帰り道 春馬 ①
北熊本サービスエリアをでてから、バスはノンストップで、南九州の片田舎の中学についた。
途中で、俺は爆睡したしなあ。なんかサービスエリアで神城と話してたから、ざわざわなってたし。
めんどくさいから、ねた。
寝たら気にならないし?なんか神城と一緒に帰ることなったし?
ー次はカ行か?
まあとりあえず、声に出して反応してたら、いいのか?
ーあのおしゃべりくまモン買ったらよかったか?けど、わりとたかいしなあ。
喋るだけじゃなくて、リアクションでかいしな?
そういや、スマホはやわらかな返事してくれるらしい。
ー話しかけたことないけど。親父の車のカーナビの声に似てるのかなあ?
やっぱり声質ってあるんだろな。
ーくまモンは、ギャァギャァだった。
また神城に睨まれて終わるよな?
「けっきょく、神城と一緒に帰るんだろ?」
黄原が言ってきた。わりとでかい声で。まわりの視線があつまり、俺はつい、
ーUFO?
って窓から宇宙みてしまう。ときどき。ミザールのぞいてたら、人工衛星とかにビックリして、
ーお化けより怖くなる。
だって、居るはず?けど、知らない存在。めちゃくちゃ怖くない⁈
「神城のバスはまだついてないぞ?ついでにUFOもいないぞ?黄原」
「神城はともかく、なんでUFOだよ⁈」
黄原があきれて俺をみる。その時、ちょうど、神城のバスも学校のグランドに入ってきた。
まだ2年生以外は、授業中で、さすがに俺たち二年生も部活はやすみだ。
お土産持ってく奴らもいるけど。
チラッと脳裏に元気な後輩が浮かぶけど、
ー神城は部活によらないだろうしなあ。
待たせるほどの用事じゃないよなあ。明日は土曜日だけど野球部の練習があるしな。
ーわりとヘビーだな?
そういえば、
「神城って巳年か?」
「本人にきけよ?せめて誕生日はな。とりあえず巳年だけは、否定しないが」
ー神城の誕生日って有名なのか?こたえた黄原に若干ビックリしたけど、いま個人情報とかあって、ないようなものだしな。
特に卒アル入手とか、相手がどんな相手でも、
ーいや、全員の卒アルだよな?
ビックリするけど。
ー神城も黄原も巳年。俺は午で、兄貴が辰。兄貴の方が強そうだって思ったよなあ。
ー神城はへぴ。
だから、あんなににらんでくるのか?ストーカーのナガレタゴカエルの俺を。
せめてあのきれいな声のカジカカエルなら、笑うんだろうか?
たしかに?
あのくまモンのおしゃべりダンス人形?ペットホンであのギャァギャァは嫌かもしれない。鳥類にもたしかいたよなあ?
しかもおしゃべりたっしゃだし?
ビーちゃん、ビーちゃん、かわいいね?
って言うセキセイインコは噛みつかれて痛かった。
まよいセキセイインコとか、いまいるのかなあ?たまに、レース鳩なら見るけど。
ーほら、春馬。あれがレース鳩だ。山鳩とは違うだろ?
ってじいちゃんが教えてくれた。ラッシーも戻ってきてくれるかなあ?
ーいや、俺がラッシーのもとに戻るけど。
「まあ、俺より先に年とるんだな」
「…おまえ、言い方ほんとうに神城には、気をつけろよ?まあ、神城が気にするとも思わないけど」
「蛇って表情読めないけど、じっとみてくるよな?」
有名な白蛇様もいるけど、神城に白いイメージないな。紅い瞳じゃないしな。
神城は、スターで宇宙だしなあ。
銀色のヘビって毒あったか?よくわからないけど、月は銀色。グレイに輝いて、宇宙との境がくっきりするんだ。
けど、神城は月じゃないか。
昼間でも見えそうな輝き。
スター。
ー私なら守れる。
「痛っ!」
「だから、やめろよ?なんで傷口をまた噛むんだよ?神城が心配するぞ?」
黄原が顔をしかめる。そして、ため息ついた。
「ほんとうに嫌なときは嫌だって、神城か柴原に言えよ?どうせ俺には言わないだろうし?」
「いちばん話してるぞ?」
「会話のことじゃねーよ?」
「スマホはたしかにわざわざしないな」
「会って話すだけじゃねーよ⁈おまえ系は柴原だろ?」
…たしかに、柴原とは楽だな。
黙ってたら、黄原がため息をついた。
「否定くらいしろよ?まあ、それがなきゃ、春馬じゃねーけどな。まあ、いいや、はやく神城のところに行ってやれよ?また変なのに絡まれる前に」
「スカウトの加納さんは、変質者じゃなかったぞ?」
たぶん?
あの人なら、きっと、
ー私なら守れる。
つい前歯で下唇を噛みそうになって、黄原をみてこらえた。
かわりに、胸がなんかモヤモヤした。
南九州の空は澄んで、今日はもう暑い。真夏の屋上なら最悪だぞ?
きっと、間に合わない。
ーたくすしか、ないだろ?
ー私なら守れる。
ほんとうに?
って、不安だけど。俺はバスの窓から、屋上をみる。
だけど、やっぱり、
ーあんな神城は二度とみたくない。
そう強く思った。