表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

413/652

最終日 春馬


ーバカだよな、せっかくの朝ごはんが血の味する。


噛んだ下唇が痛かった。はやくかさぶたにならないかなあ。


「どうしたんだ?下唇?」


「なんか噛んだ」


「だいじょうぶか?いたそうだけど」


黄原が心配そうに俺をみる。たしかに痛い。


「どうしようもないし、たぶん、だいじょうぶ?」


「なんで自分のことなのに、毎回、他人事に思うんだよ?おまえは」


「自分も他人だから?」


「ー脳検査いくか?」


「MRI代が高いからいやだ」


動物病院にもいまはあるけど、人間ですら万単位でかかるから、かなり痛い。


ってか、まだまだ数限られた検査だろうけど。ペットビジネスすげーな?


上をみたら、してあげられる治療は切りがないし。


ーあきらめられなくなる。


俺には霊感ないけど、霊感商法や詐欺なんか流行ってくんだろうなあ。


もう流行ってんのかな?


ラッシーがじぃちゃんみたいに空の煙になるころ、俺はどう動くんだろ?


その時、俺に誰がいるんだろ?


あの時、は、ラッシーがいたけど。


ー神城が東京に行っても、南九州の片田舎で見上げるミザールのそばにラッシーはいてくれるよな?


単純に考えたら、ラッシーはまだまだ寿命じゃないはずだし?


って、思うけど、幼い頃からきいてたじぃちゃんの話から、きっと永遠の幸せはないって思いもするんだ。


ー今年もまたホタルが見れるな?春馬。


そう笑うじいちゃんとの、こんど、はなかった。あの三連水車がある水路の橋には、ホタルのイラストがあったんだ。


福岡でどれくらいの場所でホタルが見れるんだろ?


ホタルは世界的にたくさんいるけど、光ホタルは貴重なんだ。


個人的には、光ってないと、


ーわりとかなり、


虫、だ。


平家と源氏に姫だよな?


俺がよく目にするのはゲンジだけど。どうでもいいけど、じいちゃんはMRIで爆睡するタイプだけど。


ーよくわからないが眠くなるな?あれ。


ーあまり、いないぞ?親父。永眠だけはすんなよ?


って笑ってた親父の願いは叶わなかったな。


ーあんな機械よくつくるよな?


ああいう機械も治験って言うのか?日本の審査基準高すぎない⁈


って思うけど、日本は医療保険だから、税金だしなあ。


って親父がしかめっつらしてた。親父の知り合いの医師が、


ー安くなるって期待したんだけど、やっぱり高くて、効果はあるはわかっても、軽々しく進められないよなあ、高いから。


どれだけの人がその負担額を払えるのかな?


せめてラッシーに俺が働くまで待っててほしいけど。高校なったらバイトできるよな?


ー高校なったら、神城をテレビで見てんのかな?


神城は東京に行く。ラッシーは、いるよな?


「ー痛っ!」


また下唇を前歯で無意識に噛んで痛みがはしる。黄原があきれた顔になる。


「いま言ったばかりだろ?ハチミツとかぬるか?」


「いまない。あるのはー」


…あの変な味のアメ玉。神城がラッシーにくれたやつ。くそっ!なんで神城ばっかり思い出すんだろ?


昨日で神城とは終わりのはずだったのに。


ー彼氏がいてもいいのなら?


って、


やりたい放題だな?神城。


ー短気すぎやしないか?


アメ玉でラッシーがのど詰まらせたらどうすんだ?MRI間に合うのか?


ーアメ玉で犬にMRIはしないよな?


そもそもそんな設備ないだろうし?じいちゃんもでかい病院だったしな。


「ー東京とかだとふつうに動物病院にあるのかな?MRIって」


「東京でも変わらないんじゃないか?そもそもすげー高いぞ?」


「…だよな」


いまラッシーに必要ないしな。ためしに調べたらたぶんいらない心配で眠れなくなりそうだ。


いつだって最悪の予想してしまいそうだ。


ー最悪の予想したから、俺と柴原が動いたのに。


ー私なら守れる。


あの人にたくしたいのに。たくすしかないガキなのに。


ーなんで俺は、こんなにモヤモヤするんだろ。


ホタルを神城と一緒に見ることなんかないのに。ラッシーが東京に行くなんかないのに。


うちのラッシーは、


ー車酔いする。


人吉ー八代間のトンネル地獄むりだよなあ?めちゃくちゃ酔うよな?


そういや、面白い電車の線路あったな。線路っていったら、博多南線に乗ったやつらが歩いてJR西日本の新幹線基地に行ったら、ドクターイエローがとまってたらしい。


し、飛行機も低いから興奮してたな。飛行機見に行ったやつらもいたよなあ。


ー班の女子に恵まれたらしい。


うちの自由行動は、


ーめちゃくちゃ自由だった。


初っ端から梅ヶ枝餅騒動だったけど。クレープ屋が空港や新幹線基地にあったら、うちの班もいけたかなあ?


いや、たぶん、ムリだよな?


赤木たちも新幹線に興味ないだろうし?


「ーバスには赤木たちくるよな?」


「さすがに教師が怒るだろ?まあ、おまえは寝てろよ?なんか絡まれたら俺がまいてやる」


「ーえっ?絡まれんのか?俺⁈」


「その心配したんじゃねーのかよ⁈」


「いや、たんに疑問だっただけ?」


「ーだよな。お前なかわまず寝てそうだ」


って黄原があきれた顔になった。たしかに俺はぐっすり眠るよなあ。


ー入ったもんは、仕方ないから寝るしかないだろ?


ってじいちゃんが言ってたし、俺も寝ると思ったけど。


ー音が大きい。


ラッシーだいじょうぶかなあ?


それとも大都会はにぎやかだから、だいじょうぶになるのかな?


って思いもする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ