がつい視線で神城先輩をおうことがある。
神城先輩がいたら、つい目がいく。
ーみんないく。
なかで、
ーどうして、村上春馬先輩だけ、反応しなかったの?
よく考えたら不自然な気もする。もともと無愛想だけど、視線を一個もやらないは、おかしいよね?
なんか練習中に物音とか、名前を呼ばれたら、村上春馬先輩は視線をむけていた。チラッとは反応する。表情や声にだすかは、べつにしといてだけど。
ー逆にいったら、神城先輩にだけ反応しなかったの?
黙々と素振りしてたような?
ーあまりにデタラメなフォームを改善したら、ものすごくしなやかに、
フルスイングしない。
先輩のなかにフルスイング映像ってあるのかなあ?だった。
それは投球フォームにもでてるし、走り方にもでてる。たぶん、先輩はもう無意識にあわせにいくんだろうけど。
ー誰かをおいぬいてまで、目立ちたくないようにみえる。
たまに、先輩たちのランニングとかで違和感がある時がある。野球部内でいちばん速い三年の先輩と同じ速度で、走ってるがある。
先輩は、必ずなんかの法則みたいにスタートを少し遅らせて、ただ一定間隔でただ走ってるがある。
ピタッとその距離だ。その時々で相手が違うから不自然じゃないけど。
絶対に追い越さない距離を保ってる、って三年の先輩が苦々しく言ってた。
ーやればできるヤツのくせに、やらないし、できないって信じてるから、腹立つんだ。
南九州の片田舎。校区は広いし、何校かの小学校から持ち上がりだから、その先輩は幼い頃から村上兄弟と遊んでたらしい。
ー小さな頃はまだ竜生のあと追ってた気もするけどなあ。
わけわかんねー。アイツ、俺のことたぶん竜生の友達だよな?一緒に遊んだの覚えてないのか?
ってぼやいてた。
私のことも会話したのに、まったく覚えて無かったし?
ー先輩、無口以前の問題では?
最近、やっと少しは会話?してるけど。わりと強引に先輩にお土産をねだったけど。
ー先輩、うなずいてくれたよね?
「あっ、神城先輩がバスから降りてきた」
「やっぱり、絵になるね、神城先輩」
「柴原先輩も美少女感はあるけど、なにが違うんだろうなあ?」
「柴原先輩はスカウトされなかったんだよね?」
ってのんきな会話がある光景にひっくりかえった。私の口からも、声がでた。
「…うそ?」
窓ガラス越しに神城先輩と村上、春馬、先輩が一緒に帰ってく。
あの、
ー先輩、が反応を返した。
って思う頭の片隅で、
…私はいま、
村上春馬、先輩。
神城明日菜、先輩。
ーどっちの反応に驚いたんだろ?って、ぼやけた頭に思った。