SS ソファ
会社を定時にあがり、電車に揺られてもどると、明日菜がソファーで眠ってた。
テレビの画面には、止まってトップタイトルに戻って、静止してる画面がある。
ー明日菜のあの賑やかな後輩たちのライブを、鑑賞していたみたいだ。
昨日、福岡支部経由でもらったって喜んでた。
ーライブには行けなかったしなあ。
最近の明日菜は足元に気をつけるくらい、お腹が目立ってる。コンサートの正式なDVD発売はまだまだ先になる。明日菜がもらったのは、事務所の映像らしい。
ー春馬くんも一緒にみる?
ーやめといた方がいいよ?明日菜。村上の口はかるいから。会社のファンが嫌がるよ?
たしかに。
イケカマ係長やイケメン先輩は、結婚式で本人たちに会ってるから、ライブのDVD発売を楽しみにしてる。
し、なにより俺の場合、表現力に問題あるしなあ。
洗面所で手洗いうがいして、スーツから部屋着に着替える。
シャワー浴びてもいいけど、先に明日菜をベッドに移すかなあ?だった。
明日菜は最近、お腹が大きくなるにつれて、少し動きにくそうにしてる。
本人は笑ってるけど、
ー柴原が椅子から落ちた時、俺だって血の気がひいた。イケメン先輩みたいに気遣う言葉がでるか、わからない。
つい明日菜を責めるかも?
ー俺がマタニティブルーじゃね?
って、最近、イケカマ係長に心配されてる。
だって、仕方ないだろ?
ーいまだに明日菜がとなりにいることが、どこか信じられない俺がいる。
こんなふうに幸せだと、心から思う日があるなんて、ほんとうにビックリしてる。
ーだって、明日菜がいる。
めちゃくちゃ、すごくね?
ずーっと好きだった子が、俺の奥さんになって、いま俺たちの子を宿してくるてる。
「ただいま、明日菜」
俺はそっと手を伸ばし明日菜を抱え上げる。
明日菜は熟睡していた。お腹が大きくなり、体勢的に眠れない日があるって言ってた。
ー安定期って言っても、身体や心が安定かっていわれたら、違うんだよね。
って、柴原も言ってたしなあ。柴原は相変わらずイケメン先輩のそばで、俺には見せない笑顔て笑ってる。
ーやさしいやつには、やっぱり優しい未来が来て欲しい。きっと、世界は優しいんだ。
俺はベッドに慎重に明日菜を寝かせながら、その腹に問いかける。
「優しい世界はきっとあるよ?必ずであえるから、安心しろよ?」
…おまえの親父にいちばん不安だろうけど。
って、苦笑いした。